着差以上に楽な勝ち方 ノボバカラがJRA重賞初制覇!

ノボバカラ

16年7月10日(日)3回中京4日目11R 第21回プロキオンS(G3)(ダ1400m)

ノボバカラ
(牡4、美浦・天間厩舎)
父:アドマイヤオーラ
母:ノボキッス
母父:フレンチデピュティ

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逃げると思えたポメグラネイトが、まったく行く気がない。流れが速くなると思ったのだろうか。最内枠のワンダーコロアールが逃げる思いがけない展開となる。前半3Fが34.1と、このクラスにしては速くない流れ。ついて廻る方も、当然に楽。3番手から2番手と、ノボバカラは余裕の追走。直線入口で前に並びながらも、少し内外を離しての追い出し。ゆっくりと確実に先頭に立っていく。ゴール前でニシケンモノノフキングズガードが押し迫ってきていたが、Mデムーロの手応えは、最後まで抜かせないセーフティなもの。
ついにJRAの重賞までたどりついたノボバカラ。完勝であった…。


今日のMデムーロは、いろいろとやってくれる。特に芝でのレースでは出が悪くても、途中で外を廻って動き先頭グループまで顔を出しては終いに失速とか勝ちあがったりとか、変幻自在と言うか、ちと乱暴な競馬が多かった。だがダートで重賞となると、丁寧な騎乗で最後まで前を残すぐらいの追い出しだった。着差は半馬身だったが、楽勝劇とも言えるゴール前であった。

スタートが良かったワンダーコロアールが先頭に立ったのは、100mも行かないあたり。誰も絡んでこない流れで、十分に息を入れていける流れだった。2番手にダノングッドで、ノボバカラがすぐ後ろをキープする。34.1~45.4~57.2~69.2が、ほとんどワンダーコロアールの造ったペースでもある。最後の1ハロンをノボバカラが交わしてから12.9とかかったのは、談話にもある先頭に立ってソラを使ったためであろう。右ステッキの連打で叱咤激励気味に追って、ニシケンモノノフの追撃を半馬身差凌いだのは、前で受けていたからこそのものかと思う。

1番人気が勝って、2番人気のキングズガードが3着。3番人気のニシケンモノノフが2着と、上位人気馬で占めた結果。4番人気と、穴党に支持された初ダートのクラリティスカイは13着。ルメールに聞いてみたら『ダートは問題ない、距離が合わない』と言っていた。ブライトライン4着にグレープブランデー5着は、少しのブランクの差もあろうかと思える。

キングズガードの3着の内容がいちばん光るものか。3角では後方で、後ろにキクノストームしかいない位置。ラチ沿いを走っているのがいい。4角でポッカリと開いたインをえぐる様に廻ってきて前に取りついているが、先行集団の後ろのグループがしっかりまだ脚を残しているからバラけない。ダノングッドの内が開いたのをしっかりと突っ込んできて、一気に差を詰める。ゴール前の脚色は一番良かったがそこまで。だが重賞へ初チャレンジの今回だっただけに、次はもっとやれそうな気配を残した。

『先生、良かった~』と、検量室から出てきたMデムーロが天間師に声をかける。『うん、良かったね~』とこたえる。日本語としてはおかしいリズムだが、これがミルコならではの言葉づかいだ。地方での重賞勝ちはあっても、JRAでの勝利はこれが初めて。いろんな意味でも価値のある勝利であろう。その実感かと思える。
マイルでもユニコーンSでノンコノユメの2着とか勝ち負けはしているが、1400以下の方が絶対に動ける馬であろう。先行して伸びてゆく脚は、おおいなる武器である。

これでMデムーロとは3戦3勝の好相性だが、秋のJBCスプリントではどうなるのであろうか。今年の2月から7戦使ってきたから、ちょうどいい夏休みに入るはず。秋にまたそのスピードあふれる姿をみせて貰おう…か。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。