第4章:1番人気で25連敗 その時の心情は?「納得している訳じゃ…」
2017/4/23(日)
今年1番人気を23連敗したんですよ。その時もすごく良い経験が出来ているという意識があって。負けて納得している訳じゃないのですが、それも何か自分の成長になっているように思えると…。
-:最後は今回のエコバックデザインコンテストで採用された、たけむらのぶとしさん。イラストレーターをされているとのこと。続いてお願いします!
たけむら:よろしくお願いします。まず、ただでさえ、競馬というのはヤジられることが多い職業だと思うのですが、いま3年連続リーディングになられて、よりヤジもキツくなったり、プレッシャーがあるとは思います。それをどのような方法で跳ねのけられているのか教えて下さい。
圭太:もともと、ヤジというのも、すごくありがたいと思えていましたね。やっぱり応援してくれているからこそ、飛んでくることだと思いますし、別に何も思っていなければヤジもないでしょうから、そういった面ではそんなに苦になったことはないですかね。
ただ、最近の日曜日ですが、(中山で)常に僕に声を掛けてくれる人がいて、皆さんご存じですかね?入場の時から「今日は俺が来たぞ~」みたいな、「頑張ってくれよ、やってくれよ~」みたいな感じで言われて。結果が残念な時は「俺が買ったから勝てないのか」とか、「何やってんだ」とか。本当に注目してくれているとは感じるので(笑)。
でも、ヤジでも、競馬場の雰囲気を変えるようなヤジは止めてもらいたいですね。自分というよりも、やっぱり周りの人も、他の人に対しても勝ちたくてやっている訳ですし、わざと負けている訳じゃないので、そういうところはあまり汚い言葉や言い方は止めていただきたいなと。
「競馬を見始めたキャリアは浅い」というイラストレーターのたけむらさん
しかし、質問内容は真剣そのもの 戸崎騎手はどう答える!?
-:たけむらさんはヤジったりはしているのですか?
たけむら:全くしていないですね。心の中でたまに不満は……。
圭太:ありますよね。あります(笑)。やっぱり僕なんかでもボクシングを観ていても、もう一発いけば倒れるじゃんみたいな、早くいけよ!みたいな。だけど、手が出ないんですよね。自分がこういう立場なので、そういう面でも見方も変わってきましたね。ここでやればという時でも、多分それが出来ない理由があるんだというのが、すごくそれは感じますけどね。やっぱり周りの不満をなるべく少なく出来るように、僕たちもパフォーマンスを繰り広げていかなきゃいけないですしね。信用問題なんでね。
たけむら:ありがとうございます。何のためにいま騎手という職業をされていますか。勝った時の快感であるとか、みんなの期待に応えたい、色々な経験を経て気持ちが変わってくるのかなと思います。
圭太:僕はもともと騎手という職業は知らなかったので、当初は思いもしなかったのですが、結果が良いから思うことではなく、すごく好きな職業という意識はありますね。今まで色々なことがありましたが、辞めたいと思ったことは一度もなかったですし、好きなことを職業に持てたことはすごく幸せに思います。
満足することがないので、また課題も出てくるし、目標も出てくるし、夢もあります。そういう思いを追い続けているので、すごく自分はすごく幸せだなと感じながらやっていますね。それが答えなのか分からないですが、大丈夫なのかな……?最初はやっぱり何かカッコつけたい、目立ちたい、有名になりたいという気持ちがあってやっていたのですが、今はそれよりもファンに認められたい。ファンもそうですし、関係者もそうですが、「認められる」騎手になりたいですね。あとは騎手としてだけではなく、人としてもしっかりした人間でありたいと思います。
たけむら:素晴らしい心構えですね!戸崎さんは「(馬券は)買われない」ということだったのですが、もし、自身が地方競馬の馬券を買うとしたら、どういった部分を一番重視して予想をされますか?
