オルフェーヴルとキズナは現地に到着[和田栄司コラム]

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凱旋門賞出走に向けてオルフェーヴルとキズナは既に現地に到着した。そして1日は欧州でも有数の温泉地として知られるドイツのバーデンバーデンにあるバーデンバーデン競馬場で凱旋門賞へのプレップ競走、G1バーデン大賞(距離2400m)が行なわれ、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを5馬身差でレコード勝ちしたノヴェリストが圧倒的1番人気に応え優勝した。

今年のバーデン大賞は5頭立て。G1勝馬は3勝のノヴェリストとミアンドレ、ノヴェリストと同厩で8月にG1バイエルン大賞を4馬身差で勝ったザイスモスの3頭。他は同レース2着のエンポリと独ダービーで4着のケンシーモナークの3歳馬2頭。人気はノヴェリストが1.3倍、2番人気のエンポリは6.4倍と大きな隔たりがある。斤量は古馬60キロに対し3歳馬は56キロである。

レースは、前走で400mあとから先行して押し切ったザイスモスの主導権かと思われたが、5番枠から発走してレースの流れを伺った。そこでノヴェリストのエディー・ペドロザ騎手が先行位置に入ったが、流れはスタートから極端なスローペースになった。1馬身半差でザイスモスが2番手、内からエンポリが体半分差で続き、1馬身差で外にミアンドレ、最後方はダービー同様ケンシーモナークとなった。

向正面に入り、レースの半ばでザイスモスのアンドレア・アトゼニ騎手が先頭に出る。2馬身差で2番手に引いたノヴェリスト、1馬身差で外にミアンドレ、半馬身差で内エンポリ、半馬身差で外ケンシーモナーク。左廻りの4コーナー、バーデンバーデン競馬場は晴雨に拘らず各馬が奥へ進みスタンド沿いに進路を取る。ザイスモスも定石通り外に向かったが、交錯するようにノヴェリストが内に入って直線先頭に立った。

あとはヨーイドンで、力で勝るノヴェリストが4分の3馬身のリードを取ってG1・3連勝、通算4つ目のG1勝ちを収めた。2着ザイスモスから同じく4分の3馬身差3着ミアンドレ、半馬身差4着エンポリ、あとは4馬身差が付いてしんがり5着ケンシーモナークとなった。勝ち時計は2分33秒90、スローペースと通った距離を考えれば納得出来る。

モンズン産駒の4歳の牡馬ノヴェリストは、これで通算の成績が11戦9勝、2着1回となった。3着を外したのは昨年のバーデン大賞でデインドリームに敗れた4着。アンドレアス・ヴェーラー調教師は「5週間後の大レースの為に、今日は85~90パーセントに力をセーヴした。中間も軽めの調教で今日は戦略的なレースになった。この後は本番に向けて調整したい」と語る。

パナマを出て95年からドイツで騎乗しているペドロザ騎手は「今日はプランBの戦略で前々から組み立てた。ザイスモスが途中からペースを上げてくれたので、彼の後ろで楽にレースが出来た。5月にここで勝った時から比べるとノヴェリストは一段と成長している」と続けた。しかし、ノヴェリストのオーナーは、本番のパリではキングジョージを勝ったジョニー・ムルタ騎手に騎乗依頼することにしている。

凱旋門賞に直行を決めているのは8月25日のG2ドーヴィル大賞典(距離2500m)を勝ったアナバーブルー産駒の3歳牡馬トレスブルー。独ダービーに遠征して4分の3馬身差2着の後、ドーヴィル競馬場の2500mで行なわれたG3とG2を連勝した。結果的に前残りのペースになった前走は、早めに動いた人気のシリュスデゼーグルが自滅した中で、先行馬をゴール寸前で交わし、2番人気のゴドルフィン馬ペンライパヴィリオンをアタマ差抑えた。

今週は7日に愛レパーズタウン競馬場で行なわれるG1愛チャンピオンS(距離10ハロン)に注目しよう。アルカズィームとデクラレーションオブウォー、三度の再戦に注目が集まるが、アルカズィームは天気予報とにらめっこ、雨は降りそうもなく回避の方が有力である。アルカズィームが回避した場合は、来週のフォワ賞を使って凱旋門賞、またはアスコットのチャンピオンSが考えられる。

同じ理由でシリュスデゼーグル(セン馬なので凱旋門賞には出走出来ない)も回避が有力。バリードイルは7頭をエントリーしているが、デクラレーションオブウォー以外は期待出来そうにない。引退が噂されているキャメロットまで登録しているのだから。出走しそうなメンバーの中では、目下絶好調のフューグと愛ダービー馬トレーディングフェザーに注目したい。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。