【POG】過去最高のメンツ?師の声も弾むラインナップ
2015/6/13(土)
-:それでは、西園先生の2歳馬情報をお伺いしたいと思います。よろしくお願い致します。
西園正都調教師:ええ、よろしくお願いします。まずはマイネル(サラブレッドクラブ・ラフィアン所属。近年は冠名を付けない馬も存在する)のノンゼロサム(牡、母Winendynme)ですかね。スパイツタウン産駒で、昨年のキーンランドセールの出身です。ゲート試験は先々週に合格して、攻めでも速い時計を出しています。1ハロン目12.3秒-2F目11.6秒で行きました。
-:ものすごい時計ですね。
西:ただ、来週競馬に使う予定だったのですが、ちょっと骨端症が出てしまいまして、かかとの骨の状態があまり良くないのです。使えば勝てるだろうとは思いますが、やはり先々の事が心配ですから、一旦ここで休憩させます。最終的にはかなりのところまでやれる馬だと思っていますので、出てくる時を楽しみにしていてください。
-:高い評価ですね。念の為にもスパイツタウンという馬の特徴を教えてください。
西:アメリカの種牡馬で短距離向きですね(’04年のブリーダーズCスプリントを勝利)。うちの厩舎でエーシンジェイワンという馬が5勝してOPまで行きましたが、あの馬も同じ産駒です。芝でもダートでも、短い距離であれば良いスピードを持っている馬です。
▲西園師が真っ先に名を口にしたノンゼロサム
-:体重はどのくらいですか?
西:480キロですね。他には阪神開催で下ろすウインクレド(牡、父バトルプラン、母キリエ)。ゲート試験も受かりまして、最終週の芝1800mに和田騎手で出走させようと思っています。これも仕上がりが早いというか、2歳戦向きかなというところですね。
-:1800mまで走りそうとお考えですか?
西:バトルプランの産駒はダートの短~中距離向きですが、この馬は身のこなしも柔らかいし、芝でもやれるのではないかな?ということで、あえて芝の長いところで使います。
- ノンゼロサム
- 牡、栗東・西園、Speightstown×Winendynme
-:もし、ダートも走れるならば、全日本2歳優駿なども視野に入れながら……。
西:そうですね。芝・ダートどちらでも良いなと思っています。あとは函館で下ろすフィールドシャルム(牡、父、アドマイヤムーン、母タイキクラリティ)。先日、NHKマイルCを獲ったクラリティスカイの弟です。種牡馬がアドマイヤムーンに変わりまして、より2歳戦向きだと考えて、函館の新馬で下ろします。その上のクラリティシチーも走っていますし、種牡馬がうちの厩舎でも馴染みの深いアドマイヤムーンに変わったということで、函館2歳Sを意識できるかな?と思っています。
-:この血統は、ムキムキした身体の馬を出すイメージがありますね。西園先生好みの馬体と言いますか。
西:そうですね。良いイメージを持っていますので、期待したいと思います。社台グループの馬では、母サマーナイトシティで、サダムパテックの半妹になるジュールポレール(父ディープインパクト)。これは兄もG1を一つ勝ってくれましたし、オルフェーヴル世代で、皐月賞も2着です。もしオルフェーヴルがいなかったら、クラシック馬になれたと思うのですが。一つ上は競馬にならなかったのですが、父がディープに変わったことで、クラシックディスタンスへの適性も高くなったと思います。お兄ちゃんができなかったクラシック制覇を目指したいなと。
-:種牡馬としてのディープインパクトは、マッチョな馬も(自身に似た)軽い馬も輩出しています。この馬はどちらのタイプですか?
西:この仔は割と大きめのディープ産駒ですね。母サマーナイトシティの印象からすると、ちょっと馬体が薄いかな?という気はしますが、それでもサダムパテックのようにいい馬ですね。馬格もありますし。
-:となると非常に楽しみですね。
▲兄たちが活躍しており、期待の高まるフィールドシャルム
西:はい。あとはサンデーレーシングのベルロックも期待ですね。父がFastnet Rockで、母はビリーヴミーというフランスの生産馬なのですが、ヨーロッパの血統で粘り強い血統なので、クラシックにいけそうな感じがすると楽しみにしています。
-:馬体はいかがですか?
西:牡馬で480~490キロくらいありますね。これはゆっくりと秋からのデビューになると思いますが、楽しみです。あとは、社台ファーム産まれで東京サラブレッドクラブの募集馬になる、レリックレーヌの2013(牡、父シンボリクリスエス)。お母さんはサンデーサイレンスの肌馬です。この仔はなかなか色も黒くてすごく見栄えがよく、柔らかい歩きで球節の繋ぎも柔らかいので、芝の長い距離でもやれるのではないかと思っています。
-:デビューの時期はいつ頃になりそうですか?
西:活躍を急かすような血統ではありませんので。でも、楽しみにしていますよ。
- フィールドシャルム
- 牡、栗東・西園、アドマイヤムーン×タイキクラリティ
-:あとは、西園厩舎らしいスピード血統はいますか?
西:先ほど紹介したアドマイヤムーンの仔はスピード血統だと思いますね。あとは「ハクサン」の馬主さんの所有馬で、ディープ産駒になるオークヒルズの2013(牝)。ひとつ上の姉がハクサンエルモという、高松宮記念と同じ日に勝ち上がった馬なのですが、この馬はディープらしい素軽さがあって、体の動きも良いので、楽しみにしています。
-:距離はマイルくらいですか?
西:マイルくらいまでの芝で、勢いよく行ける馬だと思っています。あとはシーザスターズ産駒の牡馬(サンドスラッシュの2013)。下河辺牧場の生産で、窪田オーナーの所有馬です。初めて預かるのですが、うちの厩舎のエイシンアロンジーが、シーザスターズ産駒で唯一成功しているといっても過言ではないので、これで結果を出したいですよね。
-:やはり、馬格は大きいですか?
