早めの3角スパート!メイショウナルトがレコードV!!…平林雅芳の目

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13年8月4日(日)2回小倉4日目11R 第49回 小倉記念(G3)(芝2000m)

メイショウナルト
(セ5、栗東・武田厩舎)
父:ハーツクライ
母:スターペスミツコ
母父:カーネギー


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『弁当忘れても傘忘れるな…』と、昔から小倉競馬を例えて言われるほど。朝から降ったりしていたが、昼過ぎからどんどんと空模様が悪くなる。馬場も一旦、やや重から良に回復したのだが、また降りだした小雨でやや重発表となった。しかし小倉記念を迎える時にはまた止んだ様だった。
大勢の人が見守る中で勝ったのは武豊Jのメイショウナルト。格上挑戦のメイショウナルトがマイネルラクリマの内目で進めていたが、3角を迎える少し前から動いて行った。逃げたメイショウサミットがバテて下がる時と、メイショウナルトが上がっていく時のタイミングがドンピシャリ。後続の勢いが増す前の仕掛けで、一気に4角先頭で直線へ入ってきた。トップスピードとなったメイショウナルトがそのまま後続を抑えての重賞勝ちをレコードで飾った。
マイネルラクリマとラブリーデイが馬体を併せての追い合いとなったが、3歳馬ラブリーデイが2番手に上がってゴールした…。

小倉のパドックもやや見下ろす形態だが、なかなか見やすい。かなりの人で溢れているが、それでも人の間をぬっていける。ちょうど、真ん中あたりでいつも見る。そこは馬はもちろん、調教師席、馬主席も観れる絶好のビューポイント。
前田幸治オーナー松本好雄オーナーが並んで見ている。松本オーナーが誘導馬の溜りの処へ行くのが見えた。あ、あ!、メイショウカイドウに逢いに行くんだ…、と。小倉記念と言えばメイショウカイドウだった。坂口大厩舎長谷川厩務員さんとすぐに顔が浮かんでくる。今は誘導馬として、やはり小倉記念の名物になっている。

そして馬をジックリ観る。うーん、やっぱりマイネルラクリマの出来が際立っていいな~と思える。エクスペディションはやや気負っている。でもいつもそうだしな~。メイショウナルトは少し細いぐらいに見えるな~…と。少し後ろを歩くラブリーデイが、キビキビと若さ溢れる馬体とイキの良さだ。

馬場入場。綺麗に飾られたメイショウカイドウの前を、4コーナーの方へと走っていく。マイネルラクリマは、もうすでにポケットに収まっていた。メイショウナルトが走り去っていった。私が見て馬が細いぐらいに見える時の方が勝っているよな…と心の中で重いながら見つめていた。

ゲートが開いた!当然にメイショウナルトを中心に見ている。エ!先手をとるの!と思えるぐらいのいいスタートで出て行った。
眼の前の1周目のゴール板では4番手のイン、ちょうど外にマイネルラクリマがいる位置に納まった。後で見るとラブリーデイがすぐ傍にいるし、真後ろにはエクスペディションと有力馬がいた。絶好のポジションだと判る。

逃げたメイショウサミットが2番手タムロスカイを離しだして、向こう正面に入るあたりでは5馬身のリード。マイネルラクリマが4番手。その直ぐ後ろをラブリーデイと並走する感じで、メイショウナルト。ここで縦長のど真ん中ぐらい。最後方がダコールだ。
逃げたメイショウサミットのリードが3角を過ぎたあたりから、随分となくなってきた。2番手以降がかなり接近の様だ。マイネルマクリマが早めに動こうとしているのが判る。その内で我が武豊Jも行き出している。2番手タムロスカイの内から前を目指す。そして一番前に出て残り400を迎える。すぐ隣り、いや半馬身遅れでマイネルラクリマも来る。さらにラブリーデイも続いてきている。

カーヴを小さく廻ってマイネルラクリマに1馬身の差をつけて直線に入ってきたメイショウナルト。右ステッキを抜いて追い出す鞍上、まだ後続との差は詰まらない。もう双眼鏡を置いて手で応援だ。
1馬身半ぐらいのリードを保ったままゴールへと近づくメイショウナルト。今日は、いや今週は《川田劇場》と言えるほどに大活躍の川田Jのラブリーデイ、その勢いが一番怖かったが、何とかセーフティリードを保ったままゴールインしたのを確認。

手が痛い。調教師室に入って武田師に握手を求める。検量室前で表彰式を見つめている時間は、実に至福の時でありました…。
いつにない早めの仕掛けで勝ちに行った鞍上の手腕。『ドンピシャリだったね…』の一言で十分でした。

エクスペディションの浜中Jに後刻聞くと、《あれでもテンションはいつもより大人しいぐらい。すぐ後ろにいたけど、あそこで動いて行けるのが凄いよね!》と自分の負けよりも、勝者の仕掛けを言っていたのが印象的でした。
格上挑戦が実ったメイショウナルト。何か《メイショウカイドウが勝たせてくれた小倉記念》といった感じに思えたものでありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。