香港国際競走に向けての前哨戦[和田栄司コラム]

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12月9日の香港国際競走に向けて、18日、香港シャティン競馬場では3つの国際G2格付けになる前哨戦が行なわれた。

距離2000mで行われるジョッキークラブカップは、ハイエストオナー産駒の6歳セン馬カリフォルニアメモリーが最後方から馬群を割って優勝した。レースは、バックストレッチに入るまで前が入れ替わり、カリフォルニアメモリーにはおあつらえ向きの展開になった。4コーナーでは中に入れ、リベラートリとオータムゴールドの狭い間を割って上位に進出、一旦は抜け出したザイダンと内から突っ込んで来たイリアンの間に入り、ゴール寸前で2頭を交わした。

優勝ジョッキーのマシュー・チャドウィック騎手は「前で激しくやり合ってくれたおかげで我々に合った展開になった。自分の競馬スタイルで勝てたので、上手く行けば12月のビッグワンを再び取ることも出来ると思っている」と自信のコメントを伝えた。今季は先月のG2シャティントロフィー(芝1600m)を使って5着、ハンデ戦で130lb(59キロ)を背負い、適距離ではないマイル戦を使っての成績を考えれば優秀な内容であった。連覇に向けて好感触を得たカリフォルニアメモリーの通算成績は21戦7勝である。

内から伸びた一昨年の勝馬イリアンは短頭差2着、同じく短頭差3着に残り200mで一旦抜け出した香港G1クラシックカップ勝馬ザイダン、クビ差4着に直線一旦は最後方に下がった香港G3ササレディーズパース勝馬パッキングウィズ、やはり上位に入った4頭の動きの良さが目に付いた。本番の香港カップ、昨年はカリフォルニアメモリーが優勝、イリアンが2着に入っている。

ジョッキークラブマイルは、ダグラス・ホワイト騎手の乗ったハゾネット産駒の5歳セン馬グロリアスデイズが5~6番手の内でポジションを取り、直線残り200mで抜け出し優勝した。初めての重賞制覇は、ジョン・サイズ調教師が初めて使うブリンカー効果のおかげだった。安田記念で14着に敗れたものの、香港に戻ればこれで9戦5勝、2着4回。ちょっと怖がりのところがあるようで、これがブリンカー着用の理由である。

1馬身半差2着に2シーズン連続の年度代表馬になったアンビシャスドラゴン。今年はマイルでの挑戦になる。ペースが前半48秒27の為、3着ピュアチャンピオン、4着ダンエクセルが残ったが、今季初戦となったチャンピオンズマイル連覇のエクステンションも最後に力で5着に持って来た。本番で人気を落とすようなら狙ってみたい1頭である。

ジョッキークラブスプリントは、ブレット・プレブル騎乗のドバウィ産駒の5歳セン馬ラッキーナインが、中団7番手から直線馬場の真ん中から残り200mで抜け出し優勝した。キャスパー・ファウンズ調教師は「日本から帰った時はいつも強行日程になるが、馬も本気で仕事に取り掛かる傾向にある。今日は少し抑えた85パーセントの力でレースをするよう騎手に伝えたが、ビッグデーに向けて良い改善が出来たと思う」とコメントした。この日は1番人気に応えての優勝、連覇に向けて好発進の印象である。

アタマ差2着に外を突っ込んだダグラス・ホワイト騎乗タイムアフタータイムも目に付いた1頭である。デーンヒルダンサー産駒の5歳セン馬タイムアフタータイムは、今季ハッピーヴァレー競馬場で2戦して前走クラス2を勝ったばかりでの重賞初挑戦だった。残り400mの上りがメンバー中最速の22秒02なら本番も面白い存在となるだろう。1馬身差3着には内で残ったアドマイレーション、クビ差4着に外を伸びたセリーズチェリーが入っている。

トライアルを終了して、ヴァーズ、スプリント、マイル、カップ、香港馬のコンテンダーはほぼ決まっている。外国招待馬をふくめた4レースのセレクションメンバーの発表は、明日21日の予定、今年も面白くなりそうな香港国際競走である。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。