クラシックの戦前は大本命として目されていたトゥザワールドだが、皐月賞は2着。そして、ダービーは不本意なレース運びから5着に終わってしまった。3000mという未知の距離に対する不安はどの陣営も尽きないところだが、本馬にとって、特異な条件が吉と出るのか。クラシック最終戦を前にした心境を語ってもらった。

順調に夏を越し、ひと叩き良化のムード

-:トゥザワールド(牡3、栗東・池江寿厩舎)ですが、休み明けのセントライト記念では惜しくもイスラボニータに敗れてしまいました。

兼武弘調教助手:結果的にはそうなりましたが、秋の前哨戦としては十分に納得のいく内容でした。勝った馬が強かったです。

-:タガノグランパに差されるんじゃないかと冷やりとしました。

兼:そこを凌ぐあたりは、やっぱり力のある馬ですよね。

-:体重的に大幅な変化はありませんでしたが、休んでいる間に成長したところはありますか?

兼:春の時点で完成度の高い馬でしたので、目立った変化はありません。順調に夏を越せた印象は持ちました。

-:セントライト記念から距離が4F延びて、3000mという距離はどの馬にとっても未知です。トゥザワールドは皐月賞で先行したのに、ダービーではポジションを下げました。それは2400mに対応するために下げたのですか?

兼:もう少し前で、というイメージだったのですが、結果的にはあの位置取りになりました。

-:この馬の良さは、皐月賞の内容同様にある程度、先行して、長く良い脚で押し切るところですか?

兼:それだと思います。

-:京都の3000mというのは、この馬にとってはどうですか?

兼:プラスに働くと思います。コーナーで勢いをつけられますし、直線に坂もないので向くんじゃないですかね。

-:セントライト記念で久しぶりに走った疲れはいかがですか?

兼:放牧から帰ってきた時に、まだ体が全然できていない状態だったので、一叩きしてグッと良くなる自信がありました。良い状態に持ってこられていると思います。

-:ダービー前はノーザンファームしがらきから帰って調整しましたが、今回は北海道から直接栗東に帰ってきているのですか?

兼:涼しいところで夏を順調に越せました。

-:帰ってきてから、こっちの暑さにへたっていませんでしたか?

兼:全然問題なかったです。体が緩く映ったので、そこを締めていくだけの作業でした。

最後の1冠に懸ける思い

-:(今週の)立ち写真を見ると、そんなに緩くないですよね。

兼:やれば良い筋肉がついていくのが、目に取るように分かる馬です。明らかに緩かった前走前よりも、ハッキリとした筋肉がついてきた自信があります。

-:長距離馬は痩せ型でシャープな軽い馬の方が良さそうですよね。

兼:3000mが得意には見えないですし、どの馬もそうですが、そこは分からないです。コントロールしやすく融通の利く馬というのが、距離が延びても十分にやれるところじゃないでしょうか。

-:トゥザワールド自身に瞬間的な脚はないですが、レース全体で平均的に良い脚を使って押し切るというのが、この馬の良さですよね。ダービーの敗戦が良い意味で教訓になり、最後の一冠に繋がる可能性がありますよね。

兼:前哨戦もそうですが、どういう戦法を取ろうか、イメージが沸きました。最後の1冠ですし、何とか良いところを見たいです。

-:皐月賞前から取材させて頂いて、その時の勢力図はトゥザワールドが本命という向きもありました。それが、皐月賞でイスラボニータが勝って、ダービーでワンアンドオンリーが勝って、若干置かれてしまいました。

兼:結果を見るとそうですよね。この馬も能力的に引けを取るわけではないのですが、前哨戦ではイスラボニータに力の差を見せつけられる格好になりました。

-:目の肥えたファンが最初から評価していた馬だけに、最後に是非やってもらいたいです。

兼:春のリベンジと行きたいですね。

-:血統的に距離をこなしてい馬はいましたか?

兼:いないと思います。ただ、(兄の)トゥザグローリーと違って、引っ掛かるところがないです。トゥザグローリーの天皇賞(春)の時は、引っ掛かって先頭に立ってしまいましたが、そういうことはないと思います。

-:菊花賞のポイントに、大観衆の中で4コーナーを2回走ることがあります。

兼:それには精神的に動じないと思います。従順な馬です。

-:ダービーよりも期待できそうですか?

兼:ダービーも期待していましたが、それ以上にラスト一冠に懸ける思いは強いです。

-:個人的にダービーで3着を外すとは思っていませんでした。今度こそ、ダービーで見られなかったワンアンドオンリーとの叩き合いを見せて下さい。そこでトゥザワールドの渋太さを思う存分発揮してほしいです。

兼:その通りだと思います。

(取材・写真=高橋章夫)

●日本ダービー前・トゥザワールドについてのインタビューはコチラ⇒