アサクサゲンキ、余力を残したままで快勝!【平林雅芳の目】

武豊騎手を背に快勝したアサクサゲンキ

17年9/3(日)2回小倉12日目11R 第37回小倉2歳S(G3)(芝1200m)

  • アサクサゲンキ
  • (牡2、栗東・音無厩舎)
  • 父:Stormy Atlantic
  • 母:Amelia
  • 母父:Dixieland Band

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前半3ハロンを33.3で行ったのは、藤田菜七子騎乗のフローラルシトラス。それをピタっと並び気味で行ったのが、1番人気のモズスーパーフレアー。4コーナー手前ではモズスーパーフレアーは内を振り切って前に出て行ったが、その外へ僚馬のアサクサゲンキが付いてきており、むしろ最後のカーブを廻る時はアサクサゲンキの勢いが勝っていたぐらい。
直線もそのまま先頭に立って押し切ったアサクサゲンキ。アイアンクローの追撃を後目に、最後は少し余裕さえもあった手応えに見えた。

今年は2勝馬のいない顔ぶれ。新馬戦デビュー時期が早まって2年目。数多くの勝ち馬がいるだけに、例年のフルゲートに満たないことはないとは思ってはいたが、逆に1勝馬どうしの戦いとなるとは思いもつかなかった。
勝ちっぷりの良さから、外国産馬モズスーパーフレアーが抜けている存在だと思われていた。実際に稽古も、同じ外国産馬どうしの併せ馬でも好タイムで楽にあがったモズスーパーフレアー。問題があるとしたら、前半から厳しい流れになって揉まれる競馬にでもなった時かと推測していた。中1週のローテーションながらビシっと併せ馬で追い切れる体調の良さ。牝馬でもそれだけカイバ喰いの心配もないのだろうとも思っていた。相手探しの一戦かと思うのが、大方の見方であった。

472キロと、プラス体重で臨んだモズスーパーフレアー。パドックでの雰囲気もTV画面での確認ではあるが、別段入れ込むこともないし、足さばきの硬さなんてものも判らない。中心だなと再確認をしていたものであった。
そして2番人気になっていたヴァイザー。デビュー戦でそれほどの印象を受けたものでもない。そこまで支持されていいのだろうかと半信半疑で見ていたものでもある。

ゲートが開いてすぐに、和田Jのスーサンドンが1頭だけ逆噴射の様に馬群から消え去っていく。PVを縦で見ても格別何もなく見えたのだが、実際にはすぐに遅れてしまっていた。ただ単にダッシュがつかなかったのかと思える。外でアサクサゲンキの出がいい。モズスーパーフレアーは最初の1完歩目は遅くて、少ししてから馬群の前へと出た。内をチラっと見た松若J。その時には藤田菜七子のフローラルシトラスが前に出ていた。そのまま行かせて2番手、モズスーパーフレアーは、まずは理想の2番手を取ったと思えた。

3番手にいたオーロスターキスを交わして、アサクサゲンキが外から3番手に上がる。その外をジュンドリームが追走する。馬場が悪くなってきているせいか、馬群が密集しないで、横の並びでも間隔を開けている並びで混まない。先行集団が7頭だがそれも前が3頭、次の列が4頭でけっこうバラけていて、プレッシャーはかかっていない様に見受ける。
逃げるフローラルシトラスを、3ハロン過ぎのラスト400の標識で交わして前へ出ようとするモズスーパーフレアー。少し外へと張ってしまったのか、外へ来ていたアサクサゲンキもそのアオリで外へと流れる。そこは最初から外目を狙っていた武豊Jの動きでもあったのか、そのアクションのまま先頭に立ち気味となっていくアサクサゲンキ。内のモズスーパーフレアーがまだ追いだしていないうちに、武豊Jの左ステッキが飛ぶ。1発、2発、3発と続き、計8発のステッキが入った後は両手綱で押してのゴールであった。

2着は、4コーナーでアサクサゲンキの少し後ろまで来ていたアイアンクローが脚を伸ばして確保。そして、その内をバーニングペスカがデビュー戦とはうって変わった差しの戦法で末脚を伸ばしてきて3着。4着が外から猛然と差してきたヴァイザー。この馬は4コーナー入口で外からフラついてきたナムラアッパレに一旦は弾き飛ばされて、馬体が大きくヨレる不利。その後も同じナムラアッパレからのプレッシャーで、だいぶロスタイムを受けてしまっていた。まともに進路を確保していたら、どれだけ伸びていたか判らないほど。これは悔やまれる一戦だったかと思えるもの。

火曜の朝。坂路監視小屋で音無師にまずは勝利のお礼を言う。そして話題は音無師の小倉重賞完全制覇に触れる。『そんなものがあるのも知らなかった…』とまずは驚きを語る。『ジョッキーでも、そうはいないんじゃないか?』と言い続けて『春の小倉大賞典がローカル競馬だけに難しいかも知れないな~』と。『調教師は吉永猛さん、服部正利さん、そして橋口弘次郎先生だよ』と先輩に並んだのが嬉しそうである。 だが話がモズスーパーフレアーに触れるとかなり手厳しく、『松若もあれだけ出して行ってはダメだ』と、愛弟子の騎乗ぶりに辛辣である。『33秒台を掛かり気味に行っては、もたないよ。せっかくのチャンスだから、少し控えるぐらいの気持ちで乗らないと…』であった。申し訳ないような、何とも言えない気持ちで聞いていた。

そして『アサクサゲンキもモズスーパーフレアーもこの後、放牧に出します』であり、アサクサゲンキは『京王杯2歳S(11月4日東京競馬・初日)に行きます。そして朝日杯2歳Sだね』との青写真を告げてくれた。その後は韓国でのコーリアカップについての話となり、今の国際情勢からジョッキー、関係者などの渡韓の日がちょっと心配だねとの話となった。
まずは嬉しい2歳の重賞を勝った嬉しさと、今後の情報をお聞きしての今週のスタートとなりました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。