英ヨーク競馬場のイボア開催回顧[和田栄司コラム]

トピックス

21日から24日までの4日間連続でノースヨークシャー州ヨークのヨーク競馬場で行なわれたイボア開催が終了した。初日に組まれた注目のジャドモントインターナショナルS(距離10ハロンと88ヤード)は目下重賞5連勝中、G1・3連勝中のアルカズィームとサセックスSでG1初優勝のトロナードの初対決で注目されたが、勝ったのは4番人気のデクラレーションオブウォーだった。

6頭立てのレースは愛ダービー馬トレーディングフェザーが先行、2番手にアルカズィーム、3番手デクラレーションオブウォー、その後ろにヒルスター、トロナード、最後方リワーデッドの順、4番手まではほぼ1馬身間隔で続き、その後ろは2馬身間隔となった。左廻りのヨーク競馬場は、最終コーナーを廻って直線コースに出て来ても4ハロン以上ある長い直線が特徴。

2005年にゼンノロブロイが先に先頭に立ったものの最後方から追い込んだエレクトロキューショニストに交わされた長い直線、今年もその直線が勝負の明暗を分けた。残り2ハロンでアルカズィームが並びかけアドバンテージを取ったかと思いきやトレーディングフェザーが内で粘って差し返す。そこへデクラレーションオブウォーが残り1ハロンで外からまとめて交わし先頭に立った。

デクラレーションオブウォーが2分05秒74で優勝、1馬身4分の1差2着トレーディングフェザー、1馬身半差3着アルカズィーム、トロナードは初めてマイル以上の距離に挑戦したが距離が長くしんがりに敗れた。ジョセフ・オブライエン騎手で勝ったデクラレーションオブウォーは、コーラルエクリプスでアルカズィームに2馬身差2着に敗れ、2頭の間の勝負付けは終わっているように思えた。

これでクイーンアンSに続く2つ目のG1勝利、通算成績を12戦7勝、2着1回、3着1回とした。ウォーフロント産駒のデクラレーションオブウォーは、2012年のベルモントS勝馬ユニオンラッグスの半弟にあたり、10ハロンを越える距離でも4戦3勝、2着1回となった。次は9月7日レパーズタウン競馬場で行なわれるG1チャンピオンS、再びアルカズィームとの対決になる。

イボア開催2日目のG1ヨークシャーオークス(距離12ハロン)は、ウィリアム・ビュイック騎乗のザフューグが9馬身半差の4番手から長い直線で順位を上げて行き、最終ハロンで抜け出し4馬身差を付け、人気に応え圧勝した。これがナッソーSに続く2つ目のG1勝利、通算成績を11戦4勝、2着2回、3着3回とした。

ザフューグは、「キャッツ」や「オペラ座の怪人」など人気ミュージカルで成功した英国の作曲家アンドリュー・ロイド・ウェーバー卿の所有馬、ダーレミに続く2頭目の有力牝馬で、1年前に3歳で挑戦してシャリタにクビ差2着、その雪辱を果たした。陣営はロンシャン競馬場で行なわれるオペラ賞をステップに、BCフィリー&メアターフに照準を合わせている。

イボア開催3日目に行われたG1ナンソープS(距離5ハロン)は、スティーヴ・ドラウン騎乗のオアシスドリームを父に持つ4歳牝馬ジュワラが、逃げるハーミッシュマクゴナガルに競り勝ち、最終ハロンで先頭に立って優勝した。人気のシェイシェイが半馬身差まで迫って2着、2番人気ソールパワーがシェイシェイを追って伸びたもののハナ差及ばず3着に終わった。

ジュワラは前走グッドウッド競馬場のG2キングジョージSで、ゲート内で頭をぶつけて眼球を痛め、17頭立てのしんがり負けを喫した。その為ここは単勝41倍と人気の盲点になっていた。しかし、ヨーク競馬場では準重賞とG1を勝ち、2戦2勝。通算成績は15戦5勝、2着4回、3着1回となった。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。