外枠有利の新潟直線1000mで最内枠から内ラチ沿いを通って勝利するなど、その大胆な騎乗に注目度が
日増しにアップしている永島まなみ騎手が、騎乗論から日常まで余すことなく語りつくします!
いつでも体重が分かる!?知られざる特技と変則開催の過ごし方
2024/8/2(金)
先週は新潟開幕週に参戦し、惜しくも勝利に手は届かなかったものの、ドナヴィーナスで2着と存在感を発揮したまなみ騎手。サニーサルサなど期待馬たちと参戦する今週の新潟競馬の展望、異例の変則開催の過ごし方、そして先週に続き熱中症の話題から体重管理の話まで、今週も盛りだくさんでお届けします!
先週は直線競馬のドナヴィーナスで見せ場は十分の2着!
——先週は土曜新潟11R・3歳上1勝クラス、ドナヴィーナスの2着が最高着順という結果でした。見せ場十分の内容であとちょっとでしたね…
最後の最後でちょっとしんどくなって抜かされてしまいましたが、直線1000mの適性は本当に高い子です。返し馬などは前回直線1000mで乗せていただいた時(2走前のはやぶさ賞)よりもだいぶ落ち着いて臨めましたし、馬自身が成長してくれているのではないかと思います。
——開幕週の直線1000mということで、最内枠のネイルンノなどが内ラチ沿いを目指す中、4番を引いたドナヴィーナスで一気に外ラチ沿いのほうへ誘導されました。この意図は伺いたいところです。
本当は内ラチ沿いに行く考えもあったんですが、庄野先生ともお話した際に、先生が「スタートも速いし外でいいんじゃないかな?」とおっしゃっていたのもあって外を選択しました。内枠からでも外に行けるように、本当にすごくいいスピードを持っている子です。
——今回は4番を引きました。外枠有利が定説のコースですが、ジョッキー心理としては内枠を引くとやはり落ち込むものなのですか?
そうですね、外が良かったなとは思います(笑)
——たぶん"なぜ外ラチ沿いが有利なのか"の理由をよく分かっていないファンの方もいると思います。これはどのような理由があるのでしょうか。
まず普段の芝のレースでも内しか使わないので、外のほうが綺麗なのはあります。そして馬はラチを頼っていたほうが一番走りやすいので、そういった意味でも外ラチ沿いは有利になると思います。
内ラチを頼らせてもいいのですが、やはり開催が進むと内は荒れてくるので…。外ラチ沿いであれば1000mの直線以外で使うことはほとんどないだけに、やはり外のほうが走りやすくなります。
——直線1000mでたまにラチ沿いを走らずに好走する馬がいます。
凄いなと思います。先週のアイビスサマーダッシュのモズメイメイも真ん中から伸びてきて凄いと思いましたね。
——少し話は変わりますが、まなみ騎手は以前モズメイメイに騎乗された経験があります。直線1000m向きかどうかは乗るとある程度分かるものなのでしょうか?
前走国分(恭介)さんが乗った北九州記念から差してくるようになったのですが、以前乗せていただいた段階で、メイメイが直線1000mであれだけ走るとは正直分からなかったですね…。
——ドナヴィーナスに話を戻しますと、勝ち馬より7kg軽い51kgだったとはいえ、前半400mは翌日のアイビスサマーダッシュより0.1秒遅いだけの21.9でした。本当にいいスピードを持っていますね。
本当に速いです!いいスピードを持っている子で、スタートしてからもめちゃくちゃ速いのが乗っていて分かるんです。1000mは周りの馬も速いので、その中で内枠4番から外ラチ沿いに行ってハナを切るのは相当スピードがないと難しいだけに、なおさらそう思います。
——2走前の直線1000mはやぶさ賞では55kgを背負い、前半400mが22.1、今回より0.2秒遅いものです。今回ははやぶさ賞より4kg軽い状況でしたが、乗っていてこの4kgは全然違うのでしょうか。
かなり違うと思いますね。スタート後のダッシュのスピード感が違います。
——個人的に少し心配だったのは、西に向かって走る直線1000mだけに眩しくないかだったのですが、曇りで杞憂に終わりました。今後もこの時間の直線1000mは大丈夫そうでしょうか?
