【デルマーの今】後記 リメイクの挑戦を振り返って


——今回の遠征を振り返って。

松田助手(以下、松):過去最多の19頭もの日本馬がブリーダーズカップ開催に挑戦しましたが、改めてこのチャレンジの難しさを痛感しました。

ブリーダーズカップ主催者側の意識の高さ、「ここは世界中の優れた馬とホースマンが戦う場所なんだ」という誇りのようなものを感じました。「優れていない馬は出走させられない」という考えの強さからか、毎日行われる歩様検査をはじめ主催者スタッフから向けられる視線も厳しく、僕にとってはとてもアウェイ感のある環境でした。

残念ながらオーサムリザルトがレース当日の歩様検査によって出走取消となってしまいましたし、勝負以前に、まず無事に出走させることが難しい、という感じでした。本当に「アメリカでも簡単に勝てるんじゃないか」なんて甘く考えていたら、大やけどしますよ。

今年日本馬が苦戦したことで、3年前に矢作厩舎がブリーダーズカップで2勝したのがいかに凄いか、改めてみんなが分かったんじゃないかと思います。

——リメイクとの挑戦。

松:レースの結果については、残念のひと言です。ただ僕が言いたいのは、リメイクはベストを尽くしてくれたということです。

人間の言葉は喋れませんが、僕が伝えようとしていることを一生懸命感じ取ろうとしてくれる。追い切りで僕が求めるものに対して、懸命に応えようとしてくれる。サウジ、ドバイ、韓国、日本、世界中どこでも自分の仕事を全うするプロフェッショナルホースです。オーナーに感謝したいですね。

——遠征で掴んだものは。

松:厳しい環境だったり、アメリカの馬のスピードに圧倒されたり、分厚い壁にぶつかりましたが、今は「次は調整方法をこう変えてみよう」「こんな調整方法も試してみよう」など、新しいアイデアが次々に湧いています。こういう新しい発見やチャンスが、遠征を通じて掴めたものかもしれません。これからも僕たちの挑戦は続きますし、今回の経験を生かしてリメイクと共に歩んでいきます。

——海外遠征コラムの意義。

松:最初はコロナ禍に海外遠征をすることになって「コロナで閉塞感を感じている競馬ファンに、普段あまり見られない海外競馬の写真を紹介できれば」という気持ちで始めました。

ありがたいことに好評と聞いていますが、回を重ねるごとに「意外と厩舎関係者が読んでくれている」と分かりました。「海外の厩舎の造りはどんな感じなのか?」「馬場はどうか?」「生活スケジュールは?」などなど、多岐に渡って興味を持ってくれていることが伝わってきましたし「僕の経験が日本の厩舎関係者の役に立ってくれるなら」という思いも出てきました。

今後、海外で日本馬が勝つたびに「俺のおかげやぞ」と言いたいですね(笑)。

——競馬ラボユーザーにメッセージを。

松:アメリカは僕にとって憧れの地、憧れの競馬場です。だからどうしても勝ちたいと思ってました。しかし「憧れてたらアカンねんな」と、競馬の後に気づきました。なので僕にはまだ伸びしろもあるし、また挑戦させてもらえるチャンスがあればこの経験を活かしたいと思います。

ドジャースの大谷選手じゃないけど、競馬が終わるまではアメリカへの憧れを捨て、勝ちにこだわって行きたい。憧れてるだけなら憧れで終わってしまう。「憧れを捨てないと勝てない」と強く思った今回のレースでした。