先週末は米国でクエスティング

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先週末は米国でクエスティング、仏国でスノーフェアリーが驚異的なパフォーマンスを見せG1優勝を飾った。2頭に共通するのは牝馬、キングジョージを勝ったデーンドリームに続いて今再び牝馬に熱い視線が送られている。

18日、米サラトガ競馬場で行われた3歳牝馬による第132回アラバマS(D10F)は、ゴドルフィンのクエスティングが逃げ切り勝ち、後続に9馬身差を付けて圧勝した。ハードスパン産駒の英国で生産されたクエスティングは、英国時代はジョン・ゴスデン厩舎に所属、6月ニューベリ競馬場の牝馬のメイドンを3馬身半差で勝ち、G3プレステッジSを3着、G3オーソーシャープSを2着した後、チャーチルダウンズ競馬場のG1BCジュヴェナイルフィリーズに挑戦して5着、4戦1勝でシーズンを終えた。

ゴドルフィンがトレード、米キアラン・マクラクリン厩舎に移籍した今季は、3月ガルフストリームパーク競馬場で4着、5月ベルモントパーク競馬場で5着。鳴かず飛ばずの成績でダートに転向、6月ベルモントパークのアローワンスを勝つと、続くG1CCAオークスを4馬身4分の1差で勝ち、アラバマSの圧勝で、ダート転向後3連勝(2歳時にBCジュヴェナイルフィリーズで経験しているが、先行策から押して行く現在の走り方とは違っていた)、G1連勝で、通算成績を9戦4勝、2着1回、3着1回とした。

キアラン・マクラクリン調教師は「トレーニングをやり始めて以来、最も印象的なパフォーマンスになった。以前(1996年)キーオブラックという馬で、ドバイ(当時のドバイデューティーフリーはダートの2000m戦)で20馬身差を付けて勝ったことがある。シガーは30分後に(DWC)走って勝ったよ。シガーよりもダートで速く、マイル&クォーターを走る。それは同じレベルで、しかも印象的である。クエスティングの活躍は米国のトレーナーにとっても救いになるだろう。何故かと言うと、多くのハードスパンの仔は欧州に行った。ハードスパンはダンジグの息子で、欧州で人気が高いからだ。しかし、私は彼女にはダートが大きな助けになったと思っている。芝ではハードに押して行く競走が出来ないかわりに、ダートではそれが出来たから」と話す。

ただ気になる点は、CCAオークスの時も、アラバマSの時も、直線外によれた。よれる馬は強いと言うが、この癖のようなよれ方は早急に直さなければならないだろう。クエスティングのアラバマSのパフォーマンスには、ベイヤースピード指数が106与えられた。ゴドルフィンのレーシングマネージャーのサイモン・クリスフォード氏によると、次は9月22日パークスレーシングで行われるG2コティリオンSになるようだが、同期対決はCCAオークスとアラバマSで十分、是非BCクラシックを目指して貰いたいものである。

19日、仏ノルマンディーのドーヴィル競馬場で行われた4歳以上牝馬による第9回ジャンロマネ賞(芝2000m)は、昨年のG1エリザベス女王杯から中280日となるスノーフェアリーが、後方から驚異的な末脚を発揮、シーズンデビューを勝利した。レースは9頭立て、スノーフェアリーは、後方7番手の外でレースを運び、道中は先頭から12馬身差が付いていた。ペースが4コーナーに向かう残り600mから急に上がり、直線では最後方のイジートップに並ばれ一旦最後方になったが、これが災いしてか、追い比べを制して75m残して先頭に立ち突き抜けた。因みにこのレース、前半の1000mは1分05秒6、後半の1000mが1分00秒7、ラスト600mは35秒6、400mが25秒6、200mは11秒8だった。

ライアン・ムーア騎手とはこれが6回目の騎乗で、その全てを勝ち、その全てがG1、通算成績を20戦8勝、2着4回、3着4回とした。エド・ダンロップ調教師は「華麗なスノーフェアリーを再び見ることが出来た」と喜び、オーナーのレーシングマネージャーを務めるパトリック・クーパー氏は「驚異的なパフォーマンスで、とても信じられない。彼女は優秀な馬で、常に期待されている。しかし、今日我々は決して勝利を期待してはいなかった。彼女は深刻な傷害に悩まされ、長い間競馬場から離れて過ごして来た。彼女の偉大なところは、何もなかったように我々をハッピーにしてくれることです」とコメントした。

インティカブ産駒のアイルランドで生産された5歳牝馬のスノーフェアリー、次走は愛チャンピオンS、ヴェルメイユ賞などが考えられている。そしてブックメーカーのスカイベット社は凱旋門賞の前売りオッズを、従来の20/1から16/1に引き上げた。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。