ブラックキャヴィア、復帰戦をレコードで飾る

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無敗のブラックキャヴィアがカムバックをレコードタイムで飾り、23連勝を達成した。16日、豪州メルボルンのフレミントン競馬場で行なわれた彼女の名誉を称えて、今年から命名されたG1ブラックキャヴィアライトニングS(芝1000m)は、長い休養からカムバックを果たしたブラックキャヴィアが、生きる伝説として未だ彼女の競争力に火を燃やし続けていることを証明して見せた。

レギュラー・ライダーのルーク・ノーレン騎手を鞍上に、ブラックキャヴィアは例によって前々からの競馬、直線コースの半ばで先頭に立つと僚馬でG1ルパートクラークS勝馬モーメントオブチェンジと同じく僚馬でG3勝馬のゴールデンアーチャーに2馬身半差を付けて、このレースで前例なき3連覇を達成、55秒42のコースレコードで締めくくった。

タイムは、1951年にレースが始まって以来3回目の記録更新となるコースレコード。1988年にスペシャルがマークした55秒50を100分の8秒上回った。ラスト600mの上りも31秒36という驚異的な速さだった。この勝利でブラックキャヴィアのG1勝利は13勝になり、サンラインやタイザノットに並んだ。コックスプレート3連覇など、レコードホルダーのキングストンタウンの記録にもあと1勝と迫っている。

しかし、タイムフォーム紙のレイティングは133と、同紙が昨年のライトニングSでブラックキャヴィアのピークと認めた136を下回った。ハイリストを下し55秒53、上がり31秒82、数字の上では今年の方が上にも拘らずである。因みにブラックキャヴィアが最初に勝った2011年の同レースのレイティング131は上回っている。

レイティングでは2着に入ったモーメントオブチェンジが123、3着のゴールデンアーチャーは108だった。「私は彼女を誇りに思います」とワンツースリーを決めたピーター・ムーディー調教師は話す。「最初は少し感傷的になりましたが、彼女の背中は良い状態で、本当に良いニュースになりました」と続けた。

昨年6月、英ロイヤルアスコットのG1ダイアモンドジュビリーS(芝6F)で、ブラックキャヴィアはフランスのG1勝馬ムーンライトクラウドにあわや交わされる、危ない場面を大観衆の前で見せた。彼女はノーレン騎手が早めに追うのを辞めて流してしまった為、ムーンライトクラウドが横に来たのが分かると自分のミスに気付き、残りの3ストライドで彼女の首を押して死に物狂いでアタマ差の勝利を掴んだ。

そのレースの勝利と引き換えに、彼女の引き裂かれた筋肉や靭帯は、スーパースプリンターに回復とリラックスな気分にさせる為、無期限での離脱を強いらせてしまった。一時は引退説まで出たが、最悪な結果にならなかったのは幸いだった。復帰へのシナリオは、ムーディー調教師が彼女のトレーニングを再開することを明らかにした昨年9月から構築された。

ブラックキャヴィアは、2週間前、ホームトラックのコーフィールドでの公開調教の後、レースをする準備が出来たと判断された。6歳のベルエスプリット産駒の牝馬は、ネリーの愛称で呼ばれている。ライトニングS3連覇で無傷の23連勝を飾ったブラックキャヴィア、「彼女は私を驚かせ続けます」とルーク・ノーレン騎手は言う。

オーナーサイドは既にブラックキャヴィアの次走を3月9日、同じフレミントン競馬場で行なわれるG1ニューマーケットHに決めている。しかし、ここでは初めてとなる61.5キロのハンデが予想される。ピーター・ムーディー調教師は、彼女にとって直線で行なわれるフレミントンのレースは有利としながらも、3月22日ムーニーヴァレー競馬場で行なわれるウイリアムリードSもオプションの1つとして考えている。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。