-北九州記念-平林雅芳の目

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日曜小倉11R
北九州記念(GⅢ)
芝1200m
勝ちタイム 1.06.9

スギノエンデバー(牡4、サクラバクシンオー・栗東、浅見厩舎)

小倉大好きスギノエンデバー、重賞初制覇!!

エーシン軍団が4頭。ヒットマン1番人気、ヴァーゴウが2番人気の支持だが、混戦模様なのは間違いない一戦となった今年の北九州記念
前半3ハロンが32.2と、ついこの前に観て驚いた速さをも上回るもの。終始淀みのない流れで進み、最後の直線1ハロンでは18頭がほぼ横一列に並ぶぐらいの、ハンデ戦としては最高の結末となった。
その中で1頭だけ際立った脚でゴール板を駆け抜けたのが、ご当地馬と言えるぐらいに小倉で全勝ち星をあげるスギノエンデバーであった。
1馬身とハッキリした差をつけての重賞初制覇。2着は馬場の真ん中をシゲルスダチ、3着には馬場の大外をエピセアロームと、3歳馬達がこれまたいい脚を使って盛り上げた。
準オープンからの挑戦ながらハンデが55キロと見込まれたスギノエンデバーだが、その見込みどおりの結果で終わった。横一線に広がる直線の攻防といい、ハンデ・キャッパーが実にいい仕事をした・・と思えるレースでもあった。

パドックに吹く風がけっこう心地よい小倉競馬場。今日も沢山のファンが見守る。18頭が周回する様は、なかなかの風情だ。あれもいいしこれも悪くない、そんな中でヘニーハウンドとやっぱりエピセアロームに目が行く。何かドッシリ感が出ていい雰囲気だ。馬場に入っての返し馬、1200とあってすぐに左に走って行ってしまう。もっとスタンド前まで来て大勢に披露して欲しいと思うものだ。
そしてゲートに最後にエピセアロームが入ってすぐに開いた。
注目の先手争いは?と見ると外から軽量リュンヌが速い。いつもならエーシンダックマンがどれよりも速いのだが、先手を取るまでに半ハロンかかった。エーシンヴァーゴウがシャウトラインと並んで3番手、ジュエルオブナイルが内ラチ沿いを4,5番手にいる。エーシンヒットマン、エーシンリジルとエーシン全馬が前だ。
2ハロンを過ぎたが、先頭はリュンヌとエーシンダックマンのどちらもまだ完全に先頭となってない。ジュエルオブナイルがその2頭のすぐ後ろに上がって来ている。やや出の悪かったヘニーハウンドが少しずつ順位を上げて、エーシンヒットマンとエーシンリジルの間にいる。《いや~、一番いい位置にいる!》と瞬間思う。3コーナーのカーヴに入って行くが、ヘニーハウンドはさらに内から順位を上げて行く。《最高の競馬をしているな~》ともうこの馬中心に観てしまう。

エピセアロームはそんなに悪くないゲートだったが、枠なりでどうしても後ろになってしまう。サンダルフォンアウトクラトールしか後ろにいなかった。その前にコパノオーシャンズとスギノエンデバーだ。
4コーナーが近づくと、エーシンヒットマンとエーシンリジルが同じタイミングで外を追い上げて行く。ジュエルオブナイルの手応えが怪しくなっており、その後ろでヘニーハウンドが凄くいい手応えで待つ。カーヴを廻る時にはリュンヌが2,3頭分開けて先頭に立った感じだ。その外へヴァーゴウ、ヒットマン、リジルのエーシン3頭が並びかけようとして来た。

直線に入った時には、コーナーリングでまた最内のエーシンダックマンが盛り返した感じで先頭。しかしそれも残り1ハロン手前まで。ヘニーハウンドが上手く開いた処に突っ込んできた。中では芦毛のシゲルスダチの勢いがいい。横一列とまでは言わないまでも、けっこう横に広がった中からヘニーハウンドが出そうだ!、と思った瞬間に外から1頭だけ違う脚色の馬に気がつく。スギノエンデバーだ。

ゴールが近づくにつれ、スギノエンデバーの勢いが増す。それと共に内のヘニーハウンドの伸びが止まる。中からシゲルスダチが伸びる。そしてエピセアロームの脚もなかなかだが、一番前までは届きそうもないが、どこまで届くのかの勢いだ。
ゴールではスギノエンデバーの勝利とシゲルスダチの2着は判った。エピセアロームが届いたのか中には?コパノオーシャンだった。

そして検量室の中。パトロール・ビデオを見つめる騎手連、《内が悪いので伸びない》《外有利の馬場だ》なんて声が多い。前半3ハロンが32.2と、ついこの前、32.3でビックリしたものを上回っている。800も1000もそのアンバルブライベンをコンマ1秒上回っていた。さすがにオープンクラス。最後の1ハロンが11.8。だからこのタイムになった。《スギノエンデバーの55キロはえらく重いな~》と週初めに思ったが・・。それも格上挑戦でだ。

思い出した、《ヘニーハウンドが勝った時の2着馬がスギノエンデバーだった!》と。
小倉の1200だけで全4勝。24戦中で1200以外を使ったのが二度だけ。後はずーっと一貫してこの距離だ。それも一昨年の暮れに2勝目を挙げてから、先月に3勝目を挙げるまでに随分長くかかった。そして連勝でこの重賞初制覇となったもの。勢いと元々いい脚を持っている馬。それがこの終始流れる展開も生きたし、外枠16番も最高の舞台設定と言えたようだ。
そしてシゲルスダチの2着。これも短の差しである。ようやくあのアクシンデントから吹っ切れそうだ。エピセアロームもやっぱりいい脚を持っている馬だ。

なかなかに面白かった北九州記念だった・・・。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。