無敗馬同士の対決、トーセンスターダムが差し切り重賞初勝利!!

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14年2月9日(日)2回京都4日目11R 第54回 きさらぎ賞(G3)(芝外1800m)

トーセンスターダム
(牡3、栗東・池江厩舎)
父:ディープインパクト
母:アドマイヤキラメキ
母父:エンドスウィープ


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寒い風の中でも、スタンドのテラスにはけっこうな数のお客さんが出てきていた。無敗馬同士の決戦は馬券を離れても面白いはず。逃げるバンドワゴンに、差すトーセンスターダム。その筋書きどおりに、残り1ハロンでの攻防にスタンドからの応援もヒートアップ。
頭差の辛勝ながらキッチリと脚を伸ばしたトーセンスターダム。馬場が乾いてきていたのが最大の武器となったが、バンドワゴンの粘りも流石と思えるもの。競馬の醍醐味を観た思いであった…。


朝から日差しが戻り、芝の上に影を映す。ひとつ前のレースでは内目の馬ばかりの決着で、稍重発表でもかなり乾いてきて良馬場に近い状態となっていた。
いつものように、ゴールを見届けてパドックへと急ぐ。ビッシリの人、と言う訳にはいかないが、それでもクラシックへの登竜門たるレースの馬達を観ようと、ソコソコの数で埋まっている。

プラス10キロの数字ほどの印象はないトーセンスターダム。稽古の時はかなりテンションが高めだったのだが、パドックでは左程に上がってもいない。バンドワゴンも堂々と周回している。数々の名馬を扱っていた久保厩務員さんとの強力コンビだ。ブラックカイトの馬体が良く見えて仕方がない。
馬場入場して返し馬をもジックリと観て、スタンドの中二階で双眼鏡を片手にスタンバイする。スタート地点は、観客席からは見えない2コーナー奥の引き込み線で自然とオーロラビジョンを見つめる。当然に視線の先はトーセンスターダムだ。

あんまり素早い出ではなかった。バンドワゴンの方も、ややもたつく出だった。外からピークトラムが内へ切れ込む様に前へ出てきた。その外からオールステイが内を観ながら先頭へと立ってきた。バンドワゴンが外へ出して前へと上がってきた。トーセンスターダムもいつの間にか外へと進路を取って、まるでバンドワゴンをマークする様に縦位置で、2馬身ぐらい真後ろにいる。内からセセリも出てきて、バンドワゴンと2番手併走する。

最初の1Fが13.0で、次からが11.5~11.3。バンドワゴンがオールステイを交して先頭に立って行ったのが、2ハロンと半分ぐらい過ぎてから。前半3Fが35.8の入りだからそう速くはない。2番手のオールステイとの差を、1馬身から次の1Fでは2馬身と広げていくバンドワゴン。坂のテッペンでは3馬身ぐらい差を開げての先行となった。3番手セセリが2馬身差で続き、ピークトラムがその後ろ、そしてトーセンスターダムが内にエイシンエルヴィンと追走する展開だ。
この下りの間にバンドワゴンはだいぶ脚を貯めていたのか、ラップを12.5~12.2と落としていた。4角を廻る手前では後続がだいぶ接近してきていた。オールステイの外にセセリが並び、ピークトラムが外の真後ろ、トーセンスターダムとエイシンエルヴィンが内外に別れて追走、ブラックカイト、そしてサトノルパン、ただ1頭ダンツキャノンだけが3馬身離れてドンジリだ。
ここから4角を廻って行く時に、思わず目をつぶった。トーセンスターダムの手応えが一番悪く見えたのであった。まだカーヴに入る手前なのに、武豊Jの手が動きだしているからである。《ペースが上がって、ついて行けなくなったのだろう…か?》と心中おだやかではなかった。

大きなアクションで追いだしているバンドワゴン。再び現れた内ラチにへばりつく。後続とはまだ2馬身ぐらいのリードがある。馬場の5分処に出して追ってきているトーセンスターダムとの差はまだけっこうある。
右ステッキを揮って追う和田Jのバンドワゴン。残り1ハロンで、やっとトーセンスターダムが外目で伸び出してきている。しかしまだバンドワゴンとの差が詰まらない。懸命に武豊Jが右ステッキで促している。1馬身、半馬身、《差したか!!》と思った瞬間にゴールを迎えていた。
すぐ後ろの内目に赤い勝負服が接近していた。エイシンエルヴィンが3着。場内アナウンスが《内外離れて2頭が並びました!》と言う。差したはずと思いながら検量室へと向かう。

1着の枠場に入ってきたトーセンスターダムと武豊J。池江師と何やら会話をしている。チラっと聞こえる感じから、物見をかなりしていた様子である。後検量で室内へ入って行った武豊Jを見送る。その出入り口の処に佐々木晶師がやってきて、『いいね~!』と我が事の様にニコニコ顔で近づいてきた。顔を冷たい水で綺麗にした武豊Jが我々二人の横を通りながら、『連覇するよ!』と声に出して、大勢が待つ外へと出ていった…。意味はよ~く判りました!

そして何度もPVを観る。直線で武豊Jがステッキを7、8回使っている。ゴール手前ではバンドワゴンの方を観る余裕があるぐらいだから、そこで勝利は確信しているのだろうが、このステッキの多用は、いい意味でのズブさなのかも知れない。あんまり派手には勝たないが、キッチリと勝つ。これがいいのかも知れない。自分の競馬に徹しての差し切り勝ち。

そしてPVを観ているうちに気になる事が…。3着のエイシンエルヴィンが1馬身差。前の2頭がマッチレースのはずが、そんなに離してはいない。直線1Fで少し前が壁になった感じさえもあったエイシンエルヴィン。ゴール前の脚色は決して悪いものでなかった。
火曜朝の取材テーマは、そのエイシンエルヴィンだった。坂路の頂上、一番テッペンにある助手の控室。そこに中尾厩舎の助手が朝、スタンバイしている。そこで福岡助手に訊く。《エエ、夏の小倉から使った馬ですが、いい素質を持っている馬なんですよ~》である。
競馬にフロックはないと常々思っている。走るにはちゃんと理由がある。今度はスタンドで中尾師に直撃インタビューだ。『10キロは成長で6キロが太目』と、相変わらずオチャメな人だ。続けて『馬も良くなっていました。でも前の2頭は強いですよ…』と社交辞令を忘れない。謙遜しながらも狙っていた感じが伝わってきました…。

まだまだアチコチに好素材の馬はいるものですな~と、気持ちを引き締めた朝でした。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。