函館スプリントSは11着と大きく崩れたストレイトガールだが、レースを見た人であれば、その敗因は一目瞭然。2年ぶりの距離だったヴィクトリアマイル、初のG1挑戦で超がつく不良馬場だった高松宮記念も例外ではない。しかし、人馬ともに言い訳が利かない一戦となるのがこのスプリンターズS。3ヶ月半ぶりの実戦で大一番に挑む理由、気になる仕上がりを女房役の田中博司調教助手に聞かせてもらった。

前3走ともに明確な敗因あり

－：スプリンターズSを予定しているストレイトガール(牝5、栗東・藤原英厩舎)ですが、函館スプリントSでは人気になりながらも、内枠に入った馬の宿命というか、手応えはあるけれども動けずに終わってしまったレースでした。ファンからすれば辛い競馬になってしまったのですけれど、田中さんにとってはいかがですか？

田中博司調教助手：函館を使う時点で、内で包まれて(負けることもある)、というのは覚悟していたところなのですが、本当に覚悟していた通りになった形で、負けるとしたらその負け方しかないなと。調子は良かったし、走れる状態で調整できてはいたのでね。

－：逆に言ったら、ストレイトガールクラスの馬でも、2ケタ着順になることがあるという競馬の怖さですね。

田：そこは、その競馬場を選んで走らせたのだから、現実として受け止めないとダメなところだと思います。

－：その後、使わずに、本番のスプリンターズSに直行というローテーションになります。

田：函館スプリントSを使うと決まった時点で、その後は夏休みでスプリンターズS直行というのは決まっていたので。

田中博司調教助手

－：高松宮記念は馬場が極端に悪かったですね。

田：少し馬にはかわいそうな、何十年に1回あるかないかという感じの馬場の悪さで。それでも、ある程度は力を示せたし。

－：その後のヴィクトリアマイルも、やっぱり反動がすごく気になったんですよね。あれだけの馬場で走った後で何もない訳ではないし、普段使っていない筋肉疲労なども出たと思うのですが？

田：レース後の疲労度は、ここ最近の去年の夏からして、高松宮記念の後が一番しんどかったですね。その後、一度放牧に出して、帰ってきた時は乗り始めから違和感がないし、疲労が取れて戻ってきたな、という感じでしたが。


「5歳牝馬で来年も一応、現役の予定、とオーナーは思っているようですが、やっぱり6歳牝馬になるとちょっと落ちるかも分からないし、今が一番チャンスかなと」

－：ヴィクトリアマイルに関しては、距離も1600に延びたのですが、しっかりこなしました。

田：マイルは久し振りで、3歳のエルフィンS以来ですね。でも、去年の夏に乗っている時からマイルぐらいまではこなせないとアカンな、という感じで乗っていたので。去年の夏から1200しか使っていなかったのも事実だったけど、間でマイル使っても対応できるであろう、という自信はあったので。実際、上手に道中走れていたし、直線でちょっと他の馬を捌くのに戸惑ったというか、手こずったというか。それだけでしたよね。自分が思っていた通り、距離は融通が利いているな、というのは確認できた一戦でした。あと東京への輸送というのが初めてに近く、それでも、前日に競馬場に入って、翌日に競馬という輸送パターンでクリアしてくれたし、体重も減りませんでしたしね。

－：春の高松宮記念とヴィクトリアマイルを見ると、十分にG1が手の届くところに来ているのかなと？

田：去年の夏、勢いでオープンまで上がって、その勢いでキーランドCが2着で、乗っている自分なんかはG1でも勝負できるであろう、という予測を付けていたけども、やっぱりファンであったり、マスコミ関係者なんかは実績不足という風に見ていた人も多かったと思います。しかし、今年の春である程度、実績を作ったし、戦えてきたので。今回は勝たせてやりたいなと。そうなると、5歳牝馬で来年も一応、現役の予定、とオーナーは思っているようですが、やっぱり6歳牝馬になるとちょっと落ちるかも分からないし、今が一番チャンスかなと。

岩田騎手とのコンビでリベンジを

－：スプリンターズSにはハクサンムーンを筆頭に強烈なスピード馬がいますよね。

田：あの実績馬も、前哨戦が終わって順調に来ているみたいですね。

－：ちなみに、セントウルSをご覧になった印象はいかがでしたか？

田：やっぱりハクサンムーンは前半で逃げない形でレースできていたし、夏のスプリントチャンピオンのリトルゲルダも上がってきているし。

(※リトルゲルダは後に出走回避を表明)

－：それに関しては、ストレイトガールの能力があっても、楽には勝てない一戦になりそうですね。

田：そこはレースなので、函館みたいなこともありますしね。こちらとしてはやるべきことをやって、ベストの状態で新潟に連れていってやれれば良いかなと。

－：左回りは、春の2戦もそうでしたし、十分にこなせると。

田：レース形態、どこのコース、ということに関して言えば、ある程度、今年の春でほとんどクリアできてきているかなと思うので、その辺に関しての要素は心配しなくてもレースに向かえるかなと。あとは体調だけ整えて臨めれば、結果は付いてくるんじゃないかな。ここまで来ているのだし、やっぱりG1を獲らせてやりたいですよね。馬は獲れるだけのモノは持っているのでね。


「岩田騎手もこの春は悔しい思いもしているから、その辺を踏まえて乗ってくるだろうし、彼も獲らせあげたいなと。もしかしたら、僕よりも強く思っているかもしれない。ここ一発の時に、その悔しさをバネにしてやってくれると信じているし、もし、達成できた時により嬉しいからね」

－：高松宮記念のような極端な道悪にならなければ。

田：少々の道悪なら大丈夫だと思います。

－：新潟は使い込んでいて馬場も悪化するでしょうから。

田：2開催ずっとＡコースで行くらしいので、内枠に当たった時、閉じ込められた時なんかはどういう競馬になるか……。そこはジョッキーの判断で僕らの手の出せないところだし、岩田騎手もこの春は悔しい思いもしているから、その辺を踏まえて乗ってくるだろうし、彼も獲らせあげたいなと。もしかしたら、僕よりも強く思っているかもしれないですね。本人がレースに乗っていて、ヴィクトリアマイルだって脚を余して負けている訳ですし。

－：ちなみに函館スプリントSの時は、レース後の岩田さんは相当悔しかったんじゃないですか？上がってきて、どんな感じでしたか。

田：「すみません」しか言わなかったですね。でも、やっぱりそれ覚悟で、内枠が当たった時点でそこだけだなと。厩舎として、ウチの先生もそうだろうし、オーナーもそう、担当している自分も、岩田騎手も、G1を獲らせたいという気持ちはみんな持っていると思うのでね。このスプリンターズSは絶対獲りたいですね。

－：藤原英厩舎と言えば、狙ったところは勝負を懸ける厩舎なので。

田：今まで実績も残してきているので、結果が出た時、やっぱり狙ってきたら、という風に言われるような結果が出てれば良いなと思いますね。

－：しかも、岩田ジョッキーで、馬もストレイトガールで。

田：周りからは「騎手を替えるの？」と言われましたね。でも、岩田騎手がウチの主戦の1人というのはみんな分かっているし、やっぱり彼で勝たなアカンのかなと。

－：やっぱり悔しい負け方をした経験のあるジョッキーこそ、強みじゃないですか？

田：ここ一発の時に、その悔しさをバネにしてやってくれると信じているし、もし、達成できた時により嬉しいからね。

ストレイトガール・田中博司調教助手インタビュー(後半)
「ベストな選択が函館SSからの直行」はコチラ⇒

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