オルフェーヴル、凱旋門賞への前哨戦フォワ賞を快勝!…[和田栄司コラム]

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16日のロンシャン競馬場は凱旋門賞への前哨戦(同じ場所、同じ距離)が3レース組まれた。その最初のレース、4歳以上牡牝によるG2第58回フォワ賞に日本のオルフェーヴルとアヴェンティーノの2頭が出走した。

ロンシャン競馬場の距離2400mは、名物風車(ムーラン)の前からスタート、途中にプチボワ(小さな森)を見ながら、高低差10mの坂を登りきるまで真っ直ぐ1000mを走る。丘の上に差し掛かると今度は下り、弧を描くように右に廻って1400mの引き込み線と交差するフォルスストリートを降りて4コーナーに向かい、最後の挑戦に入る。

フォワ賞は5頭立て。オルフェーヴルが1.7倍の1番人気となった。レースは、アヴェンティーノがペースセッターになって始まる。逆にゆっくり出たオルフェーヴルは最後方。前半は、首を左右に振って如何にも行きたがる素振りを見せた。4番手の外から徐々に下げて最後方、プチボワを過ぎてもまだ落ち着かないが坂の上りでようやく折り合った。

ペースはパリチュリフ紙によると1000mの通過、1分04秒28だが、実際は更に1秒程かかっているように思われる。ペースは1400mまで上がっていない。その1400m通過が1分36秒34、勝ちタイムは2分34秒26だから、残り1000mは57秒92、残り800mが35秒43、400mは23秒84、200mが12秒45である。

所謂団子状態、先頭から4馬身差の最後方から、オルフェーヴルは4コーナーで内ラチ沿いに進路を取り、あっという間に上位に進出する。残り400mではアヴェンティーノの内から、外にはジョシュアトゥリー、3頭が並んだが、簡単に抜け出してそのままゴールラインを駆け抜けて行った。クリストフ・スミヨン騎手の課題をこなした格好だが、多頭数になった場合、ここが勝負圏と殺到する場所。但し、馬に覚えさせる意義は大きかった。

力で今シーズン、サンクルー大賞典とベルリン大賞、G1連勝中のミオンドルが1馬身差で2着、ジョシュアトゥリーは首差で3着に落ちた。オルフェーヴルの通算成績は15戦9勝。但し、フォア賞勝馬の凱旋門賞制覇は、1974年のアレフランス、1984年のサガスの2頭だけ、1999年の勝馬エルコンドルパサーは本番でモンジューに交わされ2着に終わっている。

続いて行われた3歳牡牝によるG2第61回ニエル賞は6頭立て。パリ大賞典でアタマ差2着のラストトレインが1番人気、G2ユジューヌアダム賞勝馬ベイリール、仏ダービーを後方16番手から追い込んだソノワの順で人気が続いた。出走馬6頭は全て地元フランスの牡馬。58キロの定量戦となった。

10日前、リヨンの本馬場調教を終えた後、ジャン・ピエール・ゴーヴァン調教師は「今日の調教は今までで最高の出来だった」と自信を持った。レース当日、雨が落ちて来た馬場で5番手の内にポジションを取り、直線50m残して突き抜け2着ベイイールに1馬身4分の1差を付けての復帰戦勝利。勝ちタイムは2分35秒31だった。

G1戦に出走したこともないのに仏ダービーを勝った若いアントワン・アムラン騎手の思い切りの良さも感心する。フランス産、チチカステナンゴ産駒の3歳牡馬ソノワは、凱旋門賞への出走には追加登録料が必要だが、ゴーヴァン調教師が「道中の手ごたえも十分で、馬場が悪くならない限りは使いたい。2400mも合っている」と自信を深めた。

最後は3歳以上牝馬によるG1第106回ヴェルメイユ賞、13頭立て。人気は、昨年の凱旋門賞2着馬で前走のヨークシャーオークスで初めてG1優勝を飾ったシャリタ、昨年の勝馬ガリコヴァ、独オークス馬サロミナ、G2リブルスデールS勝馬プリンセスハイウェイ、G2ノネット賞勝馬ロマンティカの順で続いた。

クリストフ・ルメール騎手の乗ったシャリタは、シダラ、セディシオーサ、サロミナ、リーディンググループの後ろから、800m走った後2番手に上がる。直線に入り、ルメール騎手がゴーサインを出すと、400m残して先頭に立ち、2馬身差を付けて楽に勝った。これで去年の凱旋門賞の上位3頭は、いずれも直近のG1を連勝して本番を迎えることになる。

2馬身差2着に入ったモンズン産駒の4歳牝馬ピリカは、吉田照哉氏の所有馬。7月の復帰戦で初めて準重賞を勝ち、前走G2ポモーヌ賞は6着に敗れたが、G2コリーダ賞勝馬ソレミアをアタマ差下した。このレースの勝ちタイムは、前哨戦3つの中でもペースが速く、2分29秒06と1番速かった。

キャメロットが凱旋門賞人気から消え、上位は大幅に変わった。ブックメーカーのスカイベット社は、デーンドリームとオルフェーヴルを4/1、ナサニエル6/1、スノーフェアリー7/1、シャリタ8/1、ソノワ10/1としている。前哨戦を見て来て、1番印象が強かったのはスノーフェアリー、デーンドリームの安定感、3歳のソノワの存在の順になった。

海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。