【振り返れば馬券になる!】待たされたことが理由!?多くの騎手が口を揃えた敗因とは…

ひたすら寒い週末であった。12月も2週目。日曜の午前中、おもむろに見た携帯電話の温度計は一桁表示。末端冷え症、寒がりの筆者としては、つい室内にこもっていたくなる気温だ。そんな中山競馬場だが、最終レース終了後も多くのファンが競馬場内に残っていた。そう、場内では香港国際競走のテレビ中継も行われていたのである。

結論から書けば4競走中、最高成績は香港ヴァーズに出走したリスグラシューと、香港マイルに出走したヴィブロス、香港カップのディアドラの2着。地元・香港勢が4競走全て制覇するという結果に終わった。不運だったのは香港スプリントに出走した短距離王ファインニードル。レース後に騎乗した川田将雅騎手が敗因として「ゲートで待たされてしまった」と述べており、タラレバだが、全馬枠入りがスムーズであれば結果は変わっていたかもしれない。


同じ出来事が、香港スプリントから遡ること20分、中山競馬場でも発生していた。中山11R・カペラSでノボバカラがゲートに入ろうとせず、大外枠のヒカリブランデー以外の14頭がゲートの中で3分近く待たされてしまったのである。狭いゲートの中で長時間待たされた影響は大きく、レース後に敗因として挙げたジョッキーも少なくなかった。

出脚が鈍く9着に敗れたキングズガード(牡7、栗東・寺島厩舎)の内田博幸騎手も、「ゲートがなかなか開かず、馬が落ち着き過ぎてしまいましたね」と切り出す。ちなみに香港スプリントのファインニードル・川田騎手も同じニュアンスのコメントを残している。競馬が生き物相手に行われている競技だと改めて感じさせられる場面だ。続けて内田騎手は「直線に向くまでの反応は悪くなかったんです。ただ直線に入って、ピュっと脚を使って止まってしまいました。坂が堪えたのかもしれないです」と初めての中山コースも敗因の一つに挙げる。キングズガード自身は直線に急坂のある中京のプロキオンSなどを制しているが、コース形状がフィットしていなかったのかもしれない。元々左回りでは乗り難しいところのある馬で、右回り、かつ平坦の京都コースなどに替われば結果は変わってくる可能性はある。

カペラSを制したのは競馬ラボのコラムでもお馴染み、柴田大知騎手が騎乗するコパノキッキング(セ3、栗東・村山厩舎)だった。「ゲートの中で落ち着かせることに気を付けましたが、落ち着きすぎて後ろからになってしまいました」と言うように、後方からになってしまったが、4コーナー13番手から上がり3F34.9という末脚を駆使して他馬をまとめて差し切った。

柴田大騎手にとっては16年12月のチャレンジC以来、2年ぶりの重賞制覇となる。2年ぶりのタイトルを奪取しても、まずは「凄い馬です。僕は跨っていただけです」と馬を称えることを忘れない。競馬ラボにはレース後のコメントもトピックス速報に載るが、柴田大騎手のコメントはほとんど馬を称えるところから始まる。そんな部分に注目して見てみるのもまた、面白いかもしれない。


カペラSでコパノキッキングが、まるでブロードアピールのような追い込みを見せてから約40分ほど。興奮冷めやらぬ中山競馬場で行われた12R・3歳上1000万。1~9着が0.5秒差という大接戦となった中、5着に食い込んだのが単勝315.8倍の15番人気だったスタークニナガ(牡3、招待・田中厩舎)だった。この馬、所属は道営ホッカイドウ競馬だが、伯父に天皇賞馬サクラローレルがおり、中央馬に負けない良血の持ち主である。騎乗したのは同じくホッカイドウ競馬所属、期待の新星・4年目の山本咲希到(さきと)騎手。今年8月の札幌競馬以来の中央競馬参戦だった。

山本騎手は検量室に戻ってきた際、「中央競馬の芝1200mでも行きっぷりが良くて、いいポジションが取れました。4コーナーの手応えも良かったです。直線で一か八か内に行ったのですが、スペースがあればもっと際どかったですね。馬はよく頑張ってくれました」と悔しそうにレースを振り返る。パトロールビデオを見ると、直線入口で近くにいた2着馬ショウナンマッシブは前が空いたものの、スタークニナガは最後前が壁になり、数秒追えない不利を受けてしまった。前が開いていれば3着以内はほぼ確実だったかもしれない。

ただ山本騎手の悔しさは、それだけではなかった。「この馬は今年で認定勝ちの権利がなくなるので……特指がなくなるのが痛いです……」そう、スタークニナガは今年でJRAの認定レースの効力を失うのだ。つまりあと2週間で今回の『3歳上1000万(特指)』というような、レース名の後に特指とついているレースを使えなくなってしまう。来年以降に中央に挑戦するには、オープン競走か重賞のみ挑戦可能で、自己条件である今回の1000万条件には挑戦できなくなるのだ。ハードルは一気に高くなる。

制度上仕方のない側面はあるが、北海道・門別から冬の中山まで果敢に挑戦する彼のような素質馬が挑戦の選択肢が狭まってしまうことは、中央、地方競馬両方にとって損失と言えることだろう。今年3月に中山の3歳500万に遠征し6着となった際、騎乗した松岡正海騎手が「いい馬。1000万条件でも十分勝ち負けになる」と言うほど、高く素質を評価されている同馬。この時3着だったのは現オープン馬のアルーシャで、着差はわずか0.4秒差であった。来年はどうやら道営に所属しながら中央競馬の重賞に参戦する模様。同じく道営所属の3歳馬にジャパンCで7着に食い込みファンをアッと言わせたハッピーグリンがおり、2頭で中央競馬に旋風を巻き起こしてもらいたい。

レース後、ジョッキーたちから発されるコメントは様々である。
「うまくいった」
「調子が良かった」
「馬が強かった」
etc…

もちろんこれらのコメントも非常に重要ではあるのだが、よりオイシイのは、負けたジョッキーのコメントだろう。検量室に引き上げてくるジョッキーの表情はそれぞれ違う。悔しそうな表情を浮かべて戻ってくるジョッキーも多い。道中の不利、自身のミス、理由は様々だが、彼らのコメントこそ、次に繋がる。このコーナーでは現場にいたからこそ知りえる敗因、そしてジョッキーの表情などを取り上げながら、次走以降妙味のある馬を挙げていきたい。