2014年欧州年度代表馬はキングマン[和田栄司コラム]

12日、第24回カルティエ賞の発表がロンドン市内のドーチェスターホテルで行なわれ、カリッド・アブドゥッラー氏の自家生産馬キングマンが2014年の年度代表馬と最優秀3歳牡馬に選ばれた。インヴィンシブルスピリットの息子は英国のジャドモントファームで生産され、ジョン・ゴスデン調教師によって2014年のキャンペーンで6戦5勝、2着1回、4つのグループ1競走を3ヶ国で勝利した。

内と外に広がった2000ギニーで2着惜敗の後、愛2000ギニー、英国でロイヤルアスコットのセントジェームズパレスSと古馬と初めての顔合わせとなったサセックスS、そしてフランスのドーヴィル競馬場ではジャックルマロワ賞を完勝、G1・4連勝を手土産に引退の花道を飾った。ライバルのオーストラリアは愛チャンピオンSでまさかの2着、4つのG1タイトルには並べなかっただけにその価値は大きかった。

カルティエ賞は、1年を通して欧州パターンレースで獲得されたポイント(40%)に基づいて、イギリスの競馬記者(30%)の意見と、レーシングポスト紙とザデイリーテレグラフ紙の読者投票、それにチャンネル4レーシングの視聴者(30%)による投票で決まる。

最優秀3歳牝馬はオークスとキングジョージを勝ったタグルーダ、最優秀古馬にはチャンピオンSを含めG1・3勝、これもカリッド・アブドゥッラー氏のフランケルの全弟ノーブルミッションが選出された。また最優秀ステイヤーにはゴールドカップ勝馬のリーディングライト、最優秀スプリンターにはキングズスタンドSとナンソープSの2つのG1を連勝したソールパワーに決まった。

最優秀2歳牡馬にはジャンリュックラガルデル賞で1着から3着に降着処分が科せられた愛バリードイルのグレンイーグルスが、4連勝でG1ナショナルSまで勝ち進んだ実績を評価された。また最優秀2歳牝馬には3連勝でG1チェヴァリーパークSを勝ったティギーウィギーが8戦6勝、2着2回の成績が評価されて選ばれている。

来年の2000ギニー、1000ギニーのアンチポストを見ると、2000ギニーではグレンイーグルスと僚馬オールマンリヴァーが8/1で並んでトップ。オールマンリヴァーは2戦2勝でG2ベレスフォードSを勝ち将来性が期待されている。また1000ギニーの方は、マルセルブサック賞を勝って3戦2勝のバリードイル馬ファウンドが4/1で抜けた存在、ティギーウィギーは16/1のオッズになっている。

カルティエ賞の功労賞はシェイク・ハムダン殿下が選ばれた。ハムダン殿下のシャドウェルエステート社は欧州、北米、ドバイと豪州で生産を展開、2014年は3歳牝馬タグルーダやエクリプスSを勝った5歳牡馬ムカドラムの活躍が評価された。タグルーダやムカドラムに限らず、3歳馬や古馬の有力馬が揃って引退してしまった2015年の欧州競馬には、現2歳馬の飛躍に託す他ないのが現状だろう。

さて今週23日は香港シャティン競馬場で行なわれる香港国際競走へのトライアルレースに注目しよう。12月14日の本番に向けて、この日組まれる前哨戦はスプリント、マイル、カップの3レース。スプリントにはシンガポールから6戦6勝のシンガポールダービー馬スペラトが初めての右廻りに挑戦する。またマイルには豪州でG1馬の称号を得た日本のハナズゴールドもエントリーしている。

海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。