日曜阪神11R
ジャパンカップダート(G1)
ダ1800m
勝ちタイム 1.48.8
ニホンピロアワーズ(牡5・ﾎﾜｲﾄﾏｽﾞﾙ・栗東・大橋厩舎)

前走の轍は踏まない、ギリギリまで追い出しを我慢の酒井J
ニホンピロアワーズと共にG1初勝利！！

前回、みやこSでローマンレジェンドに負けた後に大橋師が『仕掛けが早かった、抜けてソラを使った・・』と。もっと追い出しを待っていれば負けなかったとも。その言葉が耳に残っていた。
好発から好位の外めの3番手につけ直線へ向いたニホンピロアワーズ。廻りの馬が追い出しているのに何もしない。残り1ハロンの標識を過ぎた後からやっと追いだした。ステッキもその後100メートルを過ぎるあたりから計7発。ゴール板を過ぎる前に、もう酒井Jの左手がスタンドへ向けて大きく上がっていた・・・。
1番人気ローマンレジェンドは4着に撃沈。ワンダーアキュートがホッコータルマエを捕まえて2着となった。一昨年のトランセンドのレコードを破る快挙。酒井Jの嬉しいそれもニホンピロアワーズで獲ったG1初勝利であった・・・。

エスポワールシチーの逃げから始まった今年のJCダート。ブリンカーをしたトランセンドだが、懸命に藤田Jが出ムチをくれているのに、ダッシュ力がなく希望の先手を取れない。ホッコータルマエがすぐに接近、ニホンピロアワーズもいいダッシュ力で3番手を形成。その内にトランセンドで最初のカーヴに入っていく。イジゲンは今日もゲート内がうるさく、出るタイミングが悪い。ナムラタイタンが躓き、トゥザグローリーもヨレ気味に出て遅れた。スタートを決めたエスポワールシチーが逃げて軽快に飛ばしていく。コーナーワークで内からトランセンドがホッコータルマエと2番手となって2コーナーを廻っていく。ローマンレジェンドは7番手ぐらい。社台の勝負服2頭の後ろだ。

向こう正面でややリードをつけたエスポワールシチー。レースの少し前に小雨がパラツキ、それまで砂埃をあげていたダートがいい状態だ。もう一度前から整理してみよう。先頭エスポワールシチーが4馬身のリード。2番手内にトランセンド、外にホッコータルマエ、そこから1馬身後ろにニホンピロアワーズ、1馬身後ろにワンダーアキュート。ローマンレジェンドはそこから2馬身ぐらい後ろの内目だ。
先頭が1000を通過。場内アナウンスが《59.7で通過！》と告げる。決して速いとは思えない流れだ。
3コーナーのカーヴを廻っていく。少しペースダウンをしたエスポワールシチー、息を貯めているのだと推測。ホッコータルマエは前との差を詰めていくのに、内のトランセンドがやや下がり気味だ。ニホンピロアワーズ、ワンダーアキュートと続いていくのに、トランセンドだけが鞍上の手が動いている。最後のカーヴが近づいてくる。

一気に差がなくなってきた後続組。エスポワールシチー先頭だが、ホッコータルマエが並び気味。その外へグレープブランデー、さらに外トゥザグローリー、イジゲンもいる。ワンダーアキュートが馬の中で位置が少し悪くなる。その外にローマンレジェンドも来ている。
直線に入ってきた。まずホッコータルマエが仕掛けて前へと出る。その動きに合わせる様にニホンピロアワーズが並ぶ。こちらは持ったままだ。その後ろにコーナーワークでワンダーアキュートが続いてきた。前の2頭の間は無理と見て、外へ出し加減とする。その少し後ろにローマンレジェンドが見えるが、勢いがそう感じられない。

残り1ハロン棒を横目で見た酒井Jが追い出す。内ラチ沿いで先に追っていたホッコータルマエを抜いて離していく。酒井Jの左ムチが唸る。ワンダーアキュートがホッコータルマエを抜いて2番手に上がり前を追うが、差が詰まらない。ローマンレジェンドもいつもの伸びがなく、前との差が同じままで4番手。先頭ニホンピロアワーズがまだゴールに2完歩ぐらい残している時点で、酒井Jが大きくガッツポーズ。勝利の喜びを表現した。

引き上げてきた酒井Jが検量室に入ると、池添Jの大きな歓声が迎えていた。後刻、彼に聞くと《同期です、もう15年目になります》と表彰式を映しているテレビの中の酒井Jを我が事の様に見つめる池添J。《今日は酒井君の奢りです！！》の言葉も嬉しそうだった。
ニホンピロの馬。そして大橋師。この名トリオで掴んだG1勝利。何か、最近見かけなくなった日本人らしい《情》を観た思いで、清々しい勝利であった。

ニホンピロアワーズ、ワンダーアキュート、ホッコータルマエと、実に渋くて味のある決着となった今年のJCダート。忘れられないレースとなりそう・・だ。

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平林雅芳 （ひらばやし まさよし）
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。