ノーザンファームの関東馬が、また"常識"を覆す。4月8日(日)の桜花賞(G1)に出走予定のアーモンドアイとプリモシーンは、ともに3カ月ぶりの実戦。年明けに重賞を勝って賞金を加算した直後に、桜花賞への直行を決めた。なぜ"常識"とされるトライアルを使わないのか?ノーザンファーム天栄・木實谷(きみや)雄太場長に、その真相を聞いた。

過去の教訓生かして選んだ「3カ月ぶり」

-:まずは桜花賞に出走予定のアーモンドアイ(牝3、美浦・国枝厩舎)のお話から伺います。前走のシンザン記念を終えてからの状態はいかがですか?

木實谷雄太場長:この中間は、体重こそ変化はありませんが、見た目に背が伸びた印象で成長がうかがえます。10月の未勝利戦を勝った後は疲労の回復に時間が掛かって、出走が延びましたけど、その時と比べれば毛ヅヤもいいですし、いい状態で送り出せますよ。

-:早々に桜花賞へ直行というローテーションが発表されました。

木:シンザン記念が3カ月ぶりの実戦となりましたが問題ありませんでしたし、桜花賞の前にもう1回使うとなると2月か3月になります。賞金的に事実上クラシックの権利は得たので、余裕を持って本番に臨もうということになりました。

木實谷雄太場長

-:2走前に疲れが出て間隔が開いたとのことでしたが、この中間は体質強化にも取り組まれたのですか?

木:体質の強化ばかりは成長を待つしかないですからね。強化というより成長を促す期間を設けられたことは良かったと思いますね。

-:その成長という部分ではいかがでしょう?

木:右手前のキャンターが不得意で、左手前ばかり出したがるよう面があったのですが、徐々に解消し、バランスが良くなってきたように感じています。

-:2歳女王でチューリップ賞も快勝したラッキーライラックとは未対戦です。同じノーザンファームの生産馬が強力なライバルですが、アーモンドアイの勝算は?

木:過去3戦ともメンバー最速の上がりを繰り出していますし、シンザン記念ではメンバーが強化された中でも、ゴールに向かって加速しているラップを差し切りました。阪神の1600mは外回りで直線も長いですから、この馬のセールスポイントを発揮するにあたって申し分のない舞台です。

-:馬場が悪くなっても心配はなさそうですが?

木:シンザン記念は確かに馬場が悪かったですけど、2戦目はほぼ持ったまま、33秒台で上がっていますからね。単純にスピード能力が高いということだと思います。馬場が悪くても問題ないことはシンザン記念で分かりましたし、輸送も含めていろいろと確認できたレースでした。

アーモンドアイ

「体質の強化というより成長を促す期間を設けられたことは良かったと思います。(走りの)バランスが良くなってきたように感じています」


-:G1馬の母フサイチパンドラからついに大物が誕生しましたね。

木:今までフサイチパンドラの仔はキングカメハメハやシンボリクリスエスなど、芝の中~長距離に適性のありそうな種牡馬が配合されてきました。なかなか活躍する仔が産まれてこなかったのですが、今回は短距離戦線で活躍したロードカナロアが配合され、お互いの良いところ、高い能力が合わさって、いい方向に出たのではないかと思います。

-:フサイチパンドラは気性の激しい馬でしたが、アーモンドアイはいかがですか?

木:いい意味で気持ちの入りやすい馬ですね。スイッチが入るとガッと行くような部分があるので、気をつけながらやっています。デビュー戦は馬込みで少し怖がってしまう面を見せて、2戦目はバックストレッチで行きたがる感じもありました。前走はポツンと1頭で追走できたのは良かったですけど、気性面ではまだ課題が残っています。

アーモンドアイ

-:初戦の内容を見ると、桜花賞はモマれない枠が理想ですか?

木:桜花賞は最初の2ハロンあたりまでポジション争いが激しいですからね。内枠の馬は外から絞られてきますから、一昨年のメジャーエンブレムのように馬群に押し込まれてしまうケースもあります。アーモンドアイにとっては枠云々よりも周りに同じような脚質の馬がいるかどうかがカギだと思っています。課題の1つであるスタートを決めて、末脚を温存する意味でもスムーズに追走していきたいですね。

-:この春は桜花賞、オークスと進まれる予定ですか?

木:先のことは何も決まっていません。桜花賞の走りを見て、馬の状態やジョッキーの感触などを踏まえて決めていくことになると思います。今は桜花賞のことしか考えていませんよ。

「1回のレースの消耗度が昔より大きい」
ノーザンファーム天栄・木實谷場長 独占インタビュー(2P)はコチラ⇒