第2章「値段じゃなく、質を求める タイセイ軍団の馬選び」
2015/8/30(日)
-:馬の購入はセレクトセールに限らず、低価格帯のセールを含め、色々なセールで落とされていらっしゃります。高額馬だけにこだわられているわけではないですよね。
田:馬(体)が良くて血統も良かったら、セリで競り合って値が上がりますからね。例えば“見た目はそこまで良くなく、血統は渋くても、動きが良い馬”など“馬の質”を重視していますね。そうすると、値段はそこまで高くならずに買えますから。その中でもスターアイルのように“馬が良くて血統が良い馬”も選んでいます。いくら良い馬で良い血統でも、高い馬ばかりだったら採算が合わないので、そういう馬も織り交ぜて、高い馬、安い馬、バランス良く、ですね。上手く行く時もあれば、上手く行かない場合もありますが、(金額の)高低を折り混ぜながら買っていくだけですね。
-:では、馬選びに時間をかなり割かれている訳ですね。
田:そうですね。ただ、セレクトセールの場合は下見もしますが、セレクションやサマー、オータムセールは基本的にそれぞれの牧場が離れていますし、全てを下見するのは厳しいです。「展示」や事前の写真リストから選んでいますね。最終的には当日の比較展示で決める場合もありますが、歩かせてみて、それで買う場合もありますね。
-:馬選びの過程をジックリと聞かせていただきました。今のところデビューしていない馬で、期待している、思い入れの強い馬を教えていただけますか?
田:期待ですか?それはどの馬も期待していますよ。ただ、今年の2歳馬はそんなに高額はいませんからね。セレクトセールでも2000万円台くらいの馬ですから……。
-:昨年の1歳馬セールでの購入は2400万円が2頭と、1000万円が1頭ですね。
田:そうですね。高いのは3頭ほど競り負けしたので。(1頭の)予算が6000万円くらいで、結局7000万、8000万まで行って買えなかったケースもありました。比較的手頃な値段の馬ですが、具体名を挙げますと、矢作厩舎のダイワメジャー産駒・タイセイサミット(牡2、栗東・矢作厩舎)です。クラシック路線かどうかといえば、違うタイプかもしれませんし、もっと高い馬を落としている方もいますから、大きなことはいえませんが……。もう走っている中では、新馬勝ちしたタイセイパルサー(牡2、栗東・大橋厩舎)は去年のセレクションセールで買った馬です。ただし、良くも悪くも競馬ですから、実際に走ってみなきゃ分からないですよね。
-:馬主歴15年ほどやられて来ても、競馬は未知の世界ですか。
田:分からないですね。育成場でも「動きが良い」、厩舎に入ってからも「ものすごい時計が出た」と耳にしても、実際に走ったら全然ダメだったということは多々あるものです。一方で「時計も全然出なくて、1回使ってからじゃなきゃダメだ」と(調教師の)先生が言って、実際に走ったらソコソコ良い走りをしたとか、本当に分からないですよね。
-:予測がつかないところも競馬の良さでもあり、難しさでもありますよね。まだ、良い意味で未知の魅力がタップリな馬たち、セレクトセール購入馬の馬名なども教えていただけますか?
田:オネストリーダーリンの2013(牡2、父ヴィクトワールピサ)は矢作厩舎の予定。これはタイセイヴィクターですね。トウカイパートナーの2013(牡2、父クロフネ)はタイセイパートナーで美浦の菊川厩舎を予定しています。デビューは幾らか遅めで秋から冬にかけてだと思います。スペシャルポケットの2013(牡2、父ゴールドアリュール)は池上厩舎で、馬名はタイセイスペリオルですね。
新馬勝ち、フェニックス賞3着と好走のタイセイパルサー
-:ちなみに、馬名選びは時間を掛けるものですか?
田:いや、これはウチのスタッフが全て辞書で調べて、リストを出して、パパッと決めるので。
-:今は冠名があるので、文字数の制限がありますよね。
田:そうですね。限られてしまいますのでね。その中で重ならないように。私も最初の頃は自分で考えていたのですが、数が多いもので……。今はスタッフが考えて、その中から語呂の良いのを選んでいます。
-:ズバリ、スターアイルの2014はタイセイアイルになりそうでしょうか?
田:いや、それは分からないですね、ハハハ。それも候補に挙がるかもしれませんが、来年の時期が来た時にまとめて決めようと思います。まだ、他のセールで買う馬もいますからね。それに、同じような名前になる場合もあるので、出来れば全てリストに挙げてから、そこから名前を考えて付けるので。
田中成奉オーナーSPインタビュー(3ページ)
「馬主歴は15年 生粋の競馬ファンから馬主へ」はコチラ⇒
プロフィール
【田中 成奉】Seihou Tanaka
株式会社大成コーポレーション代表取締役。ハイセイコーが現役の競馬ブーム真っ盛りの時代に、周囲の影響で競馬に興味を持つ。不動産業、飲食業を営み、馬主資格を取得すると、2001年に所有馬が初出走。2008年のガーネットS(タイセイアトム)で重賞初制覇を挙げ、2012年にはタイセイレジェンドがJBCスプリントを制し、初のGⅠ勝利を果たした。
現在は「安くて良い馬」を探すことに尽力を注いでいるが、今年のセレクトセールではスターアイルの2014を8800万円で落札。悲願のクラシックホースを手に入れるべく、高額落札に踏み切った。主な預託先は栗東では矢作芳人、宮本博、大橋勇樹、高野友和厩舎。美浦は池上昌弘、菊川正達厩舎など。