グロリアスグッドウッド開催とモーリスドゲスト賞を終えて[和田栄司コラム]

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7月30日から8月3日までの5日間、イングランド南部のウエストサセックス州チチェスターのグッドウッド競馬場ではグロリアスグッドウッド開催が行なわれた。注目の2つのG1競走、マイル戦のサセックスSは3回目の対戦で初めてトロナードがドーンアプローチを下し、3歳以上牝馬によるナッソーSはカリッド・アブドゥッラーの自家生産馬ウインシリ、どちらもG1初優勝を飾った。

7頭立てで行なわれたサセックスSは、G1・4勝馬ドーンアプローチ、そのドーンアプローチにセントジェームズパレスSで短頭差2着まで肉薄したトロナード、2頭の3歳馬に人気が集まり、クイーンアンSでG1初優勝したデクラレーションオブウォーは3番人気。レースはドーンアプローチの用意したペースメーカー、レティモアが1ハロン後から先行位置に入り馬群を率いた。

スタートに難のあるレティモアだが、半ばでリードを2馬身に広げた。2番手リプライから3馬身差でドーンアプローチ、その後ろは2馬身差でグレゴリアンが続き、体半分差でデクラレーションオブウォー、更に2馬身差でトロナード、同じく2馬身差で最後方がトレードストームの順となった。

直線に入り残り2ハロン標識で早くもドーンアプローチが抜け出す。これに続いてデクラレーションオブウォー、更に外からトロナードが追い、残り1ハロンでトロナードがデクラレーションオブウォーを交わして2番手に上がる。残りハーフハロン、ドーンアプローチとトロナードの差は1馬身、しかしこの日は勢いが違いゴール前で楽々交わして半馬身差を付け優勝した。

2歳のG2シャンペーンS勝ちがあるトロナードは、2000ギニー4着、セントジェームズパレスSで2着、ドーンアプローチとは3度目の対戦でようやく一矢報いた。これで通算成績は7戦5勝、2着1回。2000ギニーの時よりは13キロ馬体が増え、成長したトロナードは10月にアスコット競馬場で行なわれるQE2を今シーズンの大目標に置いた。

距離9ハロン192ヤードで行なわれたナッソーSは14頭立て。ウィリアム・ビュイック騎乗の人気薄ウインシリが後方11番手から追い込み勝ち、最後方から追い込んだシスルバードをクビ差抑えた。G1・3勝馬で人気の3歳馬スカイランターンは、残り1ハロンで前が塞がり立ち上がってしまう不利があって5着、愛1000ギニー馬ジャストザジャッジは追い込み不発で12着に終わった。

ウインシリは、前走G2リブルスデールSで1番人気に推されながらも4着、ここは急激に人気を落としていた。これで通算成績は5戦3勝、2着1回。カリッド・アブドゥッラーの自家生産馬は、01年バンクスヒル、05年インターコンチネンタル、09年ミッデイに続く、ブリーダーズカップフィリー&メアターフ制覇に照準を合わせた。

4日、仏ノルマンディーのドーヴィル競馬場で行なわれたG1モーリスドゲスト賞は、98年にシーキングザパールが日本調教馬として海外G1初優勝した思い出のレース。距離が直線1300m、今年は14頭立て。ティエリ・ジャルネ騎乗の3連覇を狙うムーンライトクラウドが、馬群のファーサイドから徐々に順位を上げて行き、200m残して抜け出し、1分14秒33のコースレコードで優勝した。

レースのフラクションは、最初の300mが18秒43、後半600mが34秒16、400mは22秒45、200mが11秒27と優秀な内容だった。勝ちタイムは、まだ10分の1表示だった98年のシーキングザパールの記録1分14秒7を更新した。ムーンライトクラウドは06年から08年に3連覇したマーシャンドールに続く2頭目の快挙でこれが4つ目のG1優勝、通算成績は17戦10勝、2着2回となった。

去年よりは使い出しを1つ遅らせて、G3ポルトマイヨー賞から始動したムーンライトクラウドは今季2戦2勝、予定通り連闘でG1ジャックルマロワ賞に進む。ドーンアプローチ、アンテロなど3歳馬との対戦、また吉田照哉氏のイルーシヴケイトもファルマスSの後ドーヴィル競馬場のロートシルト賞を連勝して臨むことになる。今週も目の離せないレースが続く。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。