今週末は米英でクラシックが開幕 [和田英司コラム]

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天皇賞(春)のレッドカドーは、ゴールドシップの仕掛けに合わせて直線に向き、内に入れて最後はトーセンラーに引き離されて3着。位置取りも、仕掛けのタイミングも作戦通りに行き、ジェラール・モッセ騎手も満足のレース振りだった。正直、シーザスターズ級とまで大賛辞を送ったゴールドシップには失望した。しかし、これも競馬である。

2時間後、香港シャティン競馬場ではもう一つの注目、エイシンフラッシュが出走するQEⅡカップ。フルゲートの13番枠から発走し、スタート後は中団まで上がって行ったが、最後方まで引く。対照的にゴドルフィンのサージャーは出遅れ、その遅れを取り戻す為に中団まで押し上げて行く。先頭に立ったのはアシュキア、前半800mは50秒39、これでもスローだがペースを嫌って今度は南アフリカのイグーグーが先頭に立つ。

最後方にいたエイシンフラッシュも3コーナーを廻って仕掛けた。直線の入口、イグーグーの外にはアシュキア、ザイダン、ミリタリーアタック、サージャー、イリアン、6頭が並んだ。しかし、残り350mでイグーグーを交わして先頭に立ったのは、ラチ沿いから抜け出した今年の香港ダービー馬アキードモフィードだった。

最内から抜け出したアキードモフィードとは対照的に馬場の中央は大混戦の様相。2年連続年度代表馬のアンビシャスドラゴンも、トレジャービーチの横から前をカットするように強引に上がって来たが、追い出したカリフォルニアメモリーが外に斜行して接触した。左にイグーグー、右にはミリタリーアタックも追い出していた為、アンビシャスドラゴンの動きは完全に止まってしまった。

前はミリタリーアタックが残り150mで抜け出し勝敗を決した。カリフォルニアメモリーが2番手、サージャーが3番手に上がったが、内ラチ沿いからエイシンフラッシュが猛然とスパートして来る。直線に入って1つ順位を上げたエイシンフラッシュは、内に入りクラッカージャックとアシュキアの間を割ってスペースを見つけ、アキードモフィードを交わすとラチ沿いに入れて更に伸びた。

馬場の中央が混戦になったのを見て、瞬時にコースを選択したデムーロ騎手はやはり名手である。1馬身4分の3差で勝ったミリタリーアタックに続く2着は、エイシンフラッシュとカリフォルニアメモリーの写真判定に縺れたが、ハナ差でカリフォルニアメモリーが残った。エイシンフラッシュからクビ差4着にサージャー。勝ち時計は2分02秒15、上り400mではエイシンフラッシュの22秒27が最速だった。

それにしてもゴール手前250mのインターフェアは、前年比3%を超える2万9931人の前で起きた。トニー・クルーズ調教師とマシュー・チャドウィック騎手、トニー・ミラード調教師とザック・パートン騎手、同じ香港馬と言うだけで何もなかったように取り繕うのは国際競走に於いてあってはならない。オブジェクションが発表されたなら、直ちに降着すべき出来事だったように思えた。

優勝ジョッキーとなったトミー・ベリー騎手は、まだ22才の若いジョッキー。香港での騎乗初日にG1を勝ってしまうところに世界の競馬の凄さを見せつけられた思いがした。彼は今年のG1勝鞍を6勝に伸ばした。エイシンフラッシュが馬券に絡んで、相手4頭は上位5着まで全て入り、3連複は150倍以上の払戻金となった。勝ったミリタリーアタックは次走予定されているG1シンガポール航空国際カップでレッドカドーと顔を合わせることになる。

さて今週の世界の競馬、注目は4日に米チャーチルダウンズ競馬場で行なわれるG1ケンタッキーダービー、そして4日、英ニューマーケット競馬場ではG12000ギニー、翌5日にはG11000ギニーが行なわれ、米英でクラシックが開幕する。

第139回ケンタッキーダービーには、持ち駒の多いトッド・プレッチャー厩舎から5頭が出走する。3歳デビューでG1ウッドメモリアルまで4戦4勝のヴェラザノにはジョン・ヴェラスケス騎手、G2ルイジアナダービーを勝ったレヴォリューショナリーにはカルヴィン・ボレル騎手が決まり、G1アーカンソーダービーを勝ったオーヴァーアナライズにはラファエル・ベハラーノ騎手、G1ブルーグラスS2着のパレスマリスにはマイク・スミス騎手、ブルーグラスS3着のチャーミングキティンだけ騎手未定である。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。