ヴィブロス、秋の淀でまずは1冠!姉の無念を晴らす仕事

ヴィブロス

16年10/16(日)4回京都5日目11R 第21回秋華賞(G1)(芝2000m)

  • ヴィブロス
  • (牝3、栗東・友道厩舎)
  • 父:ディープインパクト
  • 母:ハルーワスウィート
  • 母父:Machiavellian

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桜花賞馬ジュエラーはいるが、オークス馬シンハライトは、戦列を離れてしまった。今年から昇格した紫苑Sを勝ったオークス3着馬のビッシュが1番人気。そのレースで多大なる不利を受けながらも2着したヴィブロス が、見事に戴冠をした。道中は馬群中団の外めで待ち、直線でもしっかりと伸びて最後は半馬身のだったが、着差以上の強さで充実の秋とした。ビッシュはその後ろで構えていたが、直線入口からまったく反応もせず。初の長距離輸送が応えたのか、思わぬ敗退をした。女の戦いはまだまだ続くのである…。

風がけっこうある淀競馬場。だが爽やかな気候である。例のごとく、ひとつ前のレースを見終わったら即、パドックのいつも見るスポットへ直行。すでに周回している馬を見る。牝馬だけに大人しい周回だが、1頭だけ列を乱す馬がいる。ワンダーピルエット、エンパイアメーカーの子供だ。時折、立ち上がろうとまでする。パドックの中で愛馬を背景に記念写真を撮ろうとしているオーナーサイドの人達が、気にするほどのうるささだ。
ヴィブロス、ビッシュは大人しく賢く廻っている。ともに410キロ台の馬体。上から見ているだけに、特に腰骨の細さが目につく。ヴィブロスは尖って見えるぐらいだが、こんな時は走ると言うことを身をもって知っている。嫌ってほど、何度もやられた経験がある。何せ、紫苑Sのビデオを見ると、この馬の強さが判る。普通の馬なら来れない位置になった。そこからあそこまで迫る脚。まして今回はホームである。これでビッシュに先んじられるのなら力の違いなんだろうと、推測が出来る。

返し馬は人の頭の後ろから垣間見る程度で、詳しくは見れない。何せ、人が多い。そしてスタンドで見ていても、現場に着くまでに相当の時間がかかると気がつく。ならばと、ウイナーズサークルあたりの、いつもの観戦スポットへと移動する。スタンドを見上げると人、人、人なんである。有難いことである。

そしてスタートだ。まずはレッドアヴァンセを見る。普通に出てくれてほっとする。そこからが競馬なのである。パールコードが好発だった。デンコウアンジュが、やや遅れ気味の出だ。ヴィブロスがすっと前に出る。ビッシュはと確認をする。コロコスミアが先手を取って行く。1コーナー入るまでは、パールコードとか掛かり気味の馬が多い。カーブを廻って落ち着くのだが、2コーナーに入るまでにエンジェルフェイスが頭を上げて、手綱を引くシーンがあった。

3Fを過ぎるあたりで先行集団が切れる中団、前から2、3馬身空いたところにヴィブロス、内に並ぶ様にジュエラー、その真後ろにミエノサクシード、フロンテアクイーン、レッドアヴァンセが固まっている。ビッシュはまだこの後ろで、後ろに2頭しかいない。さすがにこの位置では後ろ過ぎやしないかと思う。
前で動きが出る。前半からやや掛かり気味での行きっぷりだったが、カイザーバルが前の群団の後ろ、8頭目ぐらいにいたのが前へ前へと上がって行く。鞍上の四位Jが手綱を抑えているのに、馬が行きたがっている感じである。
1000mを通過するあたりで、前と後ろの馬群の切れ目がなくなり、縦長でもだいぶ縮まっていく。ヴィブロスが前との差を詰めていく。ビッシュも馬の中から外へ出して、追撃開始か。

坂の下り、ラスト800mを前にして、ヴイブロスのすぐ後ろにビッシュがいる。レッドアヴァンセもジュエラーもすぐ傍にいる。ここらが絶好のポジションなんであるのが判る。ミエノサクシードがすぐ後ろにいる。流れは平均より遅いのだろうが内廻りの2000、差しが決まる可能性が高い。そしてクロコスミアを先頭とする馬群が、4コーナーへと近づいていく。まだ各馬、手応えが十分である。
カーブを廻ってすべての馬が見える。ヴィブロスを中心に見ている自分がいる。その前にいるパールコードの手応えが、やけにいい。クロコスミアが、まだリードを2馬身の先頭。カイザーバルが外から早めに追いかけてくる。その後ろのパールコードもエンジン全開である。 ラスト200mを過ぎた。カイザーバルが前を捕らえる勢いだが、その外のパールコードの伸びが勝りそうだ。しかしヴィブロスの脚がそれらを全て呑み込んでいく。レッドアヴァンセはヴィブロスの内から脚を伸ばしていくが、思う様に伸びない。ビッシュはそのレッドアヴァンセから遠のいていく脚色である。

パールコードが、少し外へヨレた様だ。そのアオリで、ヴィブロスも一瞬だけ伸びが澱む時があったが、そこからの伸びは目を見張るもの。福永Jの左ステッキが2発、3発と飛んだ後は、もう自らの伸びに託した鞍上。全身を大きく使ったストライドで、ゴール板を先頭で駆け抜けていった。
カイザーバルが内で粘っていたが、パールコードが前に出ての2着。ジュエラーも内を鋭く伸びて来ていたが4着まで。レッドアヴァンセはそこから少し離れた5着。ビッシュはその少し後ろの外めだった。

中京の500万下から再出発のヴィブロス。そこを快勝しての紫苑Sで、あの不利があっての2着。おそらく、鞍上はあの結果で相当なる自信を持ったに違いない。まともに走れればビッシュには負けないと。
姉、ヴィルシーナがジェンテイルドンナの3冠の全てを2着で、3歳時を終えた。古馬になってG1.2勝の成長を見せた姉。しかし時代が悪かったとしか言いようのない、スーパーウーマンがいた。
体は小さいが、根性娘のヴィブロス。これからまだまだいい仕事をしそうな予感をさせる馬、競馬内容であった。友道厩舎から目が離せない、そんな週でもありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。