ブラックキャヴィア完全復活、24連勝…和田栄司コラム

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22日、豪州メルボルンのムーニーヴァレー競馬場にはほぼ満員に近い2万5000人の競馬ファンが押し寄せ、殿堂入りした走り続ける伝説ブラックキャヴィアの24連勝とキングストンタウンのG1・14勝に並ぶタイ記録の走りに魅了された。

ベルエスプリット産駒の6歳の牝馬ブラックキャヴィアは、牝馬56.5キロ、牡馬/セン馬58.5キロの別定戦、G1ウイリアムリードS(芝1200m)に臨んだ。7頭立ての6番枠から発走、初手は3番手からの追走となったが、3コーナーを廻った残り800mで2番手に上がり、逃げる僚馬カルータクイーンの半馬身差に迫ると、馬なりのまま4コーナーで先頭に立った。

直線に入り、ルーク・ノーレン騎手は一寸気合を入れただけだったが、4馬身にリードを広げて24連勝、ラスト600mの上り33秒66でまとめて自らの連勝記録を更新した。勝ち時計は2年前のこのレースで作ったレコードから1秒08遅い1分11秒08、けれども全くの楽勝で復帰後の2戦は強いブラックキャヴィアの完全復活を強く印象付けた。

ピーター・ムーディー調教師は「彼女は素晴らしいショーを見せてくれた」とニューズ・リミテッド・ネットワークに語り、「彼女は凄い。でもこんなに上手く行っていることが怖いくらいだ。彼女はペースを抑えて速める方法を知っている。何て言ったらいいのか言葉を失います」と続けた。これでG1・14勝、キングストンタウンの記録に並んだ。

次走は4月13日、シドニー秋のカーニバルの中で行なわれるランドウィック競馬場のG1TJスミスS(芝1200m)、2年振りの同レースである。TJスミス氏はコックスプレート3連覇を含む41戦30勝、2着5回、3着2回の戦績を残したキングストンタウンを送った伝説的トレーナー、彼女がこのレースでキングストンタウンの記録を破るのも何かの縁である。

ウイリアムリードSで24連勝の記録を更新した後、ブラックキャヴィアは2013年のロイヤルアスコットからの招待状を貰った。ロイヤルアスコットを使うとなれば、5ハロンのG1キングズスタンドSよりは6ハロンのG1ゴールデンジュビリーSを選ぶことになるだろう。既に今季一杯で現役を退くことが決まっているブラックキャヴィア、招聘側はロイヤルアスコットを使った後でフランケルとの交配も出来ると勧めている。

アメリカの芝マイル&ハーフの距離では、北米レコードの更新が続いている。23日、フロリダ州マイアミのガルフストリームパーク競馬場で行なわれた4歳以上によるG2パンアメリカンSでは、トワイライトエクリプスが道中4番手の位置取りから4コーナーで内ラチ沿いから先頭に立って、2分22秒63のタイムで2つ目のG2勝ちを収めた。

これまでの北米レコードは、1989年にホークスター(第9回ジャパンカップでホーリックスの5着)がマークした2分22秒80だったが、先週16日、同じサンタアニタパーク競馬場のG2サンルイレイSで、ブライトソウトが2分22秒72のタイムで北米レコードを塗り替えたばかりである。サンタアニタパーク競馬場のマイル&ハーフのコースは、ダウンヒルの下りからスタート、ダートコースを横切ってトラックを1周する。これに比べると時計的にはガルフストリーム競馬場で出された同じ記録であっても価値は上である。

昨年のBCターフを勝ったリトルマイクの勝ちタイムは2分22秒83だった。これを上回ったトゥワイライトソウトだが、時計はあくまでも時計であって展開にも大きく左右される。プーリム産駒の4歳のセン馬トゥワイライトソウトの次走は、5月4日チャーチルダウンズ競馬場で行なわれる9ハロンのG1ターフクラシック。まずG1の壁をクリアした上で、マイル&ハーフのG1挑戦を見て行きたいものである。それにしても北米のターフ界には明るいニュースとなった。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。