キングジョージ、ドイツ馬が連覇[和田栄司コラム]

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大本命セントニコラスアビーの突然の引退で愛バリードイルが撤退、8頭立てに変わったキングジョージ6世&クイーンエリザベスSは27日、英アスコット競馬場で行なわれ、ジョニー・ムルタ騎乗で参戦したノヴェリストがコースレコードで優勝、昨年のデインドリームに続いて2年連続で優勝の栄冠をドイツに齎した。

エクティハームの先行で始まった今年のキングジョージ、今季これが11戦目になるユニヴァーサルも序盤から積極的にプレッシャーをかける。ノヴェリスト、トレーディングレザーも前に行き、1番人気シリュスデゼーグルは5番手、その後ろにヒルスター、ヴェリーナイスネーム、そして最後方レッドカドー。トレーディングレザーは更に積極的に前を伺い3番手に上がり坂を駆けのぼった。

隊列は最初の5ハロンを過ぎて落ち着き、エクティハームの先行、ぴったりユニヴァーサルが続き、2馬身切れてトレーディングレザー、4馬身差でノヴェリスト、2馬身差でシリュスデゼーグル、3馬身差でヒルスター、2馬身間隔でヴェリーナイスネーム、レッドカドーの順で続く、トップオブザヒルから下りに入った残り3.5ハロンで早くもユニヴァーサルが先頭に立った。

トレーディングフェザー、ノヴェリストもこれに続いて直線に向き、今度は残り2ハロン標識で早くも外からノヴェリストが抜け出す。これに続いてトレーディングレザー。苦しくなったユニヴァーサル、外からはやっとシリュスデゼーグルがヒルスターと併せ馬で上がって来たが、ノヴェリストが5馬身差を付けて圧勝した。

勝ちタイムは2分24秒60、1951年に施行されて以来、コース改修後の2010年のハービンジャーのマークした2分26秒78がこれまでのレコードだが、2秒以上縮める歴史的な勝利となった。5馬身差2着トレーディングレザー、4分の3馬身差3着ヒルスターと2頭の3歳馬が続き、3馬身差4着に最後シリュスデゼーグルがユニヴァーサルをアタマ差交わして上がった。

ライアン・ムーア騎手がスタウト厩舎のヒルスターに騎乗、ウイリアム・ビュイック騎手が仏国出張で急遽騎乗依頼が舞い込んだジョニー・ムルタ騎手は、2003年アラムシャー、2007年ディラントーマス、2008年デュークオブマーマレードに次ぐ4回目の優勝。アンドレアス・ヴェーラー調教師にとっては大舞台での初めての優勝である。

「それは信じられないような勝利です。しかもレコードタイムでしたから。ジョニーは引き上げて来るなり【凄い馬だ】と言った。我々はこんなに楽に勝てるとはレース前考えてもいませんでした」とヴェーラー調教師はインタビューに答えた。ムルタ騎手は「トラックレコードのようには感じなかった。指示通りいつものクルージングで、快適なポジションにいることが出来た」と話した。

シリュスデゼーグルのクリストフ・スミヨン騎手は「スピードに付いて行くことが出来なかった。馬場コンディションも難しかった」と敗戦の弁。やはりこの馬の理想の距離はマイル&クォーター、マイル&ハーフは長過ぎるようだ。1992年のサンジョヴィ以来の愛ダービー/キングジョージ制覇を狙ったトレーディングレザーのジム・ボルジャー調教師は愛馬の労を労い、結果に満足していた。

モンズンの4歳の牡馬ノヴェリストは、昨年の独ダービーの2着馬、G1バーデン大賞ではデインドリームの4着に敗れたが、その後ミラノに遠征してG1ジョッキークラブ大賞典を勝ち、今季はG2バディシェンウンターニーマー大賞、パリに遠征してG1サンクルー大賞典、目下重賞4連勝、G1・3勝をマーク、通算成績を10戦8勝、2着1回としている。

ノヴェリストの今シーズンの目標は凱旋門賞と決めており、この後はバーデン大賞またはフォワ賞をプレップに本番凱旋門賞を目指す。このキングジョージの勝利でブックメーカーは6倍のオッズを付け、目下、パリ大賞典を勝ったフリントシャー、G1・3連勝中のアルカズィーム、昨年2着のオルフェーブルと並んで4強の一角に加わった。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。