西:大きいですね。それでも、大きいだけじゃなくて、身のこなしの軽さもありますし、今までとはちょっと違う雰囲気のシーザスターズ産駒かなというのはありますね。
-:楽しみですね。
西:ええ。あとはハービンジャー産駒になるショウナンタレントの2013。これはシチーさんの募集馬なのですが、この母親が走る馬ばかり輩出しています。加えて、3歳で活躍したハービンジャーの牡馬ということで、楽しみです。
「厩舎として、短距離に活躍馬が偏っても困りますから(笑)。僕も短距離向きの速い馬を出そうとしているわけではなくて、ただ結果的にそういう風になっているだけですからね」
-:ハービンジャー産駒はうるさいという人もいれば、大人しいと評する人もいますね。
西:厩舎にもアキトビーナスというハービンジャー産駒がいます。牝馬だからチャカチャカするようなところはありますが、そこまでうるさくはないですね。この仔は牡馬ですし、また違った感じになると思うのですけど。
-:育成段階でも、産駒が2年目となれば修正されるところもありますよね。
西:そうですね。もっともっと走っていい血統だと思いますよ。あとはウインの募集馬になるカートゥーンの2013(牡、父ステイゴールド)。雄大な馬格をしていますし、ステイゴールドにしては体もあります。
-:カートゥーンはサンデーレーシングの勝負服で走っていた馬ですよね。
西:そうでしたね。繁殖として今はコスモヴューファームに居るのですよ。
-:この仔は長距離向きになりそうですか?
西:長距離だと思いますね。厩舎として、短距離に活躍馬が偏っても困りますから(笑)。僕も短距離向きの速い馬を出そうとしているわけではなくて、ただ結果的にそういう風になっているだけですからね。
-:イコピコなども中距離で活躍した馬ですよね。
西:この馬は2400m前後でも走らせようと思っていますからね。イコピコの半弟(ガンダーラプソディの2013)も入るのですが、この仔もステイゴールド産駒ですが馬格もあって、将来的にもイコピコが成し得なかった夢を果たしてくれそうな馬なので、楽しみにしております。
- ガンダーラプソディの2013
- 牡、ステイゴールド×ガンダーラプソディ
-:いま流行のキングカメハメハ産駒は入りますか?
西:少ないですが、マイネルの所属馬がいます(マイネルチャンプ)。母がシーセモアなので、兄に美浦の小桧山厩舎で活躍したスマイルジャックがいますね。キンカメらしく落ち着いていますね。この仔は募集額も高かかったのですよ。
-:価格はどのくらいですか?
西:4000万円くらいかな?ノンゼロサムが5000万ですね。厩舎へこんなに高い馬が来たのは初めてじゃないかな(笑)。今年のマイネルさんはけっこうなメンバーですよ。
西:他の種牡馬ですと、母スターオブサファイア(マイネルブランブル)というのが、マンハッタンカフェ産駒で芦毛の牡馬です。千代田牧場の生産馬で、昨年のセレクトセール出身なのです。この仔は最初に紹介したノンゼロサムと互角の動きをするのですよ。岡田繁幸さんとセールで一緒に見ていて、「良い動きをしますよね。ぜひ、やらせてください」と直接言ったのです。
-:直訴しただけに結果を残したいですね。Tapitの肌馬で、マンハッタンカフェ産駒となると脚の捌きが気になるところですが。
西:重さはあるのですが、これが動くのですよ。距離はダートのマイルくらいという感じかな?
-:一本調子という動きではないのですね。
西:そうです。最後はグッと伸びてくるのです。面白い存在だと思うのですけど。
「厩舎へこんなに高い馬が来たのは初めてじゃないかな(笑)。今年のマイネルさんはけっこうなメンバーですよ」
-:西園厩舎としても2歳馬のクオリティは高いですね。タイキクラリティの仔などは世間が注目するでしょう。
西:そうでしょうね。G1馬の下になりますし、函館に持っていくというだけでマスコミは寄ってくるだろうから。結果を出したいと思っていますよ。
-:最後に2歳を育てるコツと言いますか、“西園厩舎はこういう仕上げ方をする”という特別なモノはありますか?
西:それほど偏った決まりはありませんが、その馬の資質や状態、馬体の完成度をよく観察して、無理のないように仕上げていきます。
-:適材適所ということですね。
西:はい。その通りですね。
-:それでは、今年も楽しみにしています。
西:はい。よろしくお願いします。
(取材・写真=高橋章夫 写真=競馬ラボ特派員)
- シーセモアの2013
- 牡、キングカメハメハ×シーセモア
プロフィール
【西園 正都】 Masato Nishizono
1955年12月29日鹿児島県生まれ。騎手時代は安田記念、マイルCSを勝ったノースフライトのデビュー戦を任されるなど303勝をマーク。調教師に転身し、1998年に厩舎を開業すると坂路を主体とした独自の調整方法で活躍馬を量産。特に00年代後半からはハクサンムーンのほか、マイルCSを勝ったエーシンフォワード、サダムパテック、川崎記念を勝ったフィールドルージュ、気っぷのいい逃げでファンを沸かせたシルポートなど、短距離~マイル戦線で毎年のようにスピードあふれる有力馬を送り出している。また、栗東トレセンきってのオープンな人柄でも知られ、マスコミ対応も積極的に行っている。
1955年鹿児島県生まれ。
1997年に調教師免許を取得。
1998年に厩舎開業。
初出走:
1998年3月7日 1回阪神3日目7R ドクターブイ
初勝利:
1998年4月26日 1回新潟2日目4R マイネルユートピア
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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