初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
『レイズアベール』
2018/1/30(火)
皆さんこんにちは。ライター大和屋です。競馬に関するニュースがあまりにないので困っていましたが、先日、一口の馬が古馬牝馬限定の500万特別を勝ち上がったので、それについて書きたいと思います。
ええと、レイズアベールはサンデーサラブレッドクラブで募集した栗東・吉村圭司きゅう舎所属の4歳牝馬です。血統は父ハーツクライ、母ヴェイルイオブアバロン、あのリルダヴァルやヴォルシェーブの兄妹です。良血であることは言うまでもなく、牝馬ということもありますが、値段もお値打ちと思ったので飛びつきました。本当のセリでもこのぐらいの値段でハーツの仔が買えれば言うことないのですけどね。
新馬戦は鋭い末脚を伸ばして勝ってくれたのですが、その後は年内に4戦するも、勝ち上がることができませんでした。クラブのHPによると、他馬を気にして力を発揮できないみたいなことが書いてありました。距離適性なんかも今成績を見返してみると、いろいろと試行錯誤したように見受けられます。デビュー戦が1400mで、1600m、1800mなどいろいろな距離を使っています。そして今回の西尾特別は2000m、イイナヅケにも通じることなのですが、本当に200m違うだけでレースの質がまったく異なるものになるのを最近痛感しております。馬なりで追走していくスピードも1200mと1800mじゃまったく異なりますからね。本当に競馬は難しいです。
デビュー戦以来となる待望の勝ち星を手にしたレイズアベール(写真は新馬戦時)
とまあそんなレイズアベール、今回は芝2000mを使う上に、そこそこ良いスタートを決めたにも関わらず最後方待機という競馬を選択しました。2枠2番だったので好スタートをきったら好位につけてほしいと思うのが人情ですし、後ろに下がっていく彼女を見てがっかりしたのは恐らくではありますが、僕だけではなかったはずです。
レースのペースはそれほどあがらず淡々と進んでいき4コーナーから直線に向かうと大外へと持ち出します。最後方待機で大外ぶんまわし、今までの成績を見るともうアカンと思ってしまってもおかしくないこの状況で、なんとなんと、大外からすごい勢いで伸びてくるではありませんか?
最近自分の馬の勝利からかなり大幅に見放されている僕ですのでTVの画面を見ていてちょいと信じられないくらいの驚きでしたが、かなーり、久しぶりに自分の馬のレースのゴール前で声が出ました。最後方から大外一気、まるでホクトヘリオスのレースを見ているかのようでした。レイズアベールはゴール寸前きっちりアタマ差、差し切ってくれていて、うれしい2勝目を特別レースで飾ってくれました。秋山真一郎騎手の好騎乗といえるでしょう。ありがとうございました。
レース後のHPでのコメントを見ると、レース前からこういったレースを試そうと思っていたとのこと、他馬を気にするので影響を受けにくい最後方に待機して最後の直線にかける。その作戦が功を奏して今回の結果です。好スタートから最後方待機の直線大外ぶんまわしからの大外一気で勝ってしまう。こんな派手な勝ち方ができるならもっと前に効率的に勝ってくれてもいいのにとどこかで思ったり、あんなに脚を使って反動が気になったり、いろいろと考えてしまったりするのですが、結局のところ、気性に問題があった結果、こういう戦略を選択せざるを得なかったということなのかもしれません。
それほどタイムも速いわけではないので上にいってすぐ通用するかはわかりませんが、相手云々というよりは力をいかに発揮させるかが彼女にとっては大事なことなのかもしれません。オツウちゃんも他の馬を怖がるところがあったので、結果逃げ馬になってしまいました。気性というのは本当に難しい。能力がある馬がそのまま勝ち上がることがいかに難しいか、改めて思い知らされた上に、勝利を手繰り寄せる努力を調教師の先生たちは常にし続けているのを改めて確認し、頭の下がる思いです。
吉村先生、秋山騎手、関係者の皆さま、レイズアベールを勝たせてくださり本当にありがとうございました。一口の馬なのですが久しぶりの勝ち星のお陰で美味しいお酒を飲むことができました。
イイナヅケは2月の府中のダート戦を使うことを前提に調整が進んでおります。マダムジェニファーは放牧に出ているかと思いますが、復帰戦などについてはまだ僕にはわかりません。
そして今年2歳になったジャスタウエイ産駒、レイズアンドコールの2016ですが、順調に来ておりすでにハロン16秒の調教を行っているそうです。
一口のジャスタウェイ産駒の動向をみても程度の違いはあれ、概ね順調に来ている馬が多いような気がします。順調に来ていないとしても、ハーツクライの後継種牡馬の子供です。成長力は抜群のはず、ですので長い目で見てあげましょう。
真面目な話、クラブ中心ではありますが、周囲を見渡してみても、というかコメントを見る限り、順調な馬が多い上に素直な良い仔が多いような気がします。お父さんも気性良しでいつも真面目に一生懸命走ってくれました。実力を実力通りに発揮するのが難しい競馬という世界だからこそ、気性の良い素直な良い仔が多いというのはセールスポイントになっているような気がします。
今年はジャス君の種付け料が300万円、今までより50万円もお求めやすくなっております。生産者の皆さま、初年度産駒が走り出すのは今年です。つまりは来年以降こんな値段で種付けできることは恐らくないでしょう。ないと僕は願っております。ジャスタウェイの種付けに興味のある生産者のお方は、是非社台スタリオンにお申込みくださいませ。よろしくお願いいたします。
了
早ければ6月には産駒がデビューするジャスタウェイ
近況も大和屋オーナーからいただきました!
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。