フランケル、2年連続で欧州年度代表馬に輝く[和田栄司コラム]

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ヘンリー・セシル厩舎のスーパースター、フランケルが2年連続で欧州年度代表馬に輝いた。10日のドンカスター開催で英国のフラットレースが終了した後を受けて、13日英ロンドンのドーチェスターホテルで開かれたカルティエ賞の受賞式典は、誰もが予想したように、欧州年度代表馬に先月アスコット競馬場で行なわれたチャンピオンSまで無傷の14連勝を達成して引退した、フランケルを選出した。

フランケルは3シーズンにわたりカルティエ賞のチャンピオンである。2010年は最優秀2歳牡馬を受賞、2000ギニーを勝った昨年は欧州年度代表馬、そして今年は2年連続の受賞である。チームフランケルにも功労賞が与えられた。セシル調教師は「ウォーレンプレイスにいる我々全員が、2年連続で最も権威ある賞を与えられたフランケルの業績が認められたことに改めて興奮している。フランケルと彼の輝きは英国競馬にとっての大使の役割を果たした。彼は多くの人の心を捕え、競馬に拘っていない人々の心も掴んだ。ありがとうフランケル、そして彼に投票して下さった皆に感謝します」とコメントした。

カルティエ賞のハリー・ハーバート氏は「フランケルは我々の生活をライトアップしてくれました。2012年の壮大なパフォーマンスは決して忘れません。フランケルは、カルティエ賞22年の歴史の中でも最も成功した馬です。数多くの競走を支配しながら、それを当たり前のようにやりました。フランケルの業績を祝福すると同時に、ヘンリー・セシル調教師やチーム全員の努力にも敬意を表します」と語った。

フランケルは、8日ウォーレンプレイスのヘンリー・セシル厩舎を去って、近くのニューマーケットのバーンステッドマナースタッドに入り、ここの種牡馬名簿に名前を連ねた。彼は来年の2月から種牡馬としての新しいキャリアを始めるが、14日には種付け料がオーナーブリーダーのカリッド・アブドゥッラー王子によって3年間で3000万ポンド(38億4000万円)になる12万5000ポンド(1600万円)に設定された。

価格は世界で3番目に高く、クールモアで掲養されているフランケルの父ガリレオの30万ユーロ(3090万円)とジョン・マグニアが主導する豪州ファストネットロックの22万豪ドル(1843万円)に次ぐ価格である。2016年まで産駒が出ないにも拘らず、初年度の種付け料がここまで高騰したのは14連勝とタイムフォームのレーティングが出来て以来、シーバードの145を抜く147のレーティングを得た名馬たる所以である。

ジャドモントファームの総務部長フィリップ・ミッチェル氏は「フランケルの価格は、我々がこれまで見て来た中でも彼が最も偉大な競走馬であることを反映している」と説明した。フランケルは、世界で最高の種牡馬として認められているガリレオと、5ハロンから7ハロンの距離で6勝したデーンヒル産駒の牝馬カインドとの間に生まれた。父系と母系の長所をしっかり受け継いだフランケルの能力は14連勝が全てを物語る。

カルティエ賞の他の栄冠は、最優秀スプリンターに豪州から遠征してロイヤルアスコットのG1ゴールデンジュビリーSを勝った世界をリードする牝馬ブラックキャヴィアが、ジュライカップ勝馬メイソンを僅かに抑えて選ばれた。2000ギニー/エプソムダービー/アイリッシュダービーを勝ったキャメロットは最優秀3歳牡馬に選ばれ、最優秀3歳牝馬にはG1ナンソープSを勝ち、ヨークシャーオークス2着、オークス/BCフィリー&メアターフを共に3着したザフューグが選ばれた。

最優秀2歳牡馬にはヴィンセントオブライエンSとデューハーストSのG1を勝ち6戦6勝の成績を残したゴドルフィンのドーンアプローチ、最優秀2歳牝馬にはG1フィリーズマイルを勝って4戦4勝のこれもゴドルフィンになるサーティファイが選ばれた。そして最優秀ステイヤーにもロイヤルアスコットのゴールドカップを制したゴドルフィンのカラーヴィジョンが選ばれている。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。