香港クイーンエリザベス2世Cで2着、昨年の天皇賞秋で2着とG1戴冠まであと一歩のステファノス。前走の宝塚記念では湿った馬場が影響して5着に甘んじた。それでも安定したレースぶりは健在。昨年と同じローテーションで悲願のG1戴冠を目指す。毎日王冠、そして天皇賞秋に向け、荻野仁調教助手・藤野陽平調教助手の両雄に、その感触を伺ってきた。

距離の壁を感じた宝塚記念、そして、気性に大きな変化が

-:毎日王冠(G2)に出走するステファノス(牡5、栗東・藤原英厩舎)ですが、前走の宝塚記念を振り返っていただけますか?

藤野陽平調教助手:具合はすごく良かったのですが、やっぱり距離が長かったですね。セントライト記念で2200mを走ったことがありましたが、前が壁になってまともに追えていたのが残り100mくらいですし、あれを見て行けるかなと思ったのですが、やっぱりちゃんとフルで走ったら、ちょっと長かったかなという気がしましたね。

-:当日の状態は、それまでと比べてもすごく自信があったと。

藤:そうですね。具合はすごく良かったですね。

-:宝塚記念は馬場が渋っていましたが、その辺りはいかがでしたか?

藤:下は悪くて、ステファノス自身はプラスにはならないですが、他の馬よりはそこまでマイナスになる要素は少ないのかなと思っていたので、馬場のことはそこまで心配していなかったですね。

-:実際に現時点で2200mを走って、改めて感じられている距離の適性というのはどの辺りでしょうか?

藤:2000mまでですね。

ステファノス

ステファノスとパドックを周回する藤野陽平調教助手


-:勝っている富士Sは1600mだと思うのですが、あれからまだマイルは一度も使っていません。その辺りはいかがですか?

藤:東京だと最後の直線が長くて、ステファノス自身切れる脚もないし、長く脚を使えるタイプなので、それで1600mでも対応出来たのだと思いますね。

-:競馬場としては、東京はやっぱりベストで、次走の毎日王冠はパフォーマンスを上げられる舞台ですか?

藤:そうですね。ある程度直線長い方がステファノスにとってはいいですね。

-:宝塚記念が終わってからの状態を教えて下さい。

藤:帰ってきてから、すごく我が出てきて、うるさい部分が出てきましたね。今までは我がままを言う事はあったのですが、今回はただの我がままという感じじゃなくて、「いや、俺はこうするんや」と自分が気に食わなかったら気に食わないとすごくハッキリと意思表示をするような感じで、それが良い方向に向けば良いいですね。

-:それは、宝塚記念が終わって急に出てきたのですか?

藤:そうですね。休み明けで帰ってきてから。

荻野仁調教助手:フレッシュですからね。休ませて、気持ちも北海道からフレッシュで帰ってきてきたことが一番。それが休ませたことの一番の目的ですからね。

-:元々、ストレスを溜めやすいとか繊細なタイプだったということはありますか?

荻:弱かったね。

藤:すごく繊細な馬なんですよ。

荻:だから、先生も(デビューを)待ったと思うんですよね。いきなりドーンと行く馬だったら、もっと早くクラシック戦線に出てくるだろうけど、やっぱり良いモノを持っていたということで、藤原先生はジックリと、徐々に馬の成長と一緒に鍛えていきますね。やっぱり現時点でG1で2着に来たりだとか、香港に行って勝てずも力は出しているので、どこかで勲章を獲らせてあげたいですね。そうやって藤原先生は馬の成長に応じてジックリ調教をしているので、それが今に繋がっていると思いますね。

-:自分が出てきたという面も、やっぱり一つの成長ですか?

荻:そうですね。やっぱりあれだけの馬というのはみんな我を持っています。逆にそういう馬の方が走ると思います。オープンクラスでも、おとなしい馬よりもちょっと我を持っているくらいの馬の方が良いって話を聞きますしね。反対に歳を取って落ち着いてしまう馬もいるし、「まだ俺は」という気を持っている方が良いと思いますね。

-:実際に我が出てくるようになって、調教メニューや内容というのは変わりましたでしょうか?

荻:それは先生と、乗っている先生の弟さんの和男さん(調教助手)が感じながらやっているでしょうから、その辺も含め計算して良い面を引き出していると思います。

ステファノス

川田騎手を背にCWで追い切り
6F83.0-67.3-52.2-38.2-11.6秒で素軽い動きを披露

放牧して成長を実感 期待高まる毎日王冠

-:現時点で、前と比べて大きく変わったというところはありますか?

荻:やっぱりシッカリ度が違う。見ていてもそう思う。ステファノスは右の筋肉が発達していないところがあって、そういう意味ではノーザンファームから色々指示をもらって、今年の春に徹底的に(藤野助手が)ケアしたのです。ノーザンファームのスタッフさんもケアしてくれているし、こっちに来ても指示をいただいて頑張っているので、みんなの総合力じゃないですか。

藤:体もプラス10キロくらいになっていて、前と比べたら、お尻の筋肉がすごくプワッと盛り上がりましたね。その辺りが成長だろうし、気持ち的にもそうですね。

荻:ドンドン良くなっているから、やってもヘタってこないですね。

藤:前は座り込んだりしていましたが、背中の痛みが前ほど出なくなりましたね。前まで背中が痛くなったらご飯も食べられなくなっていたのですが、今はカイバもよく食べますね。

-:見た目から違いはありますか?

荻:全然違う。だから、今年の秋はちょっとやってくれそうな、やってくれないかな、というお願いですね、もう。私からしたら、やって下さい、という思いです。

ステファノス

ステファノスと同馬を担当する藤野調教助手

藤:飛び抜けてというのがあったら、ゲートの枠だったり……。

荻:ディープですからね。さっき馬場の話をしましたたが、やっぱり当たり前のディープだったら、馬場が悪くなったらしんどいかなと。マリアライトみたいな牝馬で重馬場が得意というタイプもいますが、私がウチのディープを見ていて、下の緩い馬場はやっぱりちょっとしんどい。綺麗に4角まで回って来てても、やっぱり終いキレないところがありますし。宝塚記念でも持ったままで来てたが、やっぱり道中で綺麗な走りをする馬は、下が重いとその分力を使いますからね。その辺は、ウチは当たり前のディープのタイプだと思いますね。馬場は綺麗な良馬場の方が、良いと思います。

-:毎日王冠のベストは良馬場ということで?

荻:良馬場で。

藤:良馬場の方が良いですね。

-:距離は1800mになりますね。お話を聞く限り適距離かなと思いますが。

荻:そうそう。何の問題もないと思いますよ。

-:目標は天皇賞(秋)になるかと思うのですが、レース展開のイメージはどうですか?

荻:レース展開は枠順が決まってからの、調教師の手腕なので、作戦を立てる先生にお任せです。