'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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11月18日時点1558勝
アジアエクスプレス復活の裏側に迫る
2014/8/27(水)
中間の調整が功を奏す
-:アジアエクスプレス(牡3、美浦・手塚厩舎)のレパードSを振り返っていただきたいのですが、前走のユニコーンSを惨敗しながらも、1番人気に推されて、それに応える結果を残されました。結果を残せた要因、巻き返せたポイントは、どの部分に感じていますか?
圭太:外目を揉まれずに走れたことは要因でしょうね。返し馬の気配はユニコーンSと同じような感じだったのですが、スタートをしてからの勢いがやっぱり違いましたね。スムーズに前にも付けられましたし、そういった面では攻め馬を強化したことで、走る気持ち、気合を注入するために少し攻めたのも、良い影響として出ているのかな、という感触はありますね。
-:確かに出脚の良さが目に付いた印象でしたね。
圭太:そうですね。そこは明らかに違いますよね。前走は揉まれたくないという気持ちもあったので、1枠からある程度は出していったのですが、なかなか先団に取り付けませんでした。今回は持ったままであの位置に付けられましたし、気も入っていた感じだったので、全然違いましたね。それはコースが替わったから走りも変わったのかどうかはわかりませんが、今回の走りがあの馬の力というか、本質的にはああいう雰囲気なのかな、という感じはしました。
-:前回が内枠で、今回が外枠という点も少なからず好材料だったと思います。
圭太:ただ、内枠でもあの走りっぷりなら揉まれることはなかった気はします。ユニコーンSの時も出遅れた訳ではないので、改めて考えると、その時だけは行き脚がなかった印象ですね。他のレース、芝の皐月賞やスプリングSでも、もっと行き脚が付いていたので。
-:その違いは中間の調整過程が大きいのかもしれませんね。ブリンカーはそんなに効果は感じませんでしたか?調教の段階から「あまり変わらない気がする」と、正直におっしゃっていました。
圭太:う~ん、どうなんですかねえ。悪影響にはならなかったとはいえ、外していても良い走りはできたのではないでしょうか。まあ、勝てたわけですから、あって良かったのかな。ああいう走りができたのでね。ただ、着けたことによって集中力は増す道具なので、多少なりとも集中はしていたとは思うんですけどね。
「芝のレースを含めて、僕が乗った中では、今までで一番良い雰囲気でしたね。それでいて、結果を残すことができたので、ホッとしましたね」
-:もともとテンションが上がり過ぎてしまう懸念もある馬です。中間は調教を少し強めにやった分、そこの心配はなかったですか?
圭太:丸っきり違いましたね。普段から汗をかく仕草とか、テンションが高そうな馬なのですが、調教をやったからテンションが上がる、ということはなかったです。今回は逆に落ち着いていましたね。集中しているような気配は感じました。
-:それは暑くて疲れていたとかいう訳ではないですね。
圭太:そうではありませんね。もし、そうだったら、あのレース振りはできないですから。本当に集中していた証拠に、返し馬が終わって小屋の中を歩いている段階でも、どこか良い雰囲気は出ていましたね。
-:では、スタート前から良い手応えというか、良いレースになるんじゃないか、という予感はあった訳ですね。
圭太:そうですね。芝のレースを含めて、僕が乗った中では、今までで一番良い雰囲気でしたね。それでいて、結果を残すことができたので、ホッとしましたね。
-:厩舎にとっても、この1勝は格別の1勝だったのでしょうか。
圭太:そうだと思いますね。上がってきてからも、手塚先生も「良かった」と言っていましたし、「本当に騎手に申し訳ない」ということを言っていただいていました。それは僕もレース振りがチグハグなものになって、結果も伴っていなかったので、それでも、ずっと乗せてもらって、「厩舎に申し訳ない」という思いがあったのですが、今回、結果が出て、先生もすごくホッとしていましたし、良かったですね。
相手を知り尽くした一戦も自分自身との戦い
-:今回はメンバー的にも戸崎騎手が乗ってきた馬が多いレースだったと思います。その中で1番人気に推されたので、なおさらここは結果を出さないと、という思いもあったのではなかったでしょうか?
