ニューマーケット競馬場のジュライ開催を終えて[和田栄司コラム]

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ニューマーケット競馬場のコース形体は、ブーメランの右が上、左が下と想像してみて下さい。通常はこの形のローリーマイルコースが使われているが、6月からは逆に左の下の方、所謂ジュライコースが使われる。直線コースはどちらもマイル&クォーターの距離が取れるが、向きは逆、ゴール前の急な上り坂が特徴である。そのジュライコースを使って11日から13日の3日間、ジュライ開催が行なわれた。

開催2日目の注目は3歳以上牝馬によるマイル戦のファルマスS。4頭立てとは言え、昨年の勝馬ジオフラ、G1・2勝の吉田照哉氏の所有馬イルーシヴケイト、そして目下1000ギニーとコロネーションSを連勝中のG1・3勝馬スカイランタンが揃った。人気は、スカイランタン、イルーシヴケイト、ジオフラの順、1頭人気が無いのはG3カルヴァドス賞勝馬パーアロングである。

レースは、イルーシヴケイトの先行で始まり、スタンドサイドのラチ沿いを走る。1頭分センター寄りにスカイランタン、ジオフラ、パーアロングが1馬身半の等間隔で並んで行く。グッドトゥファーム(堅良)の馬場だがペースは極端に遅く、5ハロンの通過は1分07秒台。どうやったらこれだけ遅く走れるかと思う程である。

しかし、ここからが11秒06、10秒59、11秒64、と速かった。残り2ハロンを過ぎるとイルーシヴケイトはセンター寄りに動く。その左から追い出したスカイランタンは、更にファーサイドに押され、2頭の追い比べは終始イルーシヴケイトがアドバンテージを持ったままゴール版を通過した。勝ちタイムはスローペースの為、1分40秒54と平凡な記録である。

4歳のイルーシヴクオリティ産駒の牝馬イルーシヴケイトは、2歳時のマルセルブサック賞、昨年のロートシルト賞に続く3つ目のG1制覇、通算成績を13戦6勝、2着2回、3着2回とした。この後は、連覇を狙ってロートシルト賞に向かい、またジャックルマロワ賞、BCマイルの選択肢も出て来た。尚、イルーシヴケイト騎乗のウイリアム・ビュイック騎手は不注意騎乗で実行3日間の騎乗停止処分が科せられている。

最終日は英国ステージに移っているグローバルスプリントチャレンジの第7戦になる6ハロン戦のジュライカップがメイン。11頭立ての競馬は、4番枠スタートの3番人気リーサルフォースが、アダム・カービイ騎手を鞍上に、8頭のスタンドサイドグループの先頭を走り、1ハロン後からハロン毎のラップを10秒台にまとめ、トラックレコードの1分09秒11で逃げ切った。

ドバイのアルクォーツスプリント勝馬で1番人気に推されたシェイシェイは、折り合いを欠きながらも2番手まで上がって来たが、最終的に4着。ロイヤルアスコットのG3ジャージーSを勝って2番人気に推されたゲイルフォーステンはスタンドサイドグループの3番手も末を欠いて6着。代わってG1・2勝馬で4番人気に推されたソサイエティーロックがスタンドサイドグループの4番手から伸びて2着した。

勝ちタイムは、1999年のストラヴィンスキーがマークした記録を100分の40秒縮めるトラックレコード、最終ハロンは12秒28かかったものの、1ハロンから2ハロン目が10秒62、以後10秒48、10秒67、10秒70のラップを刻んだ。今季は5月15日ヨーク競馬場のG2デュークオブヨークSでソサイエティーロックのアタマ差2着の後、6月22日のロイヤルアスコットのダイアモンドジュビリーSではソサイエティーロック以下に2馬身差を付けてG1初優勝した。

これでグローバルスプリントチャレンジの第6戦と第7戦を連勝して50万ポンドを稼ぎ出し、通算成績は15戦4勝、2着4回、3着3回。G1ミドルパークSを勝ったダークエンジェル産駒の4歳の牡馬リーサルフォースは、デザートスタイル産駒のランドアーミーを母に持ち、ファミリーには2012年のBCジュヴェナイルフィリーズターフと2013年の仏1000ギニーを勝ったフロティラがいる。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。