第3章 競馬界、球界 ここだから明かされるエピソード


戸崎圭太×松田宣浩「日本一の熱き男たち」(第2章)はコチラ⇒


ベストパフォーマンスを発揮するためのコンディショニング論

-:ピッチャーだったら、肩やヒジの消耗に関することが最近は言われているので、そういうことも関わってくるのかなと思いますね。お二人はアスリートということで、体づくりなどそういった部分でトレーニングをされていると思うのですが、普段のルーティンワークみたいなものがあれば教えて下さい。

松田:僕は打つバッターで、やっぱりパワーがないといけないので、当然ウエイトトレーニングというのは毎日やっています。試合前はしっかり1時間ウエイトルームに入って、練習して試合に臨む、これの繰り返しですね。逆に、試合が終わってからはやらないですね。試合前に動かした筋肉をゲームに繋げたいタイプで、本当に月曜日の休み以外は毎日やっています。

圭太:そういうところ騎手にはない習慣ですよね。ストイックですごいですね。

松田:逆にやらなかったら、動きが悪いというか、体の入りが悪い感覚があるんですよね。それが嫌なので、キツくても毎日やって(試合に)臨むようにはしています。

圭太:やっぱりマッサージとか、ケアはするんですよね?

松田:ええ。試合が終わってからはトレーニングを止めて、全部ケアに回すんですよ。体を鍛えるということに関しては、騎手の方はどうやってやるんですか?

圭太:あまり他の騎手がどうしているかは聞いたことはないのですが、僕は純粋な筋トレということではないですね。専属のトレーナーさんがいまして、元々エアロビクスをやっていた人で、柔らかくリズミカルというか、そんなトレーニングを組んでもらっています。強さよりもしなやかさと言いますか。そういう効果が馬に乗った時に良い形で出てくるのかなと、最近思っているのですが。

松田「体重が90キロくらいないと打球が飛ばなくて、軽すぎたらダメですね。もう32歳なので、これが完成形として、あと10年くらいは現役をやりたいと思います」


松田:そんなエクササイズを全くやらない騎手も多いのですか?

圭太:何かしらやっているとは思うんですけどね。あまりやっても(筋肉で)体重が増えるので、それもちょっと怖いなというのもありますが。

松田:あぁ~、そういう制限もあるわけですね。体重は常に気にされていますか?

圭太:僕は太らない体質なので、毎日食べて、飲んで、全然気にしないです。騎手は、やっぱり体重が一番気を付けないといけないところなので、重い人は大変ですよね。

松田:軽ければ軽いほど良いというものではなく。

圭太:そういうわけではないのですが、軽ければ節制を何もしなくて良いですね。ただ、レースに乗る際の重量(斤量)は決まっているので、軽すぎると、今度は鉛を持たないといけなくなっちゃいますし。ある程度というのが一番良いのかなという気はしますね。

-:ちなみに、戸崎さんは今何キロぐらいですか?

圭太:僕は、今50キロくらいですね。

松田:自分は90キロくらいです。プロに入った時は78キロくらいで本当に細かったのですが、ご飯も食べて、お酒も飲み始めて、体を鍛えたら、簡単に10キロ増えちゃいました。体重が90キロくらいないと打球が飛ばなくて、軽すぎたらダメですね。もう32歳なので、これから体重を増やすことは考えずに、キープするイメージですね。これが完成形として、あと10年くらいは現役をやりたいと思います。

対談

食事はストレスなく自由に摂ることがモットー

圭太:食事もバランス良く食べたりするのかな。食事のことって、やっぱり気にするタイプですか?

松田:(気には)するにはするのですが、僕は制限をしたら、逆にストレスになっちゃうので。考えてはいるのですが、やはりそれよりも好きなものを食べて、しっかり食べることの方が、次の日の切り替えにもなりますしね。

圭太:僕も同じですね。段々と、色々考えなきゃなと思ったりもするのですが、何かそういうことに疲れちゃうというか、ストレスになっちゃいますもんね。分かりますね。

松田:僕は量もけっこう食べますね。遠征先ではだいたい焼き肉を食べたり。しかも、ナイターが終わってからなので、大体0時とかから焼き肉を食べて、昼まで寝るという非日常的な生活ですね。野球選手は「時計が傾いている」ので、ナイターの時は大体12時ぐらいまで寝るんですよ。それで18時から試合をして、22時くらいに終わって、何やかんやで0時過ぎからご飯を食べて、2時くらいに寝て12時に起きるという。

圭太:けっこう寝られるんですね。普段からよく睡眠はとりますか?

松田:そうですね。10時間くらい寝ますね。

対談

▲トレセンで調教をつける戸崎騎手


-:そういう意味ではジョッキーは逆というか、朝も早いし、寝る時間も短いのかなという気がしますが?