そうなんです、普段の夏でも16時の最終レースのダートでも日差しの照り返しが厳しく、前が見えにくい時があるんです。先週はたまたま曇っていましたが、今週どうなるのかという思いはあります。気を付けて乗りたいですね。
——さて、先週の新潟競馬は暑熱対策のため、お昼前までに5Rを消化し、6Rまで3時間半開くという初めてのスケジュールでした。「気持ちを持続させるのが難しい」と語るジョッキーの方もいましたが、気持ちを持続させるのは難しかったのか伺いたいです。
間が結構空いてしまうので、集中力が途切れることはないですが、ジョッキーからすると続けて競馬があったほうが集中力をより保ちやすいところはあります。ただ馬が第一なので、馬が少しでも暑い時間を避けられるのであればこの対策はいいと思っています!
——ペンネーム・leyさんからの質問です。「長いお昼休みは寝る予定とコラムでおっしゃっていましたが、実際にどのように過ごしましたか?」というメッセージをいただきました。
私、土曜日すごく間が空いていて。…4時間寝てました(笑)
——4時間となると夜寝て朝起きるくらいに近い時間ですね。
本当にそれくらいですよね…爆睡してました。誰も起こさなかったら寝過ごしていたかも…なんてことはないのですが(笑)、それくらい寝てました。
——体力が回復できたようで何よりです。いつもだったらもう競馬が終わって帰宅の途についているであろう18時にもまだ競馬開催、栄養補給のタイミングも難しかったのでは…
そうですね、人それぞれのタイミングがあると思いますが、慣れないと思います。
——ペンネーム・leyさんからは「こんなことをしていた!というジョッキーのエピソードがあれば教えてください!」というメッセージもいただいています。
みんなそれぞれでした!マッサージを受けているジョッキーもいましたし、他の方が何をしているかはあまり分からないですね…
——その時間夢の中にいらっしゃいましたしね…
そうなんです(笑)。ただ検量室にしても体重を測れないので、皆さん調整ルームに戻っていたと思います。
今週も変則開催の新潟で計13鞍に騎乗!
——今週も暑熱対策による変則開催となる新潟競馬で、土曜6鞍、日曜7鞍、計13鞍に騎乗予定です。いつも通りレース、調教に騎乗した馬を中心に伺いますが、まずは土曜の3R・2歳新馬のエッグハントには2週前、1週前追い切りに騎乗されていますね。
まだちょっと緩いところがありますが、一度追い切ってから次の追い切りでは良くなっていました。馬っけが強いところがあり、男馬相手でも乗っかりにいこうとする幼いところがあるので、そういった幼い部分をレースで出さなければ初戦から楽しみではあります。
——なかなかファンキーな馬ですね…
かなりファンキーです(笑)。ただまだヤンチャなところがあるとはいえ、可愛らしい子ですね。
——前走に続いて手綱を取る5R・3歳未勝利のホウオウセイメイは、長期休養明け2戦目と叩いた上積みが期待されますね。
今週追い切りに乗せていただきましたが、明らかに馬が違うくらい良くなっていました。使った上積みがありそうで、かなり楽しみです!
——前走時、まなみ騎手が「すごく背中が良くて馬っぷりがいい」と褒められていたのが印象的な馬です。
そうですね、馬っぷりは元々すごく良かったんですが、調教の動きが一段と良くなっていました。すごく期待しています。
——ここ2走手綱を取られている10R・3歳未勝利のルージュレイナスは、時期を考えると今回負けられない一戦となりそうですね。
そうですね、毎回しっかり頑張ってくれていますし、なんとか未勝利脱出できるようしっかり勝ち切りたいと思います!
