研究員ヤマノの重賞回顧

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10/20日(土)、東京競馬場で行われた富士S(3歳上、G3・芝1600m)は、マイネルシーガル(牡3、美浦・国枝栄厩舎)が好位の内目から抜け出すと、マイケルバローズ、トウショウカレッジ、エアシェイディら古馬勢の猛襲をアタマ差凌いで重賞初制覇を成し遂げた。

マイネルシーガルは、春の重賞戦線では春のG1 2戦では主役を張るには一歩及ばなかった存在だ。
距離適性は別として、主戦級は日曜の菊花賞に駒を進めているわけで、そんな中で行なわれる古馬相手の重賞は、ある意味で、“レベルが低い”と揶揄される今年の3歳牡馬の真価が問われる一戦だったかのようにも思えた。
この富士Sでは、条件が現行のものになってからは、3歳馬は歯が立たず、今まで連にすら来たことがなかった。
そこで古馬を相手に気を吐いた、春の時点では準主役級に甘んじたマイネルシーガルの力走は、何より価値が高いだろう。
レベルが低いと言われている、牝馬やダート馬以外の3歳馬にとって、この勝利は汚名返上の大きな足ががりになるかもしれない。


翌21日(日)、京都競馬場で行われた菊花賞(3歳牡牝、G1・芝3000m)は、アサクサキングス(牡3、栗東・大久保龍志厩舎)が、二番手グループの先頭で折り合うと、最後の直線ではヨレそうになりながらも最後まで力強く伸び、3歳クラシック最後の1冠を制した。

菊花賞は、毎年混戦となるのだが、今年はダービー馬不在で、いつもに増して大混戦で難解な一戦となった。
人気の盲点となっていたのが、今回優勝したアサクサキングス。
ダービー最先着、神戸新聞杯でも2着の同馬が、8.4倍・4番人気は意外だった。
この馬の父はホワイトマズル。 ホワイトマズル産駒と言えば、かつての天皇賞・春で大逃げを打ち穴をあけたイングランディーレを思い出す。
終わってみれば、アサクサキングスにもイングランディーレのように長距離適性があったことが証明されたわけで、今後の中・長距離路線での活躍が真に楽しみである。
ところで、このレース結果が意味するところは、単にそれだけに留まらないような気がしてならない。
馬券攻略のヒントが隠されているように思えるのだ。
というのは、思い起こしてみると、アサクサキングスやアルナスラインは前々で競馬をして、なおかつ上がりでも良い脚を長く使い結果を残した。
先日の秋華賞では、速め先頭に立ったダイワスカーレットが、やはり良い脚を長く使い、最後まで切れて栄冠に輝いた。
さらにこれらの馬に共通するのは、“秋にひと叩きされていたこと”だ。
つまり、“上がり調子の、最後まで良い脚を長く使える先行馬”というのが共通項となる。
勿論、レースは千変万化。様々なファクターによって、展開は大きく左右される。
しかし、レースという原点に返ってみれば、前にいるもの方が後ろにいるものよりも、様々な不利を受けにくいのは事実だ。
加えて馬場の高速化という要素がそこに加わるとしたら…。
“上がり調子の、最後まで良い脚を長く使える先行馬”。
その存在には、十分注意を払う必要がありそうだ。