圭太:そこは特には気にしてなかったですね。自分が乗っていた他の馬に負けたくないという気持ちは、そんなにはなかったです。ただ、あれだけの馬なので、良い走りを見せたい思いが強かったですね。結果はともかく、勝つのが一番良いのですが、着順よりも内容と言いますか。あの馬の走りを見せれば、自ずと結果は付いてくると考えていたので、そういう思いは全然なかったですね。
-:2着のクライスマイルも、やはり走る馬だと再認識させられました。この馬もデビュー2連勝は戸崎騎手の手によるものでした。
圭太:走るんですよね。あの馬は競馬が上手なんですよ。以前は後ろから行っていたので、僕も(前にいて)アレっと思いました。しかし、センスはある馬なので、どんな競馬にも対応できる強みはありますね。あの着順にも全然ビックリしていないです。
-:500万を勝った時も、次はレパードSに出てくるのかなという感じがしましたからね。思ったほど人気をしていない印象もありました。
戸崎圭太騎手マネージャー:「人気がないね」なんて話していたんですよね。
-:1、2、3着全頭が前走乗っていた馬ですね。
圭太:凄いですよね、本当に。珍事ですか?じゃあ、もうちょっと新聞とかでも取り上げてもらっても良かったですよね。ハハハ(笑)。
-:登録時点で「前走、戸崎騎手」の登録馬は6頭いましたよ。
圭太:それに、4着のレッドアルヴィスも前に乗りましたもんね。全部知っているというね。
-:しかし、今回はアジアエクスプレスが自分の走りをするかどうか、という思いがあったでしょうし、周りの馬に乗っていたことがプラスになるようなレースでもなかった訳ですね。
圭太:全然、気にはしていなかったですね。アジアの走りをさせなくてはならない、という思いでしたからね。
-:やっぱり他の馬に乗っていた方が競馬はしやすいものでしょうか?
マネ:知っているということは良いことだと思いますよ。乗って知っているのと、見た目で何となく把握しているのでは違いますから。
圭太:こういう走りをするとか、フットワークがこうで、というのは、乗れば分かりますからね。こういう展開に弱い、とかあると思いますからね。
-:周りの騎手も自分の馬に乗っていた時は、そこを分かった競馬をしてくるということも、もちろんある訳ですね。
圭太:それはあると思います。
今後は心身の成長を
-:レース後、骨折が判明したようですが、それはレース中に分かる範囲のものではなかったですよね。
圭太:そうですね、直線も目一杯動かしている訳ではないですからね。ホッとしたのはつかの間で、そんな発表があったのでビックリしました。
-:どこかで急にラップが上がったわけでもないですからね。
圭太:そういうところはないですね。余力があるくらいで、そんなに負担が掛かったというレースでもなかったので……。
-:ダートでレース中に故障する原因は、どういったパターンがありますか?
圭太:分からないですね。ダメージの蓄積もあるし、もともと体質的に弱い馬は弱くて、故障し易い馬もいるでしょうから。人間も一緒ですよね。どこがダメだから、この人は弱い、といったことはなかなか分からないですものね。どういう走りをしたから怪我をしたなどは分からないでしょうし。芝だったら時計も速いですし、故障をしやすいことはあるかもしれませんが。
-:レースを終えた今、骨折で秋は休養に充てられますが、復帰後の走りが楽しみですね。なおかつ、まだ課題も残っています。
圭太:揉まれ弱さはこれから付いてくるものだと思いますし、その不安材料は決して克服したものではないですからね。それでも、そこは強い馬だったら克服していかなければなりませんし、克服してもらいたいです。それを克服できたら、本当に強い馬になると思いますよ。
-:今回の状態で、もし馬群で競馬をしていたら、どうなっていたでしょうか?
圭太:全然、見当がつかないですね。
マネ:テンに行けたことは確かだよ。内枠でも多分。ひょっとしたら行っちゃった可能性もあるし。
圭太:ハナに行く馬で速いのがいるじゃないですか。そういった時に、やはり出負けとか出遅れもあるでしょうし、それでも強い馬は勝負してくるとは思います。ちゃんと自分のパフォーマンスは見せてこられると思うので、そういう馬になってもらいたいという気持ちはありますね。
-:精神面以外で、まだまだ良くなりそうな部分はありますか?
圭太:まだまだ力は付いてくると思います。3歳ですし、これからだと思いますけどね。
※次回は8/31(日)に公開予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。