3歳時から重賞戦線で活躍しながらも、なかなか手が届かなかった重賞タイトル。5歳春のマイラーズCでようやく兄クラレントらに肩を並べたが、その勢いで言えば完全に弟レッドアリオンに軍配が上がろう。課題であった折り合いも先行しながらつくようになり、2連勝の内容はまさに横綱相撲。名門厩舎の看板馬の担当としてお馴染み、甲斐純也調教助手に安田記念制覇の可能性を伺ってきた。

精神面が落ち着いて2連勝中

-:レッドアリオン(牡5、栗東・橋口弘厩舎)ですが、前回のマイラーズCは連勝での重賞初勝利となりました。おめでとうございます。

甲斐純也調教助手:ありがとうございます。

-:ここに来ての充実ぶりについて、何か馬そのものに変化があったのでしょうか?

甲:精神面の落ち着きですね。

-:この間のレースはすごかったですね。バッチリとスタートが決まりました。

甲:だいぶ落ち着きが出てきたので、ゲート裏でも変にテンションが上がらなくなりました。

-:ソワソワする様子もなくなったのですね。

甲:全然落ちついています。だから、道中も馬に力みがないですね。

レッドアリオン

▲パートナーの成長を感じ取る担当の甲斐助手


-:8番人気でしたが、内容としては完勝でしたね。“テンよし、中よし、終いよし”という競馬で、抜け出してきた時も、まだ伸びてくる余裕がありました。昨年とは一変しましたね。

甲:ええ、昨年はかかり気味に逃げてしまいました。

-:その頃から考えると、すごくコントロールが効くようになったといいましょうか。

甲:そうですね。川須騎手もすごく乗りやすそうですよ。

-:もともと乗ってくれていたジョッキーも良いイメージを持って、馬を信頼している雰囲気が伝わってきます。

甲:前々走のオープン特別を勝ったのが大きかったのではないでしょうか。だから、マイラーズCで自信を持って乗ってくれたと思います。

-:洛陽SからマイラーズCの間で、相手が2ランクくらいアップしていると思いますが、それでも連勝してみせたということで、この馬自体もすごく成長しているのかと感じさせられました。

甲:とは言っても、もともと重賞戦線を走ってきた馬ですから、いつまでもオープン特別にいるような馬ではないとも思っていましたよ。

レッドアリオン

-:マイネルホウオウが勝ったNHKマイルCでレッドアリオンは4着でしたが、今もマイル路線で活躍している関東馬シャイニープリンスなど、当時は下の着順でも、現役で頑張っていますよね。安田記念といえば府中のマイル戦で、この馬も走り慣れた馬場です。左回りでもリラックスして走れそうですか?

甲:今なら全く問題ないでしょう。

-:体重に関してはいかがですか?

甲:そんなに変わりはないのではないでしょうか。これくらいが一番走りやすいのではないかなと。

-:それでは、府中に輸送しても、だいたい前走くらいの体重で出られそうですね。

甲:ええ、変わらずです。

条件面に大きな不安なし

-:1週前追い切りはどのような内容でしたか?クラレントと一緒に併せたということで。前から見たら兄弟とは思えないほど、逞しいレッドアリオンと薄型のクラレントの2頭が来ました。ご自身で乗られていて、感触はいかがでしたか?

甲:特別に痺れるほどという感触ではないですが、レースに行っての良さが追い切りでも、普段でも現れている感じですね。

-:最近の坂路の馬場コンディションを見ると、ザ石になってしまう馬が多いので、気を遣う時期なのかな?と思っているのですが、厩舎で何か気をつけていることはありますか?

甲:やっぱりキレイなところで乗りたいなとは思いますが、調教時間も遅いし、毎回馬場荒れた時間ですからね。心配にはなります。

-:今日乗った馬場の真ん中辺りは、まだ馬場がキレイな状態に近いのでしょうか?

甲:もう、あの時間になってしまうとどこを走っても同じですね。特に水曜日は馬も多いですし、馬場も荒れているから脚を取られ、バランス崩す馬も多いです。

-:だから木曜日に追い切りをしていると。

甲:いや、そういうわけではないです。(橋口)先生は水曜日にやりたかったみたいですが、僕の都合で木曜日に回してもらったんです。

-:ジョッキーに乗ってもらう算段であれば、水曜日に追い切っていたかもしれないということですか?

甲:時間が合えば、そうなっていたかもしれません。

-:来週の追い切りプランはすでにありますか?

甲:併せ馬で、今日と一緒だと思います。

-:2頭がスペースを空けて走っていましたが、馬自体が闘争心をむき出しにしている感じではなく、パートナーとしてお互いリラックスして走っているというイメージでしょうか?

甲:いや、ムキになっていることはないと思いますよ。

-:併せ馬といっても両方同じレースに出るから、どちらかが引き立て役になるわけにもいかないですもんね。

甲:そうですね。

レッドアリオン

▲兄弟での併せ馬となったレッドアリオン(左)とクラレント


-:振り返ってみると、洛陽Sの時もパンパンの良馬場ではなかったですし、時計のかかる馬場でも問題なく走れると思うのです。梅雨の時期なので、雨で濡れた馬場になるとどうでしょうか。

甲:多少は心配ないかと思っています。よほど雨が降っていてもデコボコの少ない馬場なら問題ないです。それに安田記念はCコースでの開催ですよね。

-:悪くなるとすれば、内の方が悪くなるかもしれないですね。しかし、僕もパワータイプですから、そんなに問題はないかと思って見ていますよ。

甲:そう思っています。

-:ゲートさえちゃんと出てくれれば、いい位置で競馬できますよね。

甲:ポジションを取りに行けますし、他に行きたい馬がいれば、中団でも後ろからでも、どこでも大丈夫ですね。


「ここでもやれてもいいかと思っていますよ。実績的には(良い勝負をしても)何も不思議はないです」


-:これまでも勝利してきたレースはありますが、ここ2戦の競馬はより終いの脚が残せている感じがしますよね。それは調教を変えて作ったのですか?

甲:いや、勝手にそうなったのでは(笑)。僕は特に何もしていませんよ。

-:最近の(レッドアリオンの)精神状態はどうですか?

甲:ここ最近の中では一番良いのではないでしょうか。

-:初重賞を取ったあとのG1挑戦になりますが、十分戦えそうな手応えはありますか?

甲:ここでもやれてもいいかと思っていますよ。実績的には(良い勝負をしても)何も不思議はないです。

-:まずはNHKマイルCよりも上を目指したいですね。

甲:今思えば、あの時はまだまだ馬が若かったんじゃないかと。

レッドアリオン・甲斐純也調教助手インタビュー(後半)
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