【朝日杯FS】順調エアスピネル笹田師「この母にして、この子あり」

16日、日曜阪神11レース・朝日杯FS(G1)の追い切りが栗東トレセンで行われた。前走、デイリー杯2歳S1着のエアスピネル(牡2、栗東・笹田厩舎)は、助手を背に坂路で終いを伸ばす調整で4F52.3-37.8-24.4秒-12.1秒をマーク。

先週の4F52.2、ラスト1F12.3秒も申し分ない動きに映ったが、笹田和秀調教師は満足とせず、最終追い切りでは全体時計こそ0.1秒遅くなったが、その他はいずれも先週を上回るラップを計測。0.6秒追い掛けた2歳未勝利のコウザンアプローチをアッサリと突き放して0.2秒先着を果たし、悔いのない仕上げで大一番へ挑む。

母のエアメサイアは師の義父でもある伊藤雄二調教師の下で秋華賞を制覇。調教助手として苦楽を共にした縁のある血統馬だ。兄姉は長女のエアワンピースこそ4勝を挙げたが、いずれも下級条件で、大きな期待に応える産駒が出ず、ようやく現れたのがこのエアスピネル。新馬戦、デイリー杯2歳Sを母譲りの末脚で2連勝した。

勝てば無敗で2歳王座にグッと近づき、母子2代G1制覇。そして手綱をとる武豊騎手はJRAの平地G1完全制覇という前代未聞の大記録が達成されるが、記者会見では時折笑いも起きるなど、終始リラックスムード。普段通りの走りで2歳王座に突き進む。



12月20日(日)、阪神競馬場で行われる朝日杯FS(G1)の共同記者会見が栗東トレセンで行われた。
エアスピネル(牡2、栗東・笹田厩舎)を管理する笹田和秀調教師の一問一答は以下の通り

●ここまでの課程は順調そのもの

-:2戦2勝、そして今日、最終追い切りが終わりました。まず追い切りの動き、指示などを教えて下さい。

笹田和秀調教師:先週、少し最後の1Fが物足りないかなと思ったので、今日は最後の1Fを重点に。昨日の雨も考えて馬場も悪いから、最後の1Fが伸びるような調教という指示で、指示通りに最後の1Fが一番速いラップを踏みましたし、先着も果たしていますので、追い切りに関しては指示通りに順調に終わったかなという感じです。

-:狙い通り?

笹:狙い通りというか、予定通りですね(笑)。

-:上がってきた馬の様子を見ていかがでしたか?

笹:いつも変わりなく、この馬は本当に心肺機能がいいのか、息の入りもいいし、普段と変わりないケロッとした感じで、上がりも全然大丈夫でした。

-:ということは、ここまで順調そのもの?

笹:そうですね。今日の追い切りを終えた時点では順調そのものに来ています。

笹田和秀調教師

笑みもこぼれリラックスした表情の笹田和秀調教師


-:では、デビュー戦、2戦目、さらにデビュー前とお話を伺いたいのですが、やはり縁のある血統で、思い入れが一杯あると思います。

笹:僕の師匠である伊藤雄二先生のところにたくさんの名牝がいましたが、その中の1頭として、兄姉ずっと携わってきて、やっと「この母にして、この子あり」という仔が来たなという感じです。

-:デビュー前からかなり注目をされていました。

笹:この血統だから注目はされるのですが、なかなかこれらの上が結果を出してくれなくて。少し気を揉んでいたのです。

-:もうお母さんのことを考えますと、子どもは出てこないわけですよね。

笹:そうですね。残念です。

-:それを思えばやはり、よくぞここでと。

笹:最後にね。これの下もいますけど、お母さんの名を忘れさせない仔が出たなということで、僕も少し喜んでいます。

-:伊藤さんはどんなふうにおっしゃっていましたか?

笹:「やっとメッちゃんの仔で走るのが出たな」と(笑)。そんな感じですね。

-:今、口調も同じような感じで(笑)?

笹:そうですね。真似ました(笑)。

●調教助手時代から知る縁の良血

-:笹田さんはずっと調教助手としてエアメサイアに携わってきたのですが、似ているところはありますか?

笹:乗った感触とか体型はあまり似ていないのですけども、何かをした拍子に「バッ」と爆発するパワー、そういうものはお母さんと同じようなものを持っていますね。

-:それは前走のゴール前の素晴らしさ、ここにも現れていますよね。

笹:それがいい方に向いて、競馬でああいうパフォーマンスをしてくれるので、この馬に関しては結果を出してくれていると思っています。

-:デビュー戦、もちろん緊張の下で行われたと思いますが、阪神のマイル戦であの走り。素晴らしかったですよね。

笹:そうですね。ある程度、調教から自信を持って送り出せたのですが、結果を見ると尚更この馬に関しては自信を持てる馬だなという手応えは掴めました。

-:2走目、デイリー杯の時は確信に変わったのではないですか?

笹:その通りですね。

-:ピンク帽、8枠で外々を回って、ゴール前、直線はだいぶ流していましたよね?

笹:抜け出したからユタカくんもやっぱり馬に負担をかけないように、無理な競馬をしなかったようですね。

笹田和秀調教師

-:それでも3馬身半差を付けての完勝。さぁ、今度はG1です。

笹:新馬を勝った後に「ここに出られたらいいな」という目標を立てていたので、目標通りに来て良かったと思います。

-:今までお話を聞いてきた血統の背景、これまでの強さ、鞍上・武豊ジョッキー。競馬としては言うことないくらいの話題がいっぱい詰まっています。

笹:そうですね。ユタカくんもこのレースが唯一(G1を)勝っていないレースだというので、余計に話題性があって、ファンの皆さんが楽しみに見れるのではないかと思いますね。

-:笹田さんとその話は武豊さんとされましたか?

笹:新馬を勝った後にデイリー杯と朝日杯に行くという予定をユタカに言って「デイリー杯までは乗せるけど、オマエあのレースを勝っていないから、ひょっとしたらチェンジするかな(笑)」と冗談で話はしていましたけどね。

-:そうしたら、どういう反応をしていました(笑)?

笹:その反応が、デイリー杯を勝った後に、ユタカくんのコメントで「僕は朝日杯を勝っていないジョッキーだから、乗せてもらえるかな」なんて、彼も半分冗談で言っていたのではないかと思います(笑)。

-:大きなチャンスですものね。

笹:そうですね。毎年あることですが、できればこの血統でユタカくんにそれをプレゼントしたいなと思います。

-:阪神のマイル戦も経験していますし、もう心配というのはないのではないですか?

笹:競馬は何があるか分かりませんから。また、この馬は普段幼いところがあるので、そういうのがレース当日に出なければいいなと思っていますけども。

-:まだ2歳戦、若駒でもありますが、来年のクラシックへ向けて抱負など、ファンの皆さんにひと言お願いします。

笹:何とかこのレースをクリアして、来年、クラシックで多くのファンに見てもらえる、ファンが付いてくれる馬になればいいなと思っていますので、皆さんも武豊くんが勝つことも楽しみにして応援していただければと思います。