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この馬に注目【弥生賞】エイシンアポロン
2010/3/2(火)
右肩上がりに勝ち鞍を伸ばし、近3年で78勝を量産した岡田稲男厩舎。
開業8年目を迎え、さらなる飛躍の態勢に入っている。
「馬は持っている能力だけでほとんどが決まってしまうという考え方もあるかもしれないが、我々は調教の専門職なんだ。騎乗技術では負けたくないよ。いまだに悩むことばかりでも、馬にプラスになる方法を模索するのが私たちの使命。安易に妥協はせず、もっと上を目指したい」
こう話す岡田師は、叩き上げの苦労人であり、調教助手の時代にも豊富な経験を積んでいる。
かつては大沢眞厩舎のまとめ役。マーベラスサンデーやマーベラスクラウンなどを仕上げた実績もある。
こうした名馬にもウイークポイントはあり、サンデーは馬装すると腹痛を起こすほどの神経質な馬。不安を取り除くような扱いを工夫したという。
クラウンは極端な淋しがり屋だった。ジャパンCで東京競馬場へ出張したときは、レース時の誘導用に在厩している乗馬を調教やスクーリングのパートナーとして借り受けることを思い付き、熱心に交渉。特例措置を認めてもらった。これがGⅠ制覇につながったのだ。 トレーナーとなってからも、まっすぐに、精一杯の情熱を傾け続けてきた。
厩舎初の重賞ウイナーに輝いたシェーンヴァルトに続き、現3歳世代にも希望の星が登場。
大外から鮮やかな差し脚を繰り出し、京王杯2歳Sを完勝したエイシンアポロンのことである。
「ようやく理想的なレースができたのが京王杯。野路菊S(5着)では、抑える作戦が裏目に。
デイリー杯も、早めに先頭に立ちすぎたぶんの負けだったもの。狙いどおりに賞金を加算でき、価値ある1勝となったね」
2戦目の小倉(8月22日、芝1800m)を好タイムで勝ち上がり、デイリー杯2歳Sでもクビ差の2着しているように、それまでも確かな能力を示していたが、前2走でイメージを一新。朝日杯FS(2着)はローズキングダムの決め手に屈したものの、好位から長く脚を使い、3着以下に大きく水を開けている。
同馬はアメリカ産で、レースを重ねながら強さを増した〝アイアン・ホース〟、ジャイアンツコーズウェイが父。
わずか3か月間でGⅠを5連勝し、引退の舞台に選んだ初ダートのブリーダーズCクラシックでもクビ首の2着した名馬である。
母は、2歳時にアイルランドのGⅡ、デビュタントSを勝ったシルクアンドスカーレット(その父サドラーズウェルズ)。大舞台向きの底力を秘めた魅力的な血脈だ。 オーナーサイドの期待も大きく、岡山の栄進牧場で丁寧に育成が進められた。
「1歳秋に輸入された当初より、筋肉が豊富で垢抜けた馬体をしていたよ。この系統らしい奥深さもありそう。かなりのスケールが伝わってきた」
早めのデビューも視野に入れ、5月下旬には入厩。岡田師は、同馬との対話を繰り返し、精神状態の把握に努めてきた。 特に頭を悩ませたのは、使い出しのタイミングだったという。
「当時はゲートを出ようとしなかったし、乗り込み量は十分なのに、なかなかタイムが詰まらない。精神面が若く、すべきことをわかっていなかったからね。デビュー戦(8月2日の芝1800m、落馬の影響を受けて大きくふくれ、5着)は、いかにも気合い不足。それが、レースを経験したら、がらっと変わったよ。調教でも小気味よく動くようになった。ただし、次走以降は逆にかかるようになったのが課題に。王道ならば、東京スポーツ杯2歳SからラジオNIKKEI杯2歳Sに進むところだが、ずいぶん悩んで京王杯、朝日杯へと照準を定めたんだ」
距離を縮めて変貌を遂げたわけだが、折り合いに不安を残す面に配慮したレース選択が功を奏したまで。
コンパクトにまとまった骨太のつくりも、母系のサドラーズウェルズからくるものであり、オン・オフの切り替えがスムーズになったいまならば、長い距離もこなせると岡田師は見ている。年末には、ここをステップにして皐月賞へ臨むプランを固めていた。
「将来を考えて、攻め込むようなメニューを課していない段階だけに、まだ緩さも目立つ。完成されるのは、まだまだこれからだよ。ただし、本当に学習能力が高く、こちらの期待以上に成長している。もう折り合いの心配もないしね。迫力あるキャンターを見れば、スピードだけでなく、コーナー4つの中山にも対応できるスタミナやパワーも備わりつつあることは明らか」
緻密な積み重ねの効果があり、またひと皮むけた印象のエイシンアポロン。
ヴィクトワールピサの1強ムードを打ち破り、クラシックに王手をかけるのはこの馬かもしれない。
エイシンアポロン
(牡3、栗東・岡田厩舎)
父:Giant’s Causeway
母:Silk And Scarlet
母父:Sadler’s Wells
通算成績:6戦2勝
重賞勝利:09年京王杯2歳ステークス(G2)
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