偉大な兄達を追い越せ!一族悲願のG1制覇へ レッドアリオン
2015/5/31(日)
-:レッドアリオン(牡5、栗東・橋口弘厩舎)ですが、前回のマイラーズCは連勝での重賞初勝利となりました。おめでとうございます。
甲斐純也調教助手:ありがとうございます。
-:ここに来ての充実ぶりについて、何か馬そのものに変化があったのでしょうか?
甲:精神面の落ち着きですね。
-:この間のレースはすごかったですね。バッチリとスタートが決まりました。
甲:だいぶ落ち着きが出てきたので、ゲート裏でも変にテンションが上がらなくなりました。
-:ソワソワする様子もなくなったのですね。
甲:全然落ちついています。だから、道中も馬に力みがないですね。
▲パートナーの成長を感じ取る担当の甲斐助手
-:8番人気でしたが、内容としては完勝でしたね。“テンよし、中よし、終いよし”という競馬で、抜け出してきた時も、まだ伸びてくる余裕がありました。昨年とは一変しましたね。
甲:ええ、昨年はかかり気味に逃げてしまいました。
-:その頃から考えると、すごくコントロールが効くようになったといいましょうか。
甲:そうですね。川須騎手もすごく乗りやすそうですよ。
-:もともと乗ってくれていたジョッキーも良いイメージを持って、馬を信頼している雰囲気が伝わってきます。
甲:前々走のオープン特別を勝ったのが大きかったのではないでしょうか。だから、マイラーズCで自信を持って乗ってくれたと思います。
-:洛陽SからマイラーズCの間で、相手が2ランクくらいアップしていると思いますが、それでも連勝してみせたということで、この馬自体もすごく成長しているのかと感じさせられました。
甲:とは言っても、もともと重賞戦線を走ってきた馬ですから、いつまでもオープン特別にいるような馬ではないとも思っていましたよ。
-:マイネルホウオウが勝ったNHKマイルCでレッドアリオンは4着でしたが、今もマイル路線で活躍している関東馬シャイニープリンスなど、当時は下の着順でも、現役で頑張っていますよね。安田記念といえば府中のマイル戦で、この馬も走り慣れた馬場です。左回りでもリラックスして走れそうですか?
甲:今なら全く問題ないでしょう。
-:体重に関してはいかがですか?
甲:そんなに変わりはないのではないでしょうか。これくらいが一番走りやすいのではないかなと。
-:それでは、府中に輸送しても、だいたい前走くらいの体重で出られそうですね。
甲:ええ、変わらずです。
-:1週前追い切りはどのような内容でしたか?クラレントと一緒に併せたということで。前から見たら兄弟とは思えないほど、逞しいレッドアリオンと薄型のクラレントの2頭が来ました。ご自身で乗られていて、感触はいかがでしたか?
甲:特別に痺れるほどという感触ではないですが、レースに行っての良さが追い切りでも、普段でも現れている感じですね。
-:最近の坂路の馬場コンディションを見ると、ザ石になってしまう馬が多いので、気を遣う時期なのかな?と思っているのですが、厩舎で何か気をつけていることはありますか?
甲:やっぱりキレイなところで乗りたいなとは思いますが、調教時間も遅いし、毎回馬場荒れた時間ですからね。心配にはなります。
-:今日乗った馬場の真ん中辺りは、まだ馬場がキレイな状態に近いのでしょうか?
甲:もう、あの時間になってしまうとどこを走っても同じですね。特に水曜日は馬も多いですし、馬場も荒れているから脚を取られ、バランス崩す馬も多いです。
-:だから木曜日に追い切りをしていると。
甲:いや、そういうわけではないです。(橋口)先生は水曜日にやりたかったみたいですが、僕の都合で木曜日に回してもらったんです。
-:ジョッキーに乗ってもらう算段であれば、水曜日に追い切っていたかもしれないということですか?
甲:時間が合えば、そうなっていたかもしれません。
-:来週の追い切りプランはすでにありますか?
甲:併せ馬で、今日と一緒だと思います。
-:2頭がスペースを空けて走っていましたが、馬自体が闘争心をむき出しにしている感じではなく、パートナーとしてお互いリラックスして走っているというイメージでしょうか?
甲:いや、ムキになっていることはないと思いますよ。
-:併せ馬といっても両方同じレースに出るから、どちらかが引き立て役になるわけにもいかないですもんね。
甲:そうですね。
▲兄弟での併せ馬となったレッドアリオン(左)とクラレント
-:振り返ってみると、洛陽Sの時もパンパンの良馬場ではなかったですし、時計のかかる馬場でも問題なく走れると思うのです。梅雨の時期なので、雨で濡れた馬場になるとどうでしょうか。
甲:多少は心配ないかと思っています。よほど雨が降っていてもデコボコの少ない馬場なら問題ないです。それに安田記念はCコースでの開催ですよね。
-:悪くなるとすれば、内の方が悪くなるかもしれないですね。しかし、僕もパワータイプですから、そんなに問題はないかと思って見ていますよ。
甲:そう思っています。
-:ゲートさえちゃんと出てくれれば、いい位置で競馬できますよね。
甲:ポジションを取りに行けますし、他に行きたい馬がいれば、中団でも後ろからでも、どこでも大丈夫ですね。
「ここでもやれてもいいかと思っていますよ。実績的には(良い勝負をしても)何も不思議はないです」
-:これまでも勝利してきたレースはありますが、ここ2戦の競馬はより終いの脚が残せている感じがしますよね。それは調教を変えて作ったのですか?
甲:いや、勝手にそうなったのでは(笑)。僕は特に何もしていませんよ。
-:最近の(レッドアリオンの)精神状態はどうですか?
甲:ここ最近の中では一番良いのではないでしょうか。
-:初重賞を取ったあとのG1挑戦になりますが、十分戦えそうな手応えはありますか?
甲:ここでもやれてもいいかと思っていますよ。実績的には(良い勝負をしても)何も不思議はないです。
-:まずはNHKマイルCよりも上を目指したいですね。
甲:今思えば、あの時はまだまだ馬が若かったんじゃないかと。
レッドアリオン・甲斐純也調教助手インタビュー(後半)
「厩舎解散と相まって今年が勝負の年」はコチラ⇒
1 | 2
プロフィール
【甲斐 純也】Junya kai
幼少時代から競馬サークル内で過ごして自然と厩務員を目指した。池添、太宰騎手らとは幼稚園から一緒の同級生。亡き父も橋口弘次郎厩舎の厩務員で、ダイタクリーヴァや、オールドファンなら御存知のツルマルミマタオーなどを担当していた。アイネスフウジンが勝った年でツルマルミマタオーは橋口厩舎初のダービー出走馬。当時、自身はまだ小学5年生だった。「親父と一緒に馬運車に乗って行きましたよ。当時は土曜日も学校があったから休んで行っていました」。
18歳から4年間、岡山の栄進牧場で働いた後、栗東の野元厩舎に所属する。23歳でトレセンに入って2年目で出会ったのがエイシンデピュティ。野元厩舎解散後は縁もあって橋口厩舎に入る。仕事をする上で、いつも心がけている事は「馬は友達」という言葉。昨年のダービー馬ワンアンドオンリーも担当している。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
■公式Twitter
@aklab0328さんをフォロー