骨折明けでミス出た前走も2秒差の圧勝 8連勝での連覇へ死角なし オジュウチョウサン
2017/12/17(日)
ジャンプ界の絶対王者・オジュウチョウサンが、圧倒的なスタミナを見せつける。骨折明けで半年ぶりの実戦だった前走の東京ハイジャンプは、珍しく飛越のミスが出ても2着に2秒差をつける圧勝。2年連続の障害競走リーディングがかかる石神深一騎手に、8連勝と連覇がかかる冬の大一番に向けた手応えを聞いた。
-:中山大障害に出走するオジュウチョウサン(牡6、美浦・和田郎厩舎)についてお聞きします。まずは、骨折明けだった前走の東京ハイジャンプへ向かうまでの経緯を教えて下さい。
石神深一騎手:いつもより早めに帰厩したんですけど、やっぱり骨折して動かせなかったぶん、少し緩さもあったし、筋肉も少し落ちたなというのは感じました。約1ヶ月半、調教してだいぶ戻ってはいたんですけど、すごくいい頃から比べると「もう少しかな」という状態でレースに臨む形になりました。
前走の東京ハイジャンプでは2着に2秒、大差勝ちを決めた
-:外枠に入ったレースでしたが、あらためて内容を振り返っていただけますか?
石:馬場も重で柔らかかったですけど、使っていないぶん芝の状態はすごく良かったので「前残りになるだろうな」とは思っていました。東京の重賞は外枠が不利ですが、外枠だけどある程度は出していっていいポジションは取れるように気をつけていました。
-:道中の感じはいかがでしたか?
石:タマモプラネットがあの馬場状態にしては速いペースで逃げていたので、余裕のある追走ではなかったですね。正面の段階で20馬身くらい離れていたので「これはマズイな」と思って、少し1、2コーナーで促しながら向正面に行ったんですけど、向正面の飛越が少し悪くて……。久々のハイペースということもあったのか、オジュウにしては珍しくミスが2つくらいありましたね。
-:いつもと違って速いペースで逃げる馬がいて、飛越のミスもあって、どういう気持ちで乗られていましたか?
石:向正面で失敗しても「まあ勝つだろうな」とは思っていました。でも思ったより3コーナーの手応えが悪くて、いつもだったらグンと上がっていくんですけど……。やっぱり休み明けで、この馬場で「ちょっと脚が上がっちゃったのかな」と思ったら、3、4コーナーの障害を飛んでハミを取ってくれました。
-:ハミを取ってからの手応えはどうでしたか?
石:もう、すごい加速力でしたね。加速してからは「大丈夫だ」と思いました。
-:一気に後続を突き放しましたね。
石:周りからは「仕掛けが早いよ」って言われましたけど(笑)。あの状況では少し慌てちゃいましたね。
-:そこでじっくり構えすぎるのも……という気持ちはありましたか?
石:タマモプラネットは逃げるとしぶといことは僕もわかっているので、あまり楽をさせたくないなとは思っていました。最後はきっちり捉えたというか、余裕で捉えましたね(笑)。
石:すごい能力のある馬なので特に大きな変わりがあるわけではありませんが、ここにきてさらに競馬を覚えてきたのかな、という気はします。前走も3コーナーあたりではズブいくらいだったのに、最終障害を飛んでからグッとハミを取ったり、ここからが勝負だというポイントを馬が分かっている感じだったので、競馬を覚えてきたのかなと思いました。向正面での飛越も、馬はまだ急がなくてもいいと思っていたところで自分が促していったぶんバラつきが出たのかもしれないな、と。あそこで自分が落ち着いて乗れていればスムーズに飛べたかもしれませんし、そういう騎乗ができるジョッキーにならないといけないなと思いました。
-:この中間の馬の状態はいかがですか?
石:一回使ったことによって馬体の張りもいい頃に戻ってきましたし、いつも通り元気もいいですね。1週前追い切りもけっこういい時計でしっかり負荷をかけられたので、前走を使った後の反動もなさそうです。
-:1週前追い切りをしっかりやられましたが、何かテーマはあったのですか?
石:いつもと同じように変わったことはせずに、1週前にしっかりやって当週はあまりテンションを上げずにということをテーマにやっています。今のところ思った通りに調整できていると思います。
-:昨年勝った中山大障害ですが、この舞台についてはどうお考えですか?
石:僕は中山大障害が一番オジュウに合っていると思っていて、普通に出走できればまず負けないと思っています。グランドジャンプと違ってバンケットが1個多いので、スタミナを要求されるレースですが、そこに関してはズバ抜けていますからね。その点では他の馬と比べても断然有利だと思います。
昨年の中山大障害では2着に9馬身差の大楽勝を決めた
-:実際に結果も残されていますし、あとは普通にレースに臨めればというところですね。8連勝と連覇に向けて、あらためて意気込みをお願いします。
石:ファンのみなさんも期待してくれていると思いますし、それに応えられるように人も馬も一生懸命頑張るだけです。
-:石神ジョッキーにとっては2年連続の障害競走リーディングも目前です。
石:熊沢さんがジワジワと差を詰めてきているんですけど、ここまで来たからにはしっかり僕自身のタイトルも目指していきたいです。
16年に15勝を挙げ、JRA賞・最多勝利障害騎手のタイトルを獲得した
プロフィール
【石神 深一】 Shinichi Ishigami
01年3月に騎手デビュー。初年度から4年連続で二桁勝利を挙げるなど順調なスタートを切るも、落馬による怪我の影響もあり、騎乗数が減って11年には勝ち星が0となってしまう。07年より障害騎乗を始め、13年新潟ジャンプSをアサティスボーイで勝ち、重賞初制覇。その後も障害で安定した成績を収め、昨年は中山グランドジャンプをオジュウチョウサンで制し、悲願のJG1初制覇。初の障害リーディングにも輝いた。オジュウチョウサンとのコンビでは以後も暮れの中山大障害、連覇となった中山グランドジャンプで目下JG1・3連勝を含む7連勝中。リーディングでもトップ争いを演じており、障害のトップジョッキーとして地位を築き上げている。