ブリーダーズカップを終えて[和田栄司コラム]

10月31日と11月1日の2日間にわたってロサンジェルス、アーケイディアのサンタアニタパーク競馬場で行なわれたワールドサラブレッド選手権~第31回ブリーダーズカップ。2日目はブリーダーズカップ前の芝のレースをダート変更するなど努力の甲斐あって、2日間良いグランドコンディションの下で全レースを終了した。2日目の後半4レースを振り返ってみよう。

3歳以上によるBCターフ(芝12F)は12頭立て。人気のテレスコープが4コーナー内を掬い直線先頭に立ったが、残り1ハロンで2番人気の凱旋門賞2着馬フリントシャーが交わし、これを追った3番人気のメインシークエンスが更に追い込んで決着した。テレスコープは人気薄のトワイライトエクリプスにも交わされて4着に落ちた。勝ちタイムはスローペースの為、2分24秒91と平凡な記録に終わっている。

ジョン・ヴェラスケス騎手で勝ったメインシークエンスは、英国でG3ダービートライアルSを勝ち、キャメロットが勝ったダービー2着を含む14戦4勝、2着3回、3着3回の成績を持って1年前に米国に移籍したが、今季はユナイテッドネイションズ、ソードダンサー、ジョーハーシュターフクラシックに続くG1・4連勝とパーフェクトの内容である。

グレアム・モーション調教師は「我々は香港や日本からも招待を受けているし、3月のドバイからも招待されている。どれも素晴らしいレースです。日本はレースが迫っているので、香港がオプションの1つになるでしょう。しかし、気になることは昨年の冬に病気にかかった事です。一寸深刻な状態だったもので輸送などを考えると、心配もあります」とコメントしている。

続くBCスプリント(D6F)は14頭立て。前哨戦でBCダートマイルを勝ったゴールデンセンツを破った人気の香港リッチタペストリーは、6番手集団の中にポジションを取ったが3~4コーナー中間で脱落してしんがり負け。勝ったのは13番枠から好スタートを決め、ファストアナの2番手でレースを運んだイリノイ生まれの5歳セン馬ワークオールウィーク、4コーナーで並びかけると直線先頭に立ってゴール板を駆け抜けた。

2番人気シークレットサークルが4コーナーで単独3番手に上がって追い込んだが半馬身及ばず2着、4番人気プライヴェートゾーンが流れ込んで3着、3番人気パレスは直線伸びきれず6着に終わった。ワークオールウィークは前走キーンランドのG3フィーニクスSを勝って来たが、ここは単勝20.1倍と人気がなかった。これで通算成績は15戦12勝、2着2回。陣営は少し休ませたい考えのようでフロリダのオカラに送られる。

BCマイル(芝1M)は14頭立て。日本産馬初のBC制覇を仏調教馬のカラコンティが成し遂げた。ステファン・パスキエ騎乗のカラコンティは、大外14番枠からスタートして後方10番手。それでもバックストレッチに入り徐々に順位を上げて直線6番手に上がり、逃げる2番人気オブヴィアスリーを捕えて一気に突き抜け1分32秒88。1馬身差2着にゴルディコヴァの全弟アノディン(これがラストラン)、同じく1馬身差でウッドバインマイルを勝ったトレードストーム、遠征馬が上位を占めた。

カラコンティは2歳時にジャンリュックラガルデル賞を勝ち、今季は仏2000ギニーを勝った。しかし、ここは人気になりながら8着に敗れたトロナドの陰に隠れた存在で単勝倍率は31倍だった。2着に11.5倍、3着に21.8倍が入ってBCマイルは大荒れになった。因みにカラコンティの母サンイズアップは1989年のBCクラシック馬サンデーサイレンス産駒で、カラコンティはバーンスタインの仔を受胎後、社台コーポレーション白老ファームに送られ日本で出産した。

最後のBCクラシック(D10F)も14頭立て。4番人気バイヤンのワイアトゥワイアに6万1114人の競馬ファンが酔いしれた。23.12-46.44-1:10.22-1:34.16-1:59.88 の素晴らしいフラクションだった。1馬身半差で追走したG2UAEダービー勝馬トーストオブニューヨークがハナ差2着、3コーナーで3番手から仕掛けた3番人気の二冠馬カリフォルニアクロームも外から伸びたがクビ差3着に終わった。

無傷の7連勝で1番人気に推されたシェアードビリーフは3馬身半差で4着。その後ろも2番人気のトナリスト、キャンディボーイが入り、3歳馬が6着までを独占した。マーティン・ガルシア騎乗で逃げ切ったバイヤンは、6月のG2ウッディースティーヴンスSで初重賞勝ち、続くG1ハスケル招待Sを連勝したが、G1トラヴァーズSでしんがり負けを喫し、前走G2ペンシルヴェニアダービーをトラックレコードで優勝していた。

これで通算成績は10戦6勝、2着1回、3着1回。殿堂入り調教師ボブ・バファートは、これが初めてのクラシック制覇、妻ジルと息子ボードと一緒に勝てたことに感謝した。レースはスタートで、バイヤンが斜行して隣のシェアードビリーフにぶつかり、更に追いかけたトーストオブニューヨークにも内に押し込まれ、位置取りで外にもたれたモレノとも接触する度重なる不利を受けた。レース後、スチュワートインクワイアリーのランプが点灯したが、7分後ノーチェンジのアナウンスが告げられた。

海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。