圭太:でも、睡眠時間に関しては、僕もけっこう寝ますね。

-:ちなみに、早い時期の起きる時間だとどれくらいですか?

圭太:移動もあったりするので、夏場だと3時に起きて、朝は(調教が)5時から。でも、朝が終わっちゃえば仕事は終わりなので、あとはフリーという感じですね。トレーニングをしたり、交流レースに乗る日もありますし、金曜ならば移動もありますから。

松田:えっ、その朝は5時から何をされるのですか?

圭太:馬に乗って、馬のトレーニングですね。今は朝も寒いですよ。

松田:僕は、騎手の方の1日のスケジュールが全く分からないので、ちょっと教えていただきたいのですが、週末のレースの日はまた違うんですね?

圭太:レースの日は、レースごとに発走時間があるのですが、その時間の1時間10分前に準備が出来ていないといけないんです。それまでに食事をしたり、お風呂に入ってストレッチをしたり。あとは夕方までレースで、終わっちゃえばあとは自由ですが、また次に日曜日もレースがあるので。平日は、夏場は朝5時からで、冬は7時からです。5~6時間やったらその後は比較的自由かなと。若い騎手なんかは午後に厩舎に行って、運動とか厩舎の手伝いをしたり、という仕事があるのですが、そんなに大変ではないですね。

松田:いや~、野球にない独特な感じがありますね。

対談

松田選手ならではケンケン誕生の秘話

-:改めて野球経験のある戸崎さんから、何か野球界についての質問や疑問はありますか?

圭太:僕は小学校、中学校の時から、二塁の牽制などの作戦を出すためのサインが面白くて好きだったのですが、プロ野球にもあるんですよね。それは小、中学校のレベルとは近いますよね?

松田:サインは一通り色々とあります。ただ、それが同じレベルなんですよ。バント、スクイズ、エンドランとか、そういうレベルです。ただ、牽制などはどんどん発達して、誰が動いたら誰が入るとか、細かなサインをつくったりしてやっていますね。

圭太:これは主にアマチュアだけでしょうが、1塁3塁で、1塁ランナーが盗塁した時、キャッチャーが2塁に投げちゃうと3塁からホームに走ってこられるので、途中でショートとかセカンドが途中で捕ってやるとかね。

松田:あります、あります。そういう練習はたくさんやります。

圭太:へぇ~、基本は変わんないんですね。

-:私も高校まで野球をやっていましたが、本当に変わらないのかな?という気もしますけどね(笑)。

松田:いやいや、本当に変わらないですよ。

圭太:やっぱり(バッターボックスに)立って、球種も読みますか?

松田:そうですね。ただ、闇雲に見えたボールを打つとなると打てなくて、内とか外とかのゾーンで来る、真っ直ぐでくるか変化球で来るか、だいたい前もって予測していきますね。闇雲に打っても打てないです。

圭太:色々な球がありますからね。カーブだったら「こういう打ち方」と変えたり?

松田:あります。ボールが来るといっても、真っ直ぐかスライダーかシュートかフォークかと色々なボールがあるので。それの軌道にバットを合わせていけませんから、当然打ち方は違いますよね。打席に入る前に、相手投手の大体3種類くらいの球種は常に頭に入れて、スイングの軌道のイメージをしますね。

松田「(ケンケンは)野球選手も個人でそういう特徴をつくっていった方が良いかなと思って、敢えて作ったんです。それをやり始めてから、調子のバロメーターになったので」


圭太:140~150キロって、メッチャ速いですもんね。

松田:今は、本当にピッチャーのレベルも上がって、150キロを投げるピッチャーがたくさんいまして、日本ハムの大谷君などは160キロの世界ですから。小学校だったらイメージとして、キャッチャーまでふわふわって来るじゃないですか。それを打つ、という感じとすれば、今の大谷君だったら、大谷君が振りかぶったら、もう(キャッチャーのミットに)入っている感覚ですね。この間隔が本当に短いです。

圭太:想像できないスピード感ですよね。試合中、今日は何か調子が悪いなと分かるのですか?

松田:分かりますね。(バッターボックスに)立った感覚でちょっと不安というか、フラつくという感じですかね。

圭太:そういえば松田選手のケンケンを(映像で)観させていただいたのですが、あれは自分の(ゲン担ぎ)ですか?

松田:僕のバロメーターです。調子が良い時に出るので。

圭太:ハハハ、調子が良い時に出るんですか?

松田:はい、そうです。まず、野球選手も個人でそういう特徴をつくっていった方が良いかなと思って、5年くらい前に敢えて作ったんです。それをやり始めてから、調子が良い、悪いのバロメーターになったので、結果的に良かったかなと思います。

松田宣浩×戸崎圭太「日本一」の熱き男たち(第4章)
「最高の瞬間の舞台裏」はコチラ⇒