アーリントンパークの国際競走を振り返って[和田栄司コラム]

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17日、米シカゴのアーリントンパーク競馬場は国際競走デーを迎え、芝コースで行なわれる準重賞1レースと3つのG1競走を中心に熱戦を繰り広げた。3歳以上による距離13.5ハロンのアメリカンセントレジャーは、ライアン・ムーア騎乗の英ダンディーノが直線で前が詰まる不利がありながらも、外に出して鋭く追い込み欧州G2馬の貫禄を見せつける。

続く3歳馬によるG1セクレタリアトSは距離10ハロン戦。3コーナーで先頭に並びかけたG3アメリカンダービー3着馬ストーミーレンを、直線5番手に上がって来たアメリカンダービー2着馬で3番人気のアドミラルキティンが100ヤード残して抜き去り優勝した。1馬身4分の1差で2着にストーミーレン。勝ちタイムは2分02秒17。ロージー・ナプラヴニク騎手は引退を撤回して現役に復帰後も大活躍を続けている。

G2ヴァージニアダービー3着馬で1番人気に推されたジャックミルトンは直線2番手に上がって来たものの3着、G3勝馬で2番人気のライディルークは2番手から後退して11着、遠征馬は仏ヴィジアーニ5着、愛ファーストコーナーストーン8着、英イーガー10着と振るわなかった。勝ったアドミラルキティンはこれが初のグレード競走勝ち、通算成績は8戦3勝、2着4回となった。

3歳以上牝馬による9.5ハロン戦のG1ビヴァリーDSは、2番人気に推されたライアン・ムーア騎乗の英ダンクが、直線5番手に上がり、外から1ハロン残して抜け出し後続に4馬身4分の1差を付け圧勝した。勝ちタイムの1分53秒38はレコードに100分の18及ばなかったが、これでG2とG1を連勝して通算成績を11戦6勝、2着2回、3着1回とした。

2着ギフテッドガールは英国から参戦した準重賞勝馬、G2勝馬の愛ダントルは3番人気に推されたものの中団から後退して7着、1番人気に推されたG1・2勝馬マーケティングミックスはラストストライドで人気薄のオーサスにも交わされ4着、4番人気のソリッドアピールも2番手から後退して6着に終わった。

国際競走デーの締めくくりは第31回を迎えた10ハロン戦のG1アーリントンミリオン。31年前の総賞金100万ドルは価値があったが、賞金が据え置きなのは考えものである。それはさておき今年も一悶着あった。直線3番手に上がったジアパッチが1ハロン残して先頭に立ちラチ沿いに入る。そこに直線7番手に上がって来たリアルソリューションが残り100ヤードで並びかけて来た。

見た目にはジアパッチがアタマ差でリアルソリューションを抑え、3つ目のG1を手に入れたと思った。しかし、リアルソリューションのアラン・ガルシア騎手からインクワイアリーが宣誓されオブジェクションのランプが灯る。正面からの映像を見ると、ジアパッチのクリストフ・スミヨン騎手が左鞭を入れるとどんどん外に斜行してリアルソリューションを押圧してセンター近くまで動いていた。

判定は着順が入れ替わってジアパッチは2着に降着、リアルソリューションが初のグレード優勝をG1の舞台で飾ることになった。31年の歴史の中で降着はこれで3回目、2003年にはストーミングホーム、2004年にはパワーズコートが共に4着降着になった。リアルソリューションの通算成績は8戦4勝、2着1回、3着1回である。

2頭からは2馬身差で3着に人気薄の英サイドグランス、半馬身差でこれも人気薄のフィネガンズウェイクが4着に突っ込んだ。アルゼンチンから移籍したG1・3勝馬インディポイントは1番人気に推されたものの後方のまましんがり負け、米国でG2・2勝した成績を評価されて2番人気に推された英グランジャーも追い込み不発で7着、G1・3勝馬で3番人気のリトルマイクも先行したものの6着に沈んでいる。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。