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抜かれても差し返す根性娘 シンハライト、勝負強い!
2016/3/8(火)
16年3月5日(土)1回阪神3日目11R 第23回チューリップ賞(G3)(芝外1600m)
シンハライト
(牝3、栗東・石坂厩舎)
父:ディープインパクト
母:シンハリーズ
母父:Singspiel
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道中、同じ様な位置でレースを進めたシンハライトとジュエラー。先に追い出したシンハライトに対してワンテンポ遅れて追い出したジュエラーだが、一瞬だけ前に出た。だがそこからがシンハライトがド根性を発揮。ゴールではハッキリと先んじたと思える勢いで通過していった。そんなに速くない流れで、この勝ちタイム。上がりも相当なる切れを要求されたが、この2頭に他の馬は霞んでみえた。レッドアヴァンセはゲートの出ももうひとつだったが、マイナス14キロと大きく馬体を減らしてしまった。そこらに敗因がある様だ。
トライアル戦で馬体を減らしてしまってはいけない。レッドアヴァンセの-14キロには、正直ガックリとする。今日もひとつ前のレース観戦も断念して、パドックに馬が入ってくる時から見守る。すでに馬体重はチェックしてある。軒並み増えているのに、大きく減っているのはレッドアヴァンセとクィーンズベスト。クィーンズベストは大型の馬だからそう心配は要らないだろうが、レッドアヴァンセは440キロ台の馬。『カイバ喰いはいい方でもないが…』と中間に音無師に訊いていただけに、ここまで減るとは思ってもいなかった。
一番後ろからパドックに入ってきたレッドアヴァンセを見てすぐに《細っ!》と思う事はないが、心持ち、腹目が上がっている感じには見えた。それにくらべてジュエラーの堂々としている事よ。そしてシンハライト。430キロと小柄な方の馬だが、それを感じさせない迫力がある。よその馬はよく見える。カイザーバルの脚がやけに長く見える、なんて違う発見もする。パドックをひと仕切り見てから、返し馬を見るべく早めにスタンドへ戻る。
牝馬だけに、ゴール板を過ぎてオーロラビジョンの前を通り過ぎる返し馬は、そういない。特にレッドアヴァンセは、馬場に入ってすぐに左へとキャンターで行ってしまった。マイナス体重でも、どっしりと落ち着いて歩いている様だと心配はないのだが…。今日は走る前から不安ばかりが先に来る。
気温がどんどんと上って暖かいを通りこしている感じだ。多くのファンが見つめるなかで打倒、メジャーエンブレムの第一候補にあがる馬はどの馬だろうか。固唾を飲んで見守るゲート入り。最後にレッドアヴァンセだ。何かゲートの中でモジモジしている感じを受ける。そして開いた瞬間、一番後ろに赤い勝負服が。思わず《アアッ》と声が出てしまう…。大外枠の上に、このスタートの差である。後は流れが速くなる事を願うばかりだ。
ヴィブロスが行く。クィーンズベストが続く。5、6番目のラベンダーヴァレイ、ブランボヌールにエルビッシュが固まり、その後ろにウインファビラス、シンハライト、ジュエラーと密集する集団である。レッドアヴァンセは、カイザーバルから2馬身後ろのドンジリで最初の1ハロンを通過。前の2頭がやや接近して、後ろが4馬身ぐらい離れる。ジュエラーをまるで蓋をする様に、シンハライトが外にいる。
3コーナーのカーブに入っていく時には、馬群も縦長ではあるがだいぶ縮まった感がある。前半の3Fを34.6と、このメンバーにしてはユックリの入りである。
800を過ぎて、さらに馬群は凝縮していく。ラスト600のハロン棒を過ぎ去るあたりでは、4列ぐらいで横に密集した塊となった。
ブランボヌールが前との差を詰めて上がっていく。先頭はクィーンズベストの方が前に出た様だ。
4コーナーを廻って直線へと入ってきて全馬が見える。シンハライトが、ガッチリとジュエラーをカバーして廻ってきたのが判る。
外廻りのラチが途切れる瞬間に、中団のウインファビラスが外へ流れながら前へと出る。その動きに合わせて、後ろのシンハライトが外へと出して追い出す。その開いた処はジュエラーが入ってきた。そして一瞬のうちに前に出たシンハライトに並びかける。と、言うか、むしろジュエラーの方が勢いがいい。そこでまだ中団の動き。前ではクィーンズベストが先頭だが、その内をグイと開ける様にラベンダーヴァレイが伸びそうである。
その少し後ろで、デンコウアンジュがいい伸び脚を見せ始める。さらに外の2頭、ジュエラーとシンハライトの2頭が、馬体を接して前へ前へと押し寄せてくる。完全に勢いでその2頭、それもジュエラーがクビぐらい出たままゴールへと向かっている。しかし、下を見ながら必死で追う池添Jに呼応したのか、シンハライトがジワジワと差を詰めだす。まだジュエラーがリードでゴールへ。だが最後の最後に、シンハライトが少しだけ体勢有利で、ゴールへと入ったのを見届ける。
いい脚を使っていたのが、7着のクロスコミア。ゴール前の勢いはなかなか鋭かった。レッドアヴァンセはその次のグループで、前からはコンマ6秒差の8着止まりだった…。
検量室の前で待っていると、まだ写真判定の結果が出ていないうちから池添Jが『ヨッシャー!』と大声で雄たけびをあげながら、スペースに入ってきた。乗っている者が一番判っている写真判定。確信を持っていた様である。ジュエラーとはハナ差。そして3着には1馬身と半分と、ずいぶんと水を開けたものである。
シンハライトは、これで負けなしの3勝目である。これで新馬戦を勝った後の2戦でM・デムーロと藤岡健厩舎のコンビの馬、2頭に後塵を浴びせた。後は大本命である東のメジャーエンブレムとの対戦が待っている。
ディープインパクトの仔らしい切れ味と根性を受け継ぐシンハライト。対抗馬として名乗りを上げたのであった。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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