ベテラン馬券師・研究員Mの重賞回顧

トピックス

3/10日(土)、阪神競馬場で行われた阪神スプリングジャンプ(4歳上、JG2・芝3900m)は、道中2番手の好位置からレースを進めた林満明騎手騎乗の4番人気スリーオペレーター(牡4、栗東・橋本寿正厩舎)が、最後の直線で逃げ粘る1番人気コウエイトライを捉えて、3/4馬身差し切り優勝した。
レースはコウエイトライが注文通りにハナにたち後続を引っぱる展開となった。
序盤の障害で、まずアグネスハットが落馬により脱落。
コウエイトライは低いながらも安定した飛越で軽快に逃げ脚を伸ばす。
襷コースに入った直後、今度は実力馬ノボーハウツーが落馬。
先頭との差を徐々に詰めていたスリーオペレーターは、最終障害で早くもコウエイトライに並ぶ勢いで上がってゆき、直線半ばで交わすと最後は3/4馬身差し切り、重賞初出走にして見事栄冠に輝いた。
優勝したスリーオペレーターは平地では未勝利の馬だったが、入障後は才覚を発揮して前走の淀ジャンプS(OP)では2着と健闘していた。
今回の勝因を考えるに、目下の勢いと状態の良さもさることながら、やはり飛越の巧さが大きなポイントとなったように思える。
このレースでは中山大障害3着馬アグネスハットと実力馬ノボーハウツーが落馬した。
当然のことではあるが、いくら実力や勢いがあっても落馬してしまえば元も子もない。
最後まで無事ゴールまで辿り着けばどの馬にも優勝するチャンスはあるのだから、騎手・馬ともにもう少し飛越技術の強化に力を入れてもらいたいものだ。

同3/10日(土)、中京競馬場で行われたファルコンS(3歳、G3・芝1200m)は、好位からレースを進めていた横山典弘騎手騎乗の2番人気アドマイヤホクト(牡3、美浦・古賀史生厩舎)が、最後の直線でインから脚を伸ばして、逃げたサクラゼウスを余裕の脚色で交し先頭でゴールを駆け抜けた。
レースは、ゲートが開くや否や主導権をめぐる激しい先頭争いから幕を開けた。
結局、二の脚を使って先頭に踊り出たサクラゼウスが引っぱる展開となり、そのまま淀みなく流れて最終コーナーを迎えた。
結果、逃げ粘るサクラゼウスに対して、好位から脚を伸ばしたサクラゼウスが2馬身の差をつけて完勝したこのレースだが、2着にもつれて上がってきたカノヤザクラが入線。
1番人気のダノンムローは後方待機の競馬で、最後の直線で大外から34.3の脚を使って猛烈に追い上げたが届かず4着に敗れた。
ここで3着までに入線した馬は全て1・2枠の内枠にいた逃げ・先行馬である。
内枠の先行馬が有利だというトラックバイアスが作用した顕著な結果だったと言えるのではなかろうか。
ダノンムローにしてももう少し内枠を引けていたのなら、もう少し違った結果が出ていたのではないかと思われ、悔やまれるところである。

3/11日(日)、中山競馬場で行われた中山牝馬S(4歳上牝、G3・芝1800m)は、後方からレースを進めた蛯名正義騎手騎乗の8番人気マイネサマンサ(牝7、栗東・中村均厩舎)が、最後の直線に向くと馬群を割って豪脚を繰り出し差し切って優勝した。
戦前、逃げが予想されたマイネサマンサは、スタート後の1コーナーで不利を受け後方からの競馬を余儀なくされた。
結局ハナにたってレースを引っぱったのはヤマニンメルベイユ。
このレースで引退を迎える、やはり先行が予想されたウイングレットもいつもとは違う後方よりのポジションでレースを進めた。
大方の予想と異なるレース展開となったこの時点で、レースは既に波乱の結末を予感させた。
各馬一団となって迎えた最後の直線、逃げ込みを図るヤマニンメルベイユを捉えに最初に動いたのはウイングレット。
しかしその後ろから逃げ・先行馬のイメージが定着しているマイネサマンサが馬群を割って猛然と追い込んできた。
ゴール前は大混戦となったが、結局脚色に勝るマイネサマンサが差し切って、1年1ヶ月ぶりの重賞勝ちに輝いた。
1番人気アサヒライジングは、直線失速して13着に惨敗。
それにしても、逃げると目されていたマイネサマンサの差し切り勝ちには、度肝を抜かれた競馬ファンも多かったことだろう。
ウイングレットのみならずこのマイネサマンサも、陣営は当初ここを引退レースと考えていたようだが、この勝利によってヴィクトリアマイルまで引退を先送りにするかもしれないとの事。潔くここで引退するウイングレットともう一花を目論むマイネサマンサ。
果たしてどちらの選択が正しいのだろうか?

同3/11日(日)、中山競馬場で行われた中山牝馬S(4歳上牝、G3・芝1800m)は、終始好位からレースを進めた、圧倒的1番人気に支持された武豊騎手騎乗のアストンマーチャン(牝3、栗東・石坂正厩舎)が、楽な手応えで直線抜け出し快勝した。
好スタートを切ったアストンマーチャンだったが、鞍上の武豊騎手は敢えて5番手まで下げて好位で流れに乗った。
虎視眈々と抜け出すタイミングを図っていた同馬だが、最終コーナーを回ってアマノチェリーランが先頭に出たところでいよいよ始動。
エンジンがかかると図ったように1完歩ずつアマノチェリーランを追い詰め、後は持ったままの抜群の手応えで交わし、ゴール前、最後は流す余裕を見せ2着に2.1/2馬身の差をつけ完勝。着差以上の完勝だったと言えよう。
これで大一番、桜花賞への視界は良好だ。
本番では昨年末に惜敗したウオッカや素質馬ダイワスカーレットなど強豪馬たちと激突するが、目下の調子を持って本番でも今回のような強い競馬をできれば、載冠の夢も大きく膨らむにちがいない。