アルアイン

19年3/31(日)2回阪神4日目11R 第63回 大阪杯(G1)(芝2000m)

  • アルアイン
  • (牡5、栗東・池江寿厩舎)
  • 父:ディープインパクト
  • 母:ドバイマジェスティ
  • 母父:Essence of Dubai

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ドバイワールドカップ・デーの興奮も冷めやらうちに、強豪ぞろいの大阪杯が行われた。『良』発表ながら馬場はソフトなイメージ。エポカドーロの先手で4角手前まで来たが、2番手で脚を貯めていたキセキが交わして先頭の直線半ば。進路を馬場の真ん中へと選択して来たが、その内からアルアインが伸びて来る。ひと呼吸遅れてワグネリアンも猛追して3頭の戦いに。勢いは内が良くゴール前へとなだれ込んだが、3頭の真ん中のアルアインが僅かに先着。外、キセキが2着。ワグネリアンは惜しくも3着。最後にマカヒキが勢い良く4着へと突っ込んで来た。人気のブラストワンピースは4角でかなり外へ出して来たが、伸びが今ひとつ。時計が物語る大混戦の一戦であった……。

現場にいないと馬場の状態が判らない。発表は良馬場ではあるが、実際にはどうなのか。決してスピード、切れ味勝負の綺麗な芝ではないと判る程度。そんなヤキモキした気持ちで、画面をグリーンチャンネルと関西TVの2画面で見ていた。
キセキがあまりいいスタートを切れなかった。隣りのブラストワンピースと並んで他の馬よりも後ろめに見えた。外から切れ込んでくる勢いがあってすぐには前へと出ていけなかった。エポカドーロが先手を取ってダッシュのついたキセキは、2番手で最初のカーブへと入って行く。ピンク帽2頭が前に続く。スティッフェリオ、ダンビュライトが枠どおりに並ぶ。内ではアルアインが3番手。隣りがステルヴィオで、すぐ後ろにワグネリアンが続く。ブラストワンピースは後ろめ。最後方がサングレーザーだ。

2番手を進むキセキを見ながら、これって最初から描いていた乗り方ではないのかと思えてくる。先手を取って行くと、外から被せられたらそのまま悪い内目を通る。それを嫌っての番手付けではないのかと。
1000mが1.01.3と、馬場が悪くても遅い流れだ。最後方はマカヒキだったが、内をスルスルと少し順位を上げる向こう正面。後ろの方で少しの動きはあったが、全体的にそうは動かないままで3角を過ぎて行く。ペルシアンナイトの後ろをブラストワンピースが続く。ペースが上がって手綱が動く馬が多い中で、アルアインの手応え十分なのが目立つ。

エポカドーロは、そのまま先頭で直線に入って来た。キセキが少し外へと進路を取った様に見えた。直線半ばでは馬場の真ん中に出して来たキセキ。だいぶ内が空いている。ステッキが入ったエポカドーロの内を、アルアインが出て来る。
その後ろの内からワグネリアンも伸びだしてくる。ブラストワンピースはと見ると、ペルシアンナイトと並んで外から脚を伸ばして来ているのだが、前に追いつく勢いには見えない。むしろ馬場の真ん中に出して来たマカヒキが、いい伸びを見せ始める。狭いところをこじ開けて伸びて来た。その内からの勢いで狭くなったアオリで、ペルシアンナイトが手綱を絞るところも見えた。

馬場の真ん中をキセキ、内目をアルアイン。ラスト200ではアルアインが少し前に出たか。その少し後ろからワグネリアンもグイグイと伸びて、3頭の争いとなる。その3頭から少し離れた処で、エアウインザーももがいている。そこへマカヒキがスルスルっと接近して、交わして行った。先頭となったアルアインが前に出たままゴールへと真っ先に駆け抜けたのが判った。北村友騎手の初G1勝利である。

キセキが主導権を造っていくものと予想を組み立てていた。そこまで馬場が悪いと思っていなかった。実際には内を捨てて、馬場のいい処を選択しての騎乗。皮肉にも、その馬場の内を突いて来たのがディープインパクト産駒の2頭。道中の位置で言えば、マカヒキもラチ沿いを守っていた。馬場の悪い内をディープインパクト産駒が走る。道悪はむしろ得手と思っていたブラストワンピースは、大外へと進路を選択する。この皮肉さであろう。
そしてTVの映像を何度も見ていて気がついたのが、北村友騎手。一度もステッキを抜く気配をも見せず、最後まで手綱を押すだけの所作でアルアインを勝利へと導いていた。

火曜朝、坂路上の角馬場で愛馬が坂路を昇ってきたあとのクールダウンを見つめる池江師に接近。映像を見ての疑問をぶつける。ノーステッキだった事を聞きたかった。『ええ、パドックでステッキを奪いとってやろうかと思いましたよ。ステッキを使うと反抗する処があるんですよ。ブリンカーもそんな影響でしてます』と、最初から陣営はステッキを入れない確認済みだったようである。そこらが判っていたのだろう。
《馬場はそんなに緩かったのですか?》の質問にも、『確かに緩かったですよ。でもBコースですからね。エポカドーロが外へ張り気味に4角を廻った。その分で外へ出て行ったのじゃないですか?内が空いたので助かりましたよ』と分析してくれた。やはり現場の声は聞かないとダメ、イロイロなことを教えてくれる。

ドバイ・ワールドカップデーの翌日に、ドバイにゆかりのある血統の馬がG1を勝つ。ここらに不思議なものを感じた。