今年は主役で迎えるマリアライト 女王の座は譲らない
2016/11/6(日)
春は大一番の宝塚記念を制し、牡馬を含めても現役屈指の存在にまで変貌を遂げたマリアライト。秋緒戦のオールカマーは物足りなくも映るが、昨年同様のローテと着順(5着)と割り切れば、目標レースのエリザベス女王杯に向けて許容範囲と言えるだろう。まさにキャリアの集大成を迎える同馬へと仕上げを施す久保田貴士調教師に、連覇に向けての見通しを聞かせていただいた。
結果が出た昨年同様のローテ
-:エリザベス女王杯(G1)で連覇を目指すマリアライト(牝5、美浦・久保田厩舎)についてですが、まずは今年の宝塚記念はおめでとうございました。レース当日の馬の雰囲気は、先生がご覧になっていかがでしたか?
久保田貴士調教師:馬の雰囲気は、良いデキで出られたかと思っていました。レース内容も、馬場状態などいろいろな条件が味方してくれたこともありましたが、それにしても強かったのではないかと思います。
-:少し緩い馬場で、その辺りも良い方向に働いたということですね。牡馬の一流処と戦って、厳しいレースだったと思いますが、レース後の馬の状態はいかがでしたか?
久:激走した後だったので、やっぱり疲れは多少残っていましたよ。
▲蛯名騎手、キャロットF高橋代表とがっちり握手する久保田師(左)
-:春の大一番を終えて、この秋のプランは当初どのようにお考えになっていたのですか?
久:宝塚記念を勝った後、オーナーサイドと秋の路線の相談をして、去年と同じオールカマーから始動しましょう、という話になりました。去年と同じようなローテーションで行って、結果も良くなれば、と。
-:オールカマーから始動してエリザベス女王杯を考えていたということですが、そのオールカマーに向けての調整過程と当日の仕上がりについてはいかがでしたでしょうか?
久:休み明けということを考えて、それなりにやっていたつもりでしたが、正直、なかなかピークまで持っていける感じではなかったですね。先々も考えながらの叩き台という仕上げではなくて、ちゃんと行かなくちゃいけないと思っていたのですが…。馬体重こそ変わらなかったですが、やっぱり中身がもうひとつ伴っていなかった感じですね。
-:レース内容そのものは、ご覧になっていかがでしたか?
久:ちょっとズブくなっている印象はありましたね。
-:その辺りは、蛯名騎手と何かお話をされたりしましたか?
久:ええ、次走に向けていろいろと相談はしました。
▲秋初戦のオールカマーは5着に敗退 今回は牝馬同士だけに落とせない一戦だ
あと2戦、悔いのない仕上げを
-:エリザベス女王杯に向けての調整は1週前追い切りが行われて、去年のオールカマー以来、久しぶりに蛯名騎手が跨って行われました。そのテーマと動きの評価をお願いできますか?
久:今回の追い切りではメンコを外して、馬をちょっとピリッとさせたいというところもありました。蛯名騎手に乗ってもらって、最初から出していき、その後の折り合い加減と終いの反応を全部ひと通り見てもらおうかと思っていました。
-:追い切り後、蛯名騎手と話してみて、感触はいかがですか?
久:及第点というくらいじゃないかと思います。もともとウッドチップではよく見せる馬ではありませんし、ちょっと物足りないかな、と乗り役さんは思うのかもしれないですけどね。
-:現状、1週前追い切りの段階ですし、来週も追い切りも含めてこれからどのような調整をされていく予定ですか?
久:来週の最終追い切りに向けては、週末と水曜日にやろうと思っています。もう来週の水曜日は単走で、いつものパターンくらいでやろうと思っていますよ。
▲1週前追いに蛯名騎手が騎乗 徐々にではあるが、状態は確実に上向いている
※コース入りの際にメンコを外して調教した
-:去年優勝している舞台ということで、長距離輸送も経験があります。その辺りに向けての見通しというのはいかがでしょうか?
久:輸送に関しては全然心配していないんですけどね。
-:京都でも阪神でも結果を残していますからね。向こうに移動しても変わらず過ごせる感じなのですか?
久:却って女馬の方が度胸は据わっているのかな、と思っちゃうくらいです(笑)。
-:最後に、今回は連覇を狙う立場ということで、去年とはまた立場も違いますが、レースに向けての意気込みを聞かせて下さい。
久:今年一杯、もうあと2戦なので、悔いの残らないような仕上げをしていきたいなと思っています。連覇を狙えるのはこの馬だけですからね。マリアの戦績に恥じないようなレースをするようにつくっていきますので、また頑張ってくれたらなと思っています。
-:分かりました。ありがとうございます。
プロフィール
【久保田 貴士】 Takashi Kubota
父は1993年の桜花賞、オークスで2着となったユキノビジンを管理した久保田敏夫調教師。学生時代は馬術の選手として数多くのタイトルを獲得。92年に美浦・柴田欣也厩舎の厩務員となり、高橋祥泰厩舎の調教助手時代にはタイキフォーチュン、サウスヴィグラスなどの調教に携わる。03年に厩舎を開業し、3年目より11年連続20勝以上。07年と09年には優秀調教師賞を受賞している。昨年のエリザベス女王杯をマリアライトで勝ち、悲願のG1トレーナーに輝く。今年は宝塚記念で牡馬を一蹴、関東所属の牝馬としては史上初となる勝利を成し遂げた。