雄たけびのゴール!ミルコとクイーンズリングが女王杯初勝利!!【平林雅芳の目】

クイーンズリング

16年11/13(日)5回京都4日目11R 第41回エリザベス女王杯(G1)(芝外2200m)

  • クイーンズリング
  • (牝4、栗東・吉村厩舎)
  • 父:マンハッタンカフェ
  • 母:アクアリング
  • 母父:Anabaa

エリザベス女王杯(の結果・払戻金はコチラ⇒

気持ちがいいほどの小春日和の京都競馬場。いつもより女性ファンが多いスタンドが見つめる中でのエリザベス女王杯。1番人気のマリアライトは1コーナー過ぎに外へ弾かれる様な動き、思わぬ不利を受けた様だ。ミッキークイーンの真後ろで進めたクイーンズリングが、先に抜け出したルメールJ騎乗のシングウィズジョイに最後のひと伸びで追いつき差し切った。ゴール板を過ぎる時に、ミルコ・デムーロJの雄たけびが聞こえた…。

ウイナーズサークルそばのいつものポイントで観戦した。スタートから目の前を通って行く各馬のポジションを頭に入れる。最初のカーブから次のカーブに入るまでに、馬群から弾かれる様な横の動きをする馬を観た。キャロットの勝負服の様な気がした。向こう正面に入って先頭を行くプリメラアスール、2番手ながら後続とはまだ差をつけているメイショウマンボ。まだ誰も動かない。ミッキークイーンをずーっと中心に見ていた。3コーナーからの下り、いい感じのミッキークイーン。その前後ろに注目している馬がいっぱい。ミッキークイーンの前を行くマキシマムドパリも、手応えはまだ残っている。4コーナー手前でミッキークイーンが外へ出すのだと判る。

4コーナーの入りで、ミッキークイーンに蓋をする様にシャルール。誰も、はいどうぞとは開けてはくれない。
直線に入ってきた。ミッキークイーンを中心に見ているから、内の後ろから来ているクイーンズリングの勢いも見える。だが浜中Jもそこは踏ん張って外へ出さない様にする。前はルメールJのシングウィズジョイがいいタイミングで出て行った。完全に逃げ切り態勢だ。パールコードとの間が開いて、そこへ外をあきらめたクイーンズリングが入ってきた。でも先頭とは少し時間があり、間に合わないかも知れない。ところがそこからの伸びが強烈だった。MデムーロJのステッキが入って、グーンと伸びだす。シングウィズジョイももうそこがゴールだ。だがクイーンズリングの勢いの方が勝りだしたのが判った。その時である、ステッキを収めたMデムーロJの声が聞こえた。『◎〇▲△☆×?』と、何を叫んだのかは判らないが、きっとあれは雄たけびだったに違いない。

一度使ったクイーンズリングか、稽古で11秒台と休み明けながら動けているミッキークイーンか迷うところだった。クイーズリングの前走がやけに強いと、府中で目の前で感じたものだった。昨年のこのレースでの不利も承知していた。それでもミッキークイーンを選択してしまった。
マリアライトは気の毒としか言いようがない。検量室では蛯名Jのかなり尖った声が聞こえていた。武豊Jに訊くと『誰が悪いとかでなく、外から少し入ってきたのと前が遅くなったのが一緒になったんだ…』と説明してくれた。PVを見ると、落馬寸前のマリアライトだった。プロレタリアトもそのアオリを食って外へ飛んでいった。シングウィズジョイのルメールJが、絶好の4番手のインで脚を貯めていいタイミングで出て行った。大外枠のパールコードも十分な内容だった。
ミッキークイーンは、もっとスムーズに4コーナーをさばけて先に出せていたら違っていただろう。だがそうもいかないのが現実。そうそうRムーアJのタッチングスピーチ。最後は脚を使って来ていたが、あの位置では無理。宝塚記念のおりに感じた硬さが、抜けてなかった様だ。

それにつけても、4コーナーでのクイーンズリングの脚の使い方である。インコースで脚を貯めていたにしろ、一気にカーブで前との差を詰めてくる脚の速さよ。そして外へ出しかけて防御にあって内へ切り替えてから、またあの脚を使う。やはり前走、府中牝馬の時に何と言う脚を使うんだと印象強かったのが、また再現された。
関係者にMデムーロJが、『馬が走りたくて走りたくて…』と語っていた言葉が耳に残っている。まさしく馬の走る気が満々だったクイーンズリング。MデムーロJが京都のG1を初勝利も知らなかったが、そんな事は一過性の問題だと感じたもの。おめでとうでした・・!


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。