圭太:馬の雰囲気ですかね~。
たけむら:パドックを診てということですね。
圭太:そうですね。自分を信じて、その馬の雰囲気を感じ取って、次に新聞を見て、これが人気なんだな、というので買えたら良いですかね。
たけむら:普段よく乗られる馬って、この日は調子が良さそうだなとか感じることはあるのですか?
圭太:ありますよ。跨った瞬間に感じる時もありますし、返し馬に行って、準備運動で感じる時もありますし、だから、それこそ昔、返し馬が終わってゲート裏で待機しているじゃないですか。返し馬が終わって発走までにオシッコをすると走るという馬がいました。それでオシッコをしないとその時はレースで丸っきりダメだという馬がいましたね。何かそういう馬(エアシェイディ)もいるんですよね。
たけむら:ジョッキーという仕事で、楽しい面と辛い面が両方あると思うのですが、いまそれの割合はどれぐらいでしょうか?
圭太:今は8・2ぐらいですかね。比率はどっちだと思います?
たけむら:そうなんですね。年間数百という騎乗をされることが多いと思うのですが、騎手は負けることが多いのが普通ですが、その負けることに対して慣れてしまうこととかはないですか?
圭太:一切ないですね。気持ちですね。ただ、負けることで学ぶことがすごく多いですよ。だから負けも無駄にしちゃいけないなというところですかね。どんなに着順が悪くても、何か感じるものがあったりするので、慣れることというのはないですね。
たけむら:負けの方が勉強になるということですか。
圭太:その方が多いですかね。だから、競馬だけじゃなくても、失敗すると何か得るものがあるとよく言うんですけどね。それとよく似たところがあるかなというところですね。
たけむら:ジョッキーという仕事で、楽しい面と辛い面が両方あると思うのですが、いまそれの割合はどれぐらいでしょうか?
圭太:今は8・2ぐらいですかね。比率はどっちだと思います?
たけむら:8・2ですか。差がありますよね。「辛い」が8ですかね。
圭太:いや、違うんですよ。負けて楽しいという訳じゃないのですが、それこそ今年1番人気を23連敗したんですよ(2016年から含めると25連敗)。その時もすごく良い経験が出来ているという意識があって。負けて納得している訳じゃないのですが、それも何か自分の成長になっているように思えると、楽しいように変えられて、良い時を過ごさせていただいていますよ。すごく楽しい時間が多いですね。
たけむら:それは昔から変わらないですか?
圭太:いや、1年を通しても波があるので、今はそういう時期というくらいで、また8・2が逆転して、苦しい方が8になっちゃうかもしれないので、分からないですが……。やっぱり勝てない時は苦しかったり、申し訳ないなという気持ちになって、どんどん悪循環になっていってしまうこともあっても、今はダメな時でも良いように変えられている自分がすごく楽しいなと。
たけむら:なかなかポジティブですね。地方と中央の違いは多くあると思うのですが、その中で競走馬自身の内面的な違いとかはありますか?
圭太:内面的というのかな、中央の方が何か元気が良いですね。
たけむら:それは、単純に地方の方が走る回数が多いから疲れているということですか?
圭太:う~ん、攻め馬をしているところとレースしているところが一緒じゃないですか。だから、慣れているというのもあると思いますし、中央だとやっぱり環境が変わりますのでね。そこでイレ込んだりというのもあると思いますが、基本というか、全体的に元気が良いですね。
たけむら:ジョッキーにとって一番大切な質というのはどんなものになりますか?
圭太:ジョッキーにとって、ですよね。いや、一杯ありますね。まずは、僕の中ではその馬の性格であったり、癖だったりを早く感じ取って、その馬が一番良いパフォーマンスが出来るようにレースを組み立てなきゃいけないという考えがあるので、それが瞬時に感じ取れることなのかと。
たけむら:感覚的な部分ですか?
圭太:そうかな。まあ、色々あります。スタートもすごく大事なことでしょうが、何か一概に一つというのは言えないのかもしれないですけどね。
たけむら:人によっても意見が違いそうですね。
圭太:そうですね。これは面白い質問ですね。他の人にも色々聞いてみたいな。