第3章「生粋の競馬ファンから馬主へ」
2015/9/4(金)
-:ここまではセレクトセールの話を中心に伺いましたが、続いて馬主になられるまでの経緯を教えていただければと思います。競馬に興味を持たれたキッカケから教えていただけますか?
田:今、55歳ですが、私の中学、高校時代はハイセイコーの競馬ブームだったのです。生まれも育ちも浅草で、例えば、近所のアルバイト先の社長や近所の知人など競馬をやっている人が多かったですし、自然と競馬の世界に入っていきました。浅草の繁華街に場外馬券売り場があったのですが、すごく賑やかな所で、大人はみんな競馬をやっている認識がありましたね。あの時代は社会的にも一番良い頃といいますか、そんな時代に学生時代を送っていましたので、自然と競馬を覚えて興味が出て来ましたね。そして、社会に出てから、馬券はよく買うようになりました。その流れで、(周りは)競馬好きなのを知っていますから、人の紹介で馬主になりたい人に段取りしてくれるということで。興味もありましたし、(馬主)資格も全てクリア出来たので、なってみようかと思いました。
酷暑の中でも必ずと言っていいほど競馬場に足を運んでいた田中オーナー
-:所有馬の初出走が2001年だったようですね。
田:その1年くらい前に地方競馬の馬主資格を取って、それから中央の資格を取りましたね。そして、今のスタッフと出会ってからは7~8年くらい経つのかな。彼はわかりやすく言えば、「馬のマネージャー」と云いますか。厩舎、調教師との連絡や所有頭数もいますので、その管理を任せていますね。牧場にも定期的に見に行ってもらいますし、今の時期ならばセリの下見をしたりしますよね。もうすぐサマーセール(8/24より開催)も控えていますから。外での仕事がない場合も、「次にどのレースを狙っていこう」と調教師と相談しながら、距離や芝、ダートの条件などを考えていって、それを私自身が(報告を)受けて、「じゃあ、こういう風にしようか」と決めると。馬選びもそういう流れですよね。
「やっぱり自分のお金ですからね。優秀な先生は沢山いますが、自己責任で探した方が良いのではないか、ということで、今のスタッフと出会い、それからは全て我々で馬を見るようにしました」
-:その甲斐もあってでしょうか。近年は成績が上がっていますよね。
田:そうですね。自分で馬を見られないと、調教師の先生に探していただかないといけないのですが、やっぱり自分のお金ですからね。優秀な先生は沢山いますが、自己責任で探した方が良いのではないか、ということで、今のスタッフと出会い、それからは全て我々で馬を見るようにしました。
-:始めた頃より、今の方が充実した馬主人生を送っていらっしゃるのですね。
田:そうですね。まあ、良い年、悪い年がありますが、自分で納得して買って、成績が良い時もあれば、悪い時でも自分が納得して買って。その積み重ねあっての成績ですから。そうこうしていく内に所有頭数も増えましたね。
-:「厩舎との打ち合わせをしている」という話でしたが、ジョッキー選びなどに進言されることはあるのですか?
田:進言といいますか、まずレースが決まって、先生によっては勝手に決めている場合もあります。こちらから「ジョッキーは誰が空いていますか」と確認することもありますし、水曜日の想定を見て、空いている人から決めることもあります。確実にレースに出られる場合は、先生の方から「ジョッキーはこの人で良いですか?」という確認は来ますね。
「戸崎ジョッキーは本当に信頼しています。あれだけのトップジョッキーなのに、礼儀正しい人ですよね。ただ、人気のある方なので、先約があったりしますから。小牧さんも中京の時に数多く乗ってもらうこともありましたね。最近も一日に何頭も乗ってもらう機会もありましたから」
-:ファンとして注目すべきところは「オーナーがこのジョッキーを乗せた時は勝負だ」とポイントがある程度分かると、ファンとしても役立つ情報です。ぜひ、それを教えていただけると……(笑)。
田:どうですかね。皆さんに頑張ってもらいたいので、「トップジョッキー」とでもしておきましょうか……、ハハハ。
-:通算成績では岩田騎手で一番勝たれていますが、偏りなく色々なジョッキーで勝たれている印象ですね。
田:万遍なくやっていますね。昔、よく預けていた安藤厩舎の主戦だった川島(信二)ジョッキーは乗る機会が多かったですね。関東で言えば、戸崎、内田ジョッキー、最近は田中勝春ジョッキーも多いですね。比較的、私が選んでいるというよりも先生の方でして。
-:厩舎側の意向が強いということですね。
田:ただ、「ここは勝負だから」と、そういう形で頼む場合もありますよ。あとは外国人ジョッキーもここ一番で、馬によっては腕っぷしが強い方が良い場合もありますからね。そういう条件の場合は依頼することもありますが、「勝負でこの人」というハッキリしたものはないですね。
-:主には今、挙がってきたジョッキーが中心ということですね。競馬ラボとしては縁のある戸崎さんや小牧さん騎乗での活躍も期待したいところです(笑)。
田:戸崎ジョッキーは本当に信頼しています。あれだけのトップジョッキーなのに、礼儀正しい人ですよね。ただ、人気のある方なので、先約があったりしますから。小牧さんも中京の時に数多く乗ってもらうこともありましたね。最近も一日に何頭も乗ってもらう機会もありましたから。
-:彼らの騎乗で大きいところを獲る機会を期待しています。ちなみに、愛馬のレースは現地で観戦されることが多いですか?口取り写真には大体写っていらっしゃる印象を受けました。
田:ええ、ほとんど行っていますね。
-:現場にこだわられているのですね。
田:いや、こだわるというよりも、それを楽しみにやっている部分もあります。現場に行けない時はテレビで応援はしますが、やっぱり現場に行ってレースを観たり、勝ったりするのが楽しくて、馬主をやっているというところもありますね。現場に行かなければ、その魅力が半減しますし、レース前の緊張感や、そういう雰囲気が好きでやっていますから。だから、なるべく時間があったら、行くようにはしていますね。毎週のように競馬場に行って、自分の馬が走るのが楽しいですし、逆に走らない週は面白くないといいますか。だから、(持ち馬頭数が)増えてくる事実もありますね。ほとんどガッカリすることが多い、“負けるスポーツ”ですから、人気の馬がボロ負けしてしまったら落ち込んだりもするのですが、次の週に楽しみはやってきます。週末が楽しみで、馬主をやっていると言っても過言ではないですね。
田中成奉オーナーSPインタビュー(4ページ)
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プロフィール
【田中 成奉】Seihou Tanaka
株式会社大成コーポレーション代表取締役。ハイセイコーが現役の競馬ブーム真っ盛りの時代に、周囲の影響で競馬に興味を持つ。不動産業、飲食業を営み、馬主資格を取得すると、2001年に所有馬が初出走。2008年のガーネットS(タイセイアトム)で重賞初制覇を挙げ、2012年にはタイセイレジェンドがJBCスプリントを制し、初のGⅠ勝利を果たした。
現在は「安くて良い馬」を探すことに尽力を注いでいるが、今年のセレクトセールではスターアイルの2014を8800万円で落札。悲願のクラシックホースを手に入れるべく、高額落札に踏み切った。主な預託先は栗東では矢作芳人、宮本博、大橋勇樹、高野友和厩舎。美浦は池上昌弘、菊川正達厩舎など。