スタート、追い出し、伸びと今日は完璧 ダイアナヘイローだ!【平林雅芳の目】

ダイアナヘイローが4連勝で重賞初制覇

17年8/20(日)2回小倉8日目11R 第52回北九州記念(G3)(芝1200m)

  • ダイアナヘイロー
  • (牝4、栗東・福島信厩舎)
  • 父:キングヘイロー
  • 母:ヤマカツセイレーン
  • 母父:グラスワンダー

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昨年の覇者、バクシンテイオーが56キロと2キロ増。まして昨年は7月に使ってきていたが、今年は3月の高松宮記念からぶっつけ。エイシンブルズアイも重賞勝ち馬だが、かなり前の話でそんなに目立つ実績の馬がいない。昇り馬の戦いとなりそうな夏の小倉名物のスピード比べ。
決めたのは、先手でも取れそうなほどに好発を決めたダイアナヘイロー。内から主張のアクティブミノルを行かせての2番手。後続を1馬身と離してプレッシャーもかけられず、絶好位を進み4コーナーを廻っても1ハロン少し手前から早めに追い出して先頭に立ち、そのまま押し切る危なげない形を見せての完勝。
ここにきて脚質に幅が出てきてはいたが、やっと重賞で完成した。福島調教師と武豊Jのコンビは、ちょうど20年前の再現。小倉にはスキッとした青空が広がっていた…。

朝から武豊Jの乗っている馬が、思いのほか着順が悪い。極めつけは5Rの新馬戦で、TV観戦している当方にはヒヤヒヤの裁決待ち時間であった。直線で物見をして、外へ流れて後ろの進路を邪魔してしまった。反対からステッキを入れていたし、前の馬も外へ流れて来ていたから…とヤキモキしていたが、最悪の結末は避けられてホッとしていた。
ただその後も、道中で内にもたれてばかりいるチカノワールとか、ゲートを出ていかないイモータルと、《何でこうなるの??》ばかりのレース内容。だからメインの時はすっかりと疲れてしまっていた。
パドックでの雰囲気を見ても、ファインニードルの気配がいいな~とか、もうテンションは下がりっぱなし。だがファンファーレが鳴ると一気に応援に廻るのはいつものこと。ゲートを真っ先に出てくれたダイアナヘイローである。

アクティブミノルが内から行く。前回のアイビスサマーダッシュでは、あの舞台設定で最後に伸びない馬だから、カーブが2回あって息が入ろうとも終いは伸びないと、変な確信をしていた。しかし軽快に逃げるアクティブミノル。それもそうだ、前半3Fを32.8と見た目以上に数字は速いものであった。それを3Fのハロン手前から、ダイアナヘイローを前へプレッシャーをかけに行く武豊Jの強気な騎乗ぶり。後でPVを見ると、スタートから内の出方を見ているシーンである。そしてだいぶ外の方を選んで走っている前半である。
その3F手前では、外で前へとうながして、少しずつ内へと入って来ている。外でラインスピリットがいいスタートで3番手。それもダイアナヘイローの直ぐ後ろを位置して行っている。その間にアルティマブラッドとファインニードルがいて、ナリタスターワンが虎視眈々と傍にいるのが確認できた。

このナリタスターワンの道中の役割は、実に大きかったと思える。4角手前では先に動いてちょうど、MデムーロJが行きそうな進路を塞いでいく。直線に入ってもナリタスターワンは伸びて前を追って行くが、その外にキングハートが伸びてきており、ファインニードルが最後まで進路を確保できないままに終わっている。コメントに書いてあるとおりのシーンであった。
早めに追い出したダイアナヘイローの武豊J。左ステッキを2,3発入れて、最後は右に持ち替えて最後の締め。ナリタスターワンの差しが強烈だっただけに、前半での脚の貯めが利いた感じであった。そしてラインスピリットも、スンナリと流れるとこうやって走れる。キングハートは函館時に稽古の動きがやけにいいな~と目の当りにして思った馬だが、今回は一旦美浦へ帰ってからの大移動。眼に見えない疲れもあったのかも。パドックでは前回ほどの印象は受けなかった。

後刻に、武豊Jから折り返しの電話が入る。『53キロも良かった。少し休ますと言っていたからね…』であった。スプリントSは使わないのだろうかと、直ぐに次走への想いが出てしまうのは職業病であろうか。
とりあえず、今回の夏の小倉でのテーマは“ダイアナヘイローで北九州記念を勝つ”、それが達成できたのが何よりだった。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。