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最後の最後に馬群が割れた!モズアスコットがG1制覇!!【平林雅芳の目】
2018/6/5(火)

18年6/3(日)3回東京2日目11R 第68回安田記念(G1)(芝1600m)
- モズアスコット
- (牡4、栗東・矢作厩舎)
- 父:Frankel
- 母:India
- 母父:Hennessy
レーヌミノルが飛びだし最初はゆったりの入りかと思えたが、大外のウインガニオンが一気に一番前へと行く。1000が56.8だが、これでも平均ペース。スワーヴリチャードは最内枠を意識したか、好位置で進める。サングレーザーもいつもより前め。 前半でゴチャついて位置を下げざるを得なかったのがモズアスコット。直線もなかなか前が開かない。ラスト300でスワーヴリチャードが追いだして外へ流れた瞬間に、前がカパッと開く。そこをグイグイと伸びて先に前へと出たアエロリットを交わしてゴール。ついにG1に届いたフランケルの子供、モズアスコットの勝利だった。
予報よりも暑さが増している。パドックで馬を見るのも大変。早めに切り上げて馬場入場と返し馬をみる。最高の馬見ポイントのカメラマン席。下には調教師席が見える。1コーナーへとキャンターで行く馬を眺めている。 アエロリットの大きなフットワークがいい。牝馬3頭だが、その中でも一番いいのではないか。ヴィクトリア・マイルからのローテーでやはり地の利、関東馬にはそんなに影響がないのかもと思ったりしていた。サングレーザーが、いつにも増してつる首で気合満面なのが見えた。リスグラシューはやはり細目の体である。いつもの事だが、いつになったら幅が出てくるのだろうかと。
けっこうテラスにも人が多い。やはり関東圏の入場者は多いと、ファンファーレに共鳴して歓声を上げるのを眺めていた。 ゲートが開いた。サトノアレスが置かれた。ペルシアンナイトもあまりダッシュがない。レーヌミノルが前に単騎でいる。アエロリットが内から続きだしたあたりで、ウインガニオンが押して押して前に出て行った。スワーヴリチャードもけっこう前にいる。そのすぐ後ろにペルシアンナイトも追い上げて続いている。 そこらがかなり馬群が密集して、3コーナーに入っていくあたりで4番手グループがかなりゴチャつく。すぐ外にリアルスティール、さらに外にサングレーザーと前にペルシアンナイト、左のラチ沿いにダッシングブレイズと囲まれたモズアスコット。ルメール騎手が引かざるを得なかった様で1馬身と差を置いた。
4コーナーへウインガニオンが先頭で入ってくる。2番手グループの内のアエロリットもその真後ろのスワーヴリチャードも、持ったままの手応えが判る。 全体の馬が見える直線入口、外を廻るサングレーザーとその後ろからリスグラシュー。しかし遠心力の関係で、内が断然に有利に廻ってこれる。あっという間にモズアスコットはスワーヴリチャードの真後ろについた。インからインで距離をあっと言う間に詰めてきている。 ラスト400、まだウインガニオンが先頭。レーヌミノルの外とキャンベルジュニアの間が開いた。そこへスワーヴリチャードが入ってきた。レーヌミノルが一瞬だけ外へ流れた。同じく外へと流れるスワーヴリチャード。 Mデムーロ騎手が手綱を絞って追いだしにかかる瞬間に、その後を追う様に来ていたモズアスコットの眼の前に道が出来た。 ウインガニオンを交わして逃げ込まんとするアエロリット。外へ流れながらも右ステッキで矯正しながら追うMデムーロ騎手のスワーヴリチャード。大きく開いたその間を、モズアスコットがルメール騎手の右ステッキに呼応して、一完歩ずつしっかりと前へと進んで行った。
席で見ていると、大外を伸びて来ていたサトノアレスの勢いが一番かと感じるものだった。だがゴールに近づくにつれ内の馬達と同じぐらいの脚色になり、スワーヴリチャードを捕まえきれなかった。すぐ後ろをサングレーザーが続いたが、前回の伸び具合とは違って流れ込んだと言った印象だった。
すぐにエレベータで下りる。引き上げてきた馬、サトノアレスがちょうど傍を通る時だったので蛯名騎手に声をかけた。『まとめて面倒みるのかと思う脚色だったね~』と。それに『いや~、やったかと思う伸び具合だったけどね~』とまだ興奮状態の馬を制御しながら過ぎ去った。武豊騎手も引き上げて鞍を抱いて検量室に入る時にひと言。『時計が速いと難しいのかも・・』とであった。
今回の出走において、1週前の段階ではモズアスコットには順番が廻ってこない賞金順であった。ただそれを待つと言う受け身の仕事でなく、出走権を確保するために勝ちに出たモズアスコット。安土城Sで勝って堂々とここへと矢作師は動いた。ところが最内枠でダッシュがつかずに後ろからの競馬となって、クビ差届かず。順位はそのままで、今週を迎えた。水曜朝に師は『木曜の出馬投票まで出走を待ちます』との言葉だった。それが藤沢和厩舎が多数自重して、フルゲートに満たない16頭。モズアスコットが楽々で滑り込んだ。ルメール騎手が乗れないのならと判断したのかも知れない。 連闘でG1出走。過去にもなかった訳ではない。ただ前回が勝つはずであろうと思っていた大勢のファンにしてみれば、肩透かしを食らった感じ。9番人気と思いがけない低い支持となった。
道中も最初のカーブの3コーナーあたりで、前がやや窮屈となり下げざるを得なかったモズアスコットとルメール騎手。そして極めつけは直線に入ってから、馬群のまっただ中を選らんだルメール騎手。前はビッシリと馬が重なる。どこにも隙間もなくただただ開くのを待っていた。少し外目にいたペルシアンナイトも同じ様に進路を探していた。 ラスト200ぐらいで、前にいたスワーヴリチャードが追い出しに入った。その瞬間にスタンドの方へと流れて行く。 眼の前で大きく視界が広がったモズアスコット。そこからあっという間に溜まっていた脚を解放し、真っ先にゴールインしようとしていたアエロリットを交わしたところがゴールであった。ペルシアンナイトは最後まで前が開かずに仕掛けられず、態勢が決した後にやっと追えていたのがPVで見えた。
火曜の朝に監視小屋に出向いたが、矢作師の姿はなし。その矢作師の水曜朝の言葉が耳に残っている。 『7分の造りで臨んだからね~』と1週前の安土城Sの戦いのことを語ってくれていた。ダメージが少なかったと言うことだろう。マイルCSではルメール騎手にしては早めの仕掛けでサングレーザーに差されたのも思いだす。後で全てが思い出されてくる。 アエロリット、同じヴィクトリアMからリスグラシューとレーヌミノルが使ってきているが、関東馬で輸送が少ないのが違うし、そもそもがマイルに強い馬、しかも良馬場。 こうやって振り返るとパーツ、パーツが組みあってひとつの競馬が良く判る。ただそれがレースをやる前にはなかなか見えないのが難儀。競馬の魔力、魅力をまた思い知った今回の安田記念でありました……。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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