——ルージュレイナスにとって今回が初の左回りとなりますが、問題なさそうでしょうか。
新潟にはなりますが、回り自体は特に問題なさそうですね。
——12R・3歳上1勝クラスの自厩舎セブンスストリートはこれで5戦連続の騎乗となりました。
1800mは気持ち長いかなというところが鍵だと思いますが、レースを使うごとにテンション面だったりが成長してくれているので、なんとかこの条件に対応してくれればというところです。新潟のコースは問題ないと思います。
洗い場で西岡助手に手入れされ
リラックスするセブンスストリート ※まなみ騎手ご提供
——テン乗りの多い日曜に話を移しますと、やはり注目は11R・ダリア賞だと思います。サニーサルサとのコンビで連勝したいところです。
そうですね、サルサはいいスピードを持っている子ですし、この中間放牧に出して厩舎に帰ってきたらかなり短距離向きの体型になって帰ってきたので、距離が短くなるのはプラスに働きそうです。
——前走の京都新馬戦はマイルでのものでしたが、今回1400mとなるのは良さそうな雰囲気ですね。
かなり短距離馬っぽくなっているので、距離短縮はいいですね。だいぶハミを噛むところが出てきたので、折り合いに気を付けて乗りたいです。楽しみなレースです。
馬房でニンジンをつまむサニーサルサ ※まなみ騎手ご提供
——12R・苗場特別のクリノクリスタルはテン乗りですが、今週のCWでの最終追い切りに騎乗されていますね。
追い切りではかなりペースが速くなってしまいましたが、最後もそこまで止まらず走れていましたし、競馬に行くと少しズブいところがあるとお聞きしているので、その部分をうまく対応して乗れればと思います。
自分の体重が分かる!?ジョッキーは体重との戦い
——改めて先週末は変則開催お疲れさまでした。念のため伺いますが、滋賀の自宅に戻られたのは何時頃だったのでしょうか?
結局夜12時に草津駅に着きました…
——一日働いて12時に草津まで戻ってくるのはしんどくないですか…?
しんどかったです、結構疲れました(笑)
——気になっていたのですが、関西組の皆さんはそのまますぐに帰られていたのでしょうか。
(吉村)誠之助は一緒でしたが、あとは皆さん途中泊まられたりしていたようですね。
——そして今週は12Rまで騎乗ということで、「意地でも帰る」とおっしゃっていたまなみ騎手が当日自宅に戻れないことがほぼ確定しております…
もう途中どこかで泊まることにします…
——調べましたところ、飛行機で名古屋(小牧)経由なら当日中に帰れるようです。
そうなんですよ、ただ名古屋から滋賀まで戻るのが…。私方向音痴なんで、さすがに難しいかなと…
——その問題は大きいですね…。さて、先週に続きファンの方からの質問コーナーでは熱中症の話題を取り上げていこうと思います。先週もこの話題を取り上げたところ、ジョッキーの体重が1日で2kg減ることに驚いたファンの方が多かったようです。
なるほど…私以外の皆さんも大体そんな感じですね。
——体重についてペンネーム・中京のファンさんから1つご質問がありました。「初めまして、初メッセージ送らせていただきます。先日武豊騎手が51kgで騎乗したことが話題になりました。夏場と冬場では1kg絞るのに掛かる時間がどれくらい違うのか気になりました」とのことです。
夏と冬だと馬に乗っている時の体重の落ち方は違ってきますね。夏のほうがみんな断然楽だと思います!
ただ私はそんなに体重を落とすことはなくて、夏場はむしろ体重がすごく減ってしまうので、馬の負担を少なくするために多めに食べたりします。
冬場は逆に太りやすくなってしまうので減量することになりますが、基本はサウナを使って汗取りをしていますね。
——少々伺いにくいところですが、減量のある冬場の場合、時間はどのくらい掛かるものなのでしょうか。
そうですね…200グラム落とすのに大体30分くらい掛かります。そこまで減量しないほうなので分からないところはありますが。男性ジョッキーの方だと体が減量を覚えているので、200グラムはすぐ落ちるみたいですね。
——確かにあまりまなみ騎手が減量するイメージがないです。
普段からもうパクパクパクパク食べてるんで(笑)
——本当に女性にあまり体重の話は伺えないのですが、夏冬関係なく、開催日以外でも毎日体重は計測されるものなのでしょうか。
毎日体重計に乗ってます!でも競馬学校時代から体重計に乗り過ぎて、もう乗らなくても体重は大体分かるんです(笑)
——ものすごい特技ですね、今こうして取材中に話している時にも自分の体重は分かるものなのでしょうか?
分かります分かります!これくらいだろうなと思って体重計に乗るとほぼ一緒です。これは職業病かもしれませんね(笑)。ジョッキーはみんなそんな感じだと思います。夜何かを食べてもどれだけ増えたかも分かります。
——体型も人それぞれとはいえ、武豊騎手は170cmあるだけにいくら夏とはいえ51kgに乗れるまで絞るのは大変ですよね…
凄いと思います!51kgで乗られるというニュースを見てビックリしました。若手ならあるあるですが、大ベテランの方が51で乗られるのは凄いなと…。
——これだけ暑い日に減量は相当体に負担が掛かるイメージがあります。先輩ジョッキーで苦労されている方も結構多いのでしょうか?
汗をかくので冬場よりはマシだと思いますが、同期とか年代の近い子でも頑張っている方は多いですね。減量ジョッキーの場合、3kg減で乗らないといけないので。
——これもまた女性の方に聞くのは躊躇するのですが、ペンネーム・まるこさんからのご質問です。「私はかなり汗っかきなのですが、コラムの内容からジョッキーの方は相当汗をかくと思います。1つのレースに騎乗するだけで服はもう使えないのでしょうか?」という質問がありました。
これはもうすぐに服がビショビショになりますね(笑)。あまりにも濡れるので、面白がって姉に「触って触って~」と服を触らせようするのですが、「嫌やし!」と言って断れます(笑)
——その光景が容易に想像できます。
服がビショビショなのはもう姉も分かってるので(笑)
——タオルなども相当持っていくとなると荷物の量も半端ないのでは…?
あ、タオルはJRAが用意してくださるんです。着替えまでは自分で持っていかないといけないのですが、競馬場には洗濯してくださる方もいるので、すぐに乾かして持ってきてくださいます。
——本日最後の質問です。ペンネーム・ちかさんからのご質問です。「暑さで食欲が低下しています。料理上手なまなみ騎手の夏おすすめメニューがあれば教えてください」というメッセージをいただきました。
ズッシリしたものよりはサッパリ系のほうがいいですね。レモン風味にしたり、トマトや大葉を使いながらサッパリしたサラダを作ったりします。夏場はサッパリ系風味のものしか作らないです。
——オススメメニューなどはあったりしますか?
なんだろう…私はトマトが好きなので、トマトと大葉とツナを入れてパスタとか、あとはそうめんですね!
——本日は馬の熱中症についてまで伺う予定だったのですが、ファンの皆さんからも多くのご質問をいただいているため来週に回そうと思います。そういえば以前コラムで取り上げたスリールミニョンの新潟2歳S参戦が正式に発表されましたね。
そうですね、新潟2歳頑張ります!
——共にひまわり賞を勝ったケイテンアイジンとぶつかる形になるだけに、体が2つ欲しいですね…
本当にすごく体が2つ欲しいです(笑)
——サニーサルサでも好結果を出して、更に嬉しい悩みが増すことを祈るばかりです。今週もありがとうございました、来週もまたよろしくお願いいたします!
よろしくお願いいたします!
いつも永島まなみ騎手コラム"まなみの学び"をご覧いただきありがとうございます!コラム開始10カ月、ここまでまなみ騎手に色々な質問に答えていただきました。
"ファンの皆様と共に歩む"コラムとして、これからもファンの皆様の質問を幅広く頂戴し、ご本人に聞いていこうと思っております。
競馬に関すること、そして日常生活について、永島まなみ騎手にこれだけは聞いてみたい!ということをぜひご応募ください。頂いたご質問、メッセージは上記のようにご本人に届けさせていただきます。
すべてのご応募はメールにて受け付けております。メールの件名に「まなみ騎手へ」、本文にお名前(ペンネーム)を記載の上、以下のアドレスまでご質問をお願いいたします。皆様ぜひご投稿よろしくお願いします!
manami_nagashima@keibalab.jp
プロフィール
永島 まなみ - Manami Nagashima
2002年10月27日生まれ、兵庫県出身。
父は兵庫競馬で数多くの重賞を制した永島太郎元騎手(現調教師)。父の背中を見てジョッキーを志し、幼少期から乗馬を始め、2018年に競馬学校騎手課程37期生として入学。2021年にジョッキーデビュー。
同年3月14日中京2Rでアクイールに騎乗し初勝利を挙げると、1年目はJRA7勝を挙げる。そして2年目の22年に3倍となるJRA21勝を挙げ躍進。外枠有利が定説の新潟直線1000mで、セルレアを内ラチ沿いから勝利に導くなど大胆な騎乗も多く、ファンを魅了する騎乗に注目が集まっている。趣味は映画、ドラマ鑑賞、料理。好きな言葉は「一生懸命」。常に上を目指す期待のアスリート。