ドンフォルティスが、ジャパンダートダービー(Jpn1)を“狙って”勝ちに行く。全日本2歳優駿は不利を受けながら2着まで追い込み、距離を延ばした前走の伏竜Sはルヴァンスレーヴに雪辱を果たした。その後ユニコーンSを圧勝したライバルを負かしたのはこの馬だけ。強さの理由、間隔を空けて臨む意図など、初のビッグタイトル獲得を目指す、牧浦充徳調教師に語ってもらった。

異例の挑戦 ユニコーンSをパスした理由とは?

-:7月11日(水)に行われるジャパンダートダービー(Jpn1)に挑むドンフォルティス(牡3、栗東・牧浦厩舎)ついてよろしくお願いします。前走の伏竜ステークスが約4カ月ぶりで、3歳になってからは初めてのレースでしたね。

牧浦充徳調教師:よろしくお願いします。当時はレース間隔も空いていたのですが、その前走の全日本2歳優駿(2着)では不利などのアクシデントがありました。ルヴァンスレーヴ(牡3、美浦・萩原厩舎)には一度負けていた中で、今度は負かすことが出来た上に、強い勝ち方をしてくれた。収穫の大きいレースだったのではないかと思います。

-:北海道2歳優駿で勝たれた時にプラス12キロと体重が一気に増えて、全日本2歳優駿を挟んで、伏竜Sでも5キロ増えていました。この辺りはデビュー戦よりも成長したということですか?

牧浦調教師

▲BIGタイトル奪取のチャンスが高まる牧浦調教師

牧:成長してきていると思いますね。デビュー当初は幼さがあり、馬体も薄く、トモも甘い馬だったので。それが使いつつ体重も乗って、実入りがしっかりしてきたと思いますね。それでも2歳の頃からあれだけのパフォーマンスを発揮してくれていて、年が明けて春くらいから徐々に実が入ってきて、その緩さもだいぶ解消されてきましたね。

-:簡単に言うと、かなりパワーアップしたということですね。

牧:そうですね。昨日(6月27日)、半年ぶりに武豊ジョッキーに乗っていただきました。前回のレースは乗ってもらっていなかったので、今年に入ってからは初騎乗でした。「緩さが抜けて、だいぶしっかりしたね」という評価もいただけましたね。

-:その伏竜Sに関しては、これまでのレースの中で一番ラップが遅く、上がりのほうが2秒くらい速いというレースでした。馬の緩さもなくなってきたということもあるでしょうし、中山のダートですからスタミナがあったというのもあるでしょうけど、これまでよりも前半楽に行けているから、ああいうスムーズなコーナーリングと直線の伸びがあったのかと思いました。先生の見解はいかがですか?

牧:今までは後方からの競馬で、自分で競馬をつくっていけないようなレースが多く、一概に言えないのですが、どのレースであっても、騎手がゴーサインを出した時にはスッと反応して、一気にギアを上がられるようなタイプの馬ではあります。それがある程度、前目の位置で流れに乗っていても、そういう脚が使えたというのは、成長してきているところもあるのかと思いますね。

全日本2歳優駿の時ではかなり不利を受けて、とてもじゃないけど、普通の馬だったら掲示板もないような位置から、短い直線で2着まで差を詰めてきてくれて、決して力負けじゃないなというのは思っていましたね。(伏竜Sで騎乗した)石橋ジョッキーともそのへんは話していたし「スムーズに行けば、巻き返せるチャンスはあるだろう」ということで、ああいう積極的に行ってくれた面はあるので、期待通りに馬が応えてくれました。

ドンフォルティス

-:デビューしてから距離を延ばしつつ使われていますが、距離が延びた時の方がイメージはいいでしょうか。

牧:この馬はヘニーヒューズの産駒で、今までの産駒は短いところの馬が多かったのは事実だと思います。そういう傾向もあって、デビューは短いところ(1400m)から降ろしたのですが、調教をしっかりやっていく中で、そんなにカッとしてくることもなく、御せないなんてこともなかったですからね。ゆったり走らせてもしっかり脚を使えるので、短い距離一辺倒の馬にするにはもったいないと感じましたね。それで、敢えて長い、ゆったり走れる距離を中心に使ってきた狙いはありました。

-:今回のJDDはさらに1ハロン延びて2000mになりますね。

牧:また伏竜Sから3カ月くらい間隔が空くので、その辺で間にユニコーンSを挟むことも考えたのですが、ワンターンのコースですから。1周回らせるようなコースで、距離を持たせるような形の競馬を続けていたので、出来るだけ同じ条件で行きたいという考えが一つありました。さらに、ユニコーンSからJDDにいくには、ローテーションがかなり詰まり過ぎているので、その辺も考慮しましたね。前回の伏竜Sの時も、全日本2歳優駿から間隔が空いていても、馬のパフォーマンスが落ちることなく、(力を)発揮してくれていたので、直行で良いという判断をしましたね。

1週前追いで上昇 ハイレベル3歳ダートNo.1決定戦へ

-:帰厩が6月6日で、もう20日くらいは調教を進められていると思います。あと2週間くらいでレース本番なのですが、6月6日に戻ってきてからの歩みを教えていただけますか?

牧:やっぱり間で競馬を使っていない分、リフレッシュして帰ってきているのですが、馬の動きや中身の面に関しては、まだ足りないところはありました。それも踏まえて、レースの1カ月以上前に戻して、しっかり鍛えていこうという構えです。

-:徐々にピッチを上げていっているということですね。

牧:そうですね。昨日の追い切りはコースでしっかり動けてきているので、このひと追いでさらに(状態が)上がってくれると思います。本番に向けて、今のところは順調に来ていると思います。

ドンフォルティス

-:先ほどとも重なりますが、成長分の体というのは、レース当日はどんな数字(馬体重)で出せそうな感じですか?

牧:体重自体は前回(502キロ)と同じくらいかなと思います。実は、牧場からこっちに戻ってきた時の体重が490キロくらいだったんですよ。競馬を使っている時と比べると、やっぱり筋肉もちょっと落ちている状態で、調教しつつ、しっかり食べさせつつ、今は徐々に筋肉も増えてきています。負荷を掛けながら体重も増えて、という段階ですね。

-:レースが水曜日(7月11日)なのですが、本追い切りというか、最終追い切りはいつになりますか。

牧:来週の水曜日(7月4日)ですね。一番しっかりやる追い切りは既に終わらせた昨日です。来週、ある程度やって、あとは馬の状態で判断しようと思っています。最終的に土曜、日曜にあたりに軽くやって、それで競馬に向かおうかなと考えています。

-:昨日の2週間前追い切りで、けっこうビッシリやれているということは、ある程度は青写真が出来ていて、あとは微調整に入るということですか。

牧:そうですね。

-:かなり順調ですね。

牧:いやいや、なかなかこれだけ空けたローテーションで向かうのも珍しいと思うので。

「あの馬を負かしたのはドンフォルティスだけなので、やっぱりあそこで走らせていても、他の馬との相手関係を見る面では、同じように良いレースが出来たんじゃないか、という目安にはなったので」


-:ファンの注目は、やっぱり先ほど先生から名前が挙がったルヴァンスレーヴとの一騎打ちというムードになると思うのですが、ルヴァンスレーヴと一緒に走るのは今度で3戦目ですけど、1勝1敗で、今度は白黒つけるレースになると思いますが、楽しみですね。

牧:ユニコーンSはそのまま突き抜けて、後ろの馬を離すくらいの強い勝ち方をしていましたね。ただ、あの馬を負かしたのはドンフォルティスだけなので、やっぱりあそこで走らせていても、他の馬との相手関係を見る面では、同じように良いレースが出来たんじゃないか、という目安にはなったので。

-:しかも、先生の厩舎にはドンフォルティス以外にも、タイキフェルヴール(牡3、栗東・牧浦厩舎)がいて、実際ドバイ(UAEダービー6着)にも行かれて、この世代は去年の2歳時からダート戦線で面白い馬が出ています。先週も同じドバイに出走したルッジェーロ(牡3、美浦・鹿戸雄厩舎)が(東京の清里特別を)勝ちましたね。

牧:今年の3歳のダートはだいぶ層が厚いのかなと。去年、ノーブルサターン(牡4、栗東・牧浦厩舎)という馬でJDD(5着)に出走しているのですが、その時に持っていた賞金だと、今年なら出られないくらいなので。

-:ちょうどケンタッキーダービーのポイントレースが組まれていて、より注目度が若干上がっていたと思いますけど、例年に比べて本当にファンが注目しやすい馬が多いと思います。大井競馬場の馬場は難解なところがあると思いますが、季節的にも雨がないともいえません。馬場状態を考えると、乾いた馬場と雨馬場ならどちらがこの馬に合うと思われますか?

牧:現状では、そこまでこうじゃないと良い悪いという部分は正直感じてはいないです。スムーズに競馬さえ出来れば……。まずはそこですね。

牧浦調教師

-:この馬のお陰で、種牡馬としてのヘニーヒューズを見る眼が変わった人がいるかもしれないですね。

牧:そうですね。1000m、1200mが中心の馬かなという見られ方もあったかもしれません。将来的にもチャンピオンズカップやフェブラリーステークスも狙っていくような馬にしていきたいですし。

-:そこに行くまでの大事な一戦になりますね。最後に、応援してくれるファンにメッセージをお願いします。

牧:相手も強いのは事実です。実績を残している馬ばっかりが出てきますが、ドンフォルティスも力的には負けていないと思います。去年は獲れなかったG1タイトルをなんとか獲りたいなと思っていますので、応援よろしくお願いします。

-:ありがとうございました。