キングジョージを総括[和田栄司コラム]

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第62回 キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝1M4F)は、21日、英アスコット競馬場で行われた。

愛バリードイルはウインザーキャッスル、仏アラン・ド・ロワイエ・デュプレ厩舎はシャリタを回避させ、10頭立てに変わった今年のキングジョージ。人気は、今季準重賞とG2ハードウィックSを連勝して来たG2・2勝馬シームーン2/1、昨年の勝馬でG1エクリプスSを勝って中14日で臨むナサニエル5/2、バリードイルのG1・3勝馬セントニコラスアビー5/1、昨年メルボルンカップと香港ヴァーズを連勝した仏ドゥナデン8/1、凱旋門賞などG1・3勝の唯1頭の牝馬デーンドリーム9/1で続いた。

パリ大賞典勝馬リライアブルマン、東京優駿勝馬ディープブリランテのG1勝馬は20/1と人気がない。負担重量は3歳のディープブリランテ8st9lb(55キロ)、牝馬のデーンドリームは9st4lb(59キロ)、他の8頭は9st7lb(60.5キロ)である。

レースは、初めクレイグ・ウイリアムズ騎乗のドゥナデンが前に出た。バリードイルの用意したペースメーカーのロビンフッドが出遅れた為である。しかし、ラチ沿いから上がって行き3ハロン走ったところで先行位置に入った。ドゥナデンが2番手と意外な位置取りはクレイグ・ウイリアムズ騎手がスローペースになると判断した為か。ブラウンパンサーが続き、その後ろの外にナサニエル、内でデーンドリーム、ディープブリランテは7番枠からの発走で外の6番手、その後ろにマスクドマーヴェル、リライアブルマン、シームーンが続き、最後方がセントニコラスアビーの順である。

ロビンフッドのリードは4馬身に広がったが、4コーナーに向かう残り3.5ハロンからドゥナデンが早くも交わして先頭に立った。ブラウンパンサーがクビ差で続き、その後ろに外ナサニエル、内デーンドリームで最終コーナーを廻る。ナサニエルは残り1.5ハロンで抜け出したが、デーンドリームは前にブラウンパンサーがいて、ナサニエルが追い出した後、外に出して追走した為、残り2ハロンでナサニエルから2馬身半差が付いた。しかし、残り1ハロンで2馬身、残り100ヤードで半馬身差に迫り、並んでゴールした。見た目にはナサニエルがギリギリ残ったように見えたが、スローで見ると最後デーンドリームのハナ先が伸びていた。

優勝デーンドリーム、勝ちタイムはグッドトゥソフトの馬場2分31秒62、ハナ差2着ナサニエル、1馬身半差3着にこれもラストストライドでセントニコラスアビーが、残り100ヤードで3番手に上がったリライアブルマンを頭差交わして上がった。ディープブリランテは直線残り2ハロンで内のマスクドマーヴェルと5番手の競り合い、外からリライアブルマンが来て挟まれた感じになって万事休したが、最後は疲れ果てたマスクドマーヴェルを交わして8着。しかし、7着のブラウンパンサーからは10馬身も遅れた。

アンドレアシュ・シュタルケ騎手で勝った独デーンドリームは、ロミタス産駒の4歳牝馬で共同オーナーとして吉田照哉氏が凱旋門賞直前に権利の1部を購入した。これで通算成績は16戦7勝、凱旋門賞に並び欧州競馬の最高峰のビッグ2を制したことになる。引き上げて来たシュタルケ騎手は、何度もスタンドに向かって投げキッスを送り、両手でガッツポーズをして見せた。「彼女は小さな牝馬だが、大きな心臓を持っている。今日も一生懸命走ってくれて、私にとって人生の最高の瞬間です」と話した。

ピーター・シールゲン調教師は「とても良い感じでした。ドイツにとっても、ドイツの競馬にとっても良いことです。我々は次にバーデンバーデン(バーデン大賞)に行き、その後凱旋門賞を使うことになるでしょう」と語った。デーンドリームは昨年もG2マルレ賞で8頭立ての5着に終わった後、同時期に行われたベルリン大賞を勝ち、バーデン大賞、凱旋門賞までG1・3連勝した。今季も前走のG1サンクルー大賞典で4頭立てのしんがりに敗れた後、キングジョージを勝ち、凱旋門賞まで同じスケジュールで臨む。59キロの斤量を克服して更に強いデーンドリームが見られそうだ。

また連覇を阻止されたジョン・ゴスデン調教師は「私はゴールラインにいながらどちらの馬が勝ったか分からなかった。2着に敗れたとは言え、ナサニエルの努力には興奮した。2週間で二つのレースを走ったなんて信じられないことでとても印象的です」と話し、次の目標をチャンピオンズSに置いていることを明かした。そして可能ならば、その前に凱旋門賞を使うことになりそうだ。

ディープブリランテは斤量的に恵まれたが、タイトな競馬に順応出来なかった。初めての海外遠征は、ダービー馬でインターナショナルSを勝って凱旋門賞で全く良いところなく10着に敗れたオーソライズドの例もある。重厚な馬場で鍛えられた馬でさえ、初めての海外挑戦では跳ね返される難しさがある。エアシャカールの出走した2000年のキングジョージは5着。中団から4コーナー手前で前団に取り付いたが、直線は最後方にいたモンジュー、その前にいたファンタスティックライトに置き去りにされた。

今年は2000年のキングジョージよりもメンバーが揃った。上位3着までは複数のG1勝馬が占め、4着までがG1馬。ロイヤルアスコットのG2ハードウィックSを勝ったシームーンが、同じ馬場で同じ距離を経験していることで1番人気に推されたが、これが5着。欧州のG1馬にはそれだけの価値があり、豊富な経験がこのような結果に落ち着いたものと思